第18話

「3日も待たせてごめんね」


放課後、日野くんといつものサッカー場に来ていた。


「ううん、待つって決めてたから大丈夫です」


本当は不安だったはずなのに、そんな姿を決して見せない日野くんは後輩なのに頼もしく感じた。


「…凛とね、話した。」


「うん」


「たぶん、分かってくれたと思う。」


「そっか…相原先輩、頑張りましたね。頑張ってくれて、ありがとう。」


すっと伸びた手が、遠慮がちに私の頭をポンポンと優しく叩く。


「本当はね…すごく怖かっ…た…んだ…」


堪えていたはずの涙が次から次へとこぼれ落ちる。


凛に伝えるのがすごく、すごく怖かった。


嫌われるんじゃないか。責められるんじゃないか。もう友達でいられなくなるんじゃないか。


友達の好きな人を奪った悪者の自分をずっと責めていたのに、日野くんの言葉が、あたたかい手が私の心を軽くしてくれた。


泣いている間、日野くんは何も言わずにただ隣にいてくれた。


それが日野くんらしくて、なんだか安心する。


「いっぱい泣いちゃった…ごめんね。」


「体育祭の時も見てますから、大丈夫ですよ。」


私の好きな可愛い笑顔がこちらを向いた。


「じゃあ、相原先輩。もう一度、言わせてください。…好きです。付き合ってください。」


「…はい、よろしくお願いします。」


体育祭から2週間近く経った9月23日。


この日が、2人の記念日になった。

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