アイドル狂いのひなまつり【KAC20251】

たっきゅん

アイドル狂いのひなまつり

 今日は3月3日、『ひなまつり』だ。


「あかりんを付けましょ ぼんぼりに~♪」


 世間一般では同じようにひな壇に飾り付けが行われるであろう日に、石光いしみつ優也ゆうやは同居人の奇行を唖然として眺めていた。


 同棲中の彼女、藤原ふじわら桃花ももかは何を思ったのか彼女の好きな一推しアイドル、あかりんのぬいぐるみを左右に置いたぼんぼりの中央にどーんっと置いた。


「あ、お内裏だいり様とお雛様が……」

「大丈夫! あかりんは男の娘だから♪」


 当然、そんなことをすれば最上段でぼんぼりの間に座っていた二人は押し出され、そのまま三人官女も道ずれにしてひな壇から転げ落ちた。何が大丈夫なのかはわからないが、あかりんは『男の娘』だ。なので彼女の中のあかりんは恐らくお内裏様であり、お雛様でもあるのかもしれない。


「いや、それはそれで三人官女の巻き込まれ事故は大丈夫じゃない案件だよな?!」


 だが、その惨状を引き起こした当の本人は何食わぬ顔で位置調整をしている。


「お花をあげましょ 桃の花~♪ ぎゅーっ♡」

「自分をあげてどうする……ってか、オレ彼氏なんだけど……そんな嬉しそうに抱きつかれたことないんだが?」


 アイドル衣装を着たそのぬいぐるみに、あかりん愛を抑えきれない彼女はまるで自分を差し出すようにぬいぐるみを抱きしめた。確かに彼女の名前は桃花ももかだが、断じて桃の花ではない。


「ゆうや~? もしかしてあかりんに嫉妬~?」

「……悪いかよ」


 不機嫌になる優也をぎゅーっと桃花は抱きしめる。


「大丈夫だよ。あかりんはアイドルだから。あかりんへの愛はLOVEだけど、それはアイドルとしてだよ」


 アイドルは偶像というが、あかりんは実在するがしないような、そんな文字通りのアイドルだった。


「ならよし」

「じゃあ、ラストスパート! ゆうやも手伝って!」


 そう言って彼女は右大臣、左大臣、仕庁の三人をひな壇から取り除いた。


「五人ばやしの 笛太鼓~♪ さ、みんな入場! あ、この子も!」


 なぜかトリの降臨。お内裏様やお雛様たちに混じってトリのぬいぐるみがひな壇の下に並べられた。


「今日はたのしい コンサート♪」


 桃花の掛け声であかりんのコンサートが始まる。

 ひな壇の本来の姿ではないが、彼女がいいならそれいいかと思う優也だった。

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アイドル狂いのひなまつり【KAC20251】 たっきゅん @takkyun

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