短編 夢見る優夢湖ちゃん

奏流こころ

第1話 優夢湖ちゃん

「はぁ…」


 こんなに見てるのに。

 こんなに応援してるのに。

 こんなに想ってるのに。


「伝わらない…儚い…」


 机に突っ伏すのだった。



 大好きな剛生たけお君、憧れの剛生君。


 みんなに優しくて、信頼は厚くて、モテモテで…。

 学校のアイドル的存在。

 ファンクラブがあるとはいえ、私はそんなのには入ってない。

 何故か?制限とか、いろんなルールがありそうで、守れるわけない。


 フリーで、勝手に、陰ながら、応援してる。


 校内ミス&ミスターコンテストがあって、彼は3連覇がかかっている。

 今回は強敵かつ次世代ミスターと名高い1年生がいて、どうなるのか分からない。

 1日1票の投票は開始されていて、私は毎日剛生君に投票してる。

 中間発表では僅差で1位剛生君、2位1年生となっていた。

 あと2日…どうなるのか…。



 開票当日。

 文化祭の場で盛大に発表される。

 ドキドキしながら私は体育館に居た。


 剛生君…剛生君…剛生君…


 両手を胸辺りでギュッと握る。


「開票結果が出ました!」


 司会のその一言で会場内のボルテージは上がった。

 女子から発表されたが、私の耳には残らなかった。


「続いて男子のミスターを発表します!」


 黄色い歓声が上がった。

 10位〜4位までは一気に発表された。

 剛生君の名前はなし、てことは3位以内。

 きっと1位だ、お願い1位と言って。

 3位が5分かけてから発表され、名前は出なかった。

 あの1年生も呼ばれていない。


 てことは、一騎打ち。


 「では1位の人に司会の僕は握手をしにいきまーす」


 ドラムロールが始まり、その音が場内に鳴り響く。

 ため方上手の司会者、2人の前を行ったり来たり。

 その度に、それぞれのファンが黄色い歓声なのか悲鳴を上げる。

 10分が経過しただろうか。

 司会者は真ん中に立つ。


「栄えある1位は…!」


 ドゥルルルルルルル…ババンッ!!


「おめでとう!菊池きくち剛生君!3連覇でーす!!」

「っしゃああああー!!!!」

「「「キャアアアー!!!!」」」


 目から涙がぽろぽろ流れたのだった。



「んぅっ…」


 優しく頭を撫でられて眠りから覚めた。


「ゆめちゃん起きたね、帰ろう」


 あっ…愛しの…。


「た、剛生、くぅん」

「どうした?大丈夫?」


 夢だった…。


 現実は、

 はぁ…安心した。

  

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短編 夢見る優夢湖ちゃん 奏流こころ @anmitu725

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