第9話:空くん、こんな形で私の彼氏になっちゃうんだ?。

次の日、マンピーは学校を休んだ。


昨日まで元気だったから風邪とか病気じゃないとは思うけど、なにか用事が

できたのかも。

僕にも連絡が来ない。

まさか自分の世界に帰ったとか?


僕は汗水「担任」にマンピーが休んだ理由をさりげなく聞いてみたら、連絡なしで

休んでるんだそうだ。

連絡もないって心配だな・・・。


前の席が空いてたら、寂しい。

振り向いて俺の机にほうづえついて、あざとく笑うマンピーを想像した。

あの揺れる可愛い尻尾・・・その向こうに見えるこれもまた可愛いパンツ。


僕が顔を出すのは迷惑かもしれないけど今日、学校が引けたらスナック・Gスポットに行ってみよう。


授業が終わるまで、僕はマンピーのことが気になって何も頭が入らなかった。

イライラした・・・早く終われよ・・・。

終了のチャイムが鳴るのを待ちかねて僕は廊下を走っていた。

階段を飛んでいた。

歩くことなく、そのまま走ってぜいぜい言いながらスナック・Gスポットに着いた。


しばらく息を整えてから、恐る恐るスナックのドアを回してみた。

やっぱりドアは開かない・・・ドアが開いてくれないことにはマンピーと会う

手立てがない。

どこかに行ってるなら帰って来るのを、ここで待つしかないか・・・。


そう思って僕はしばらく店の前で待ってみた・・・店からは誰も出て来ないし、

オープンする気配すらなかった。

一時間ほどそこで待った。

日が西に傾いて、まだオレンジと青が混じった空に星がちらほら輝きはじめた。


しかたない・・・あきらめるか・・・いったいどこへ行ったんだ、マンピー

心配してんだぞ・・・せめて僕にくらいには連絡しろよ。


そう思って帰ろうと振り向いた。

そしたら、俺の目の前に見たことある女が立っていた。


「素たくん!!」


そう言うとマンピーは僕に飛び込んできていきなり泣き出した。


「マ、マンピー!!」


「ごめん、空くん・・・訳があるの、連絡しなくてごめんね」


「汗水が学校にも連絡来てないって言うから心配したんだよ」

「なにしてたんだよ・・・なにがあったの?」


「心配かけてごめんね」

「空くんを個人的なことに巻込みたくなかったから黙ってたの?」


「なにを?・・・なにを黙ってたって?なに個人的なことって」

「僕たち運命共同体じゃないの?」


「まだそう言う関係になってないし・・・」


「でも、なにがあったか教えて?」


「うん、それなんだけど・・・私が人間界へ来た理由だなんだけどね」

「私にはしなくちゃいけない大事なことがあったから本当はお友達なんか作る

つもりなかったんだけど私、空くんのこと一目見て好きになっちゃたから・・・

だから、空くんにだけは、お友達になって欲しかったの」


「それはいいよ・・・お友達にでも、もしマンピーが望むなら彼氏にだってなるよ」

「そしたらマンピーが人間界に来た理由、彼氏になら話せるだろ?」


「空くん、こんな形で私の彼氏になっちゃうんだ?」


「きっかけなんてそんなもんだよ・・・マンピーがイヤじゃないならね」


「面白いよね、そう言うのも・・・私たちお友達越えようか・・・」

「空くんが私の彼氏になって私が空くんの彼女になる・・・ね、もうそうなっても

おかしくないよね・・・いいよね」


「いいに決まってるだろ?」


な訳で、意外な展開で俺とマンピーは正式に恋人同士になってしまった。

だけどマンピーが人間界に来た理由って借金取りに追われて夜逃げしたんじゃ

なかったっけ?


つづく。



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