第12話

「今日、付き合ってくれてありがとうね」


「ううん、体育祭期間みたいで私も楽しかった」


「そっか、良かった。じゃまた明日ね」


「うん、またねー」


凛も私も自転車通学だが、方面が違うためいつも通り校門で別れた。


凛の背中を見つめながら、ふぅーと長い息を吐いてからサドルに跨った。


まだまだ厳しい9月の日差しにうんざりしながら、ゆっくりとペダルを漕ぎ出した。


"早く家に帰って、アイスでも食べよう"と考えながら、徐々に速度を上げていく。


田んぼ道へ続く通りに出ると、日野くんらしき人を見つけてしまった。


色々やりとりをするうちに知ったことだが、日野くんは部活動に所属せず、外部のクラブチームでサッカーをしているため、同じ時間に下校している。


少しずつ日野くんの背中が大きくなっていく。


声をかけるか、かけないか迷った末に


「日野くん、じゃーねー!」


と言って、一瞬で日野くんを追い抜いた。


「えっ、あ…待って!」


慌ててブレーキをかける。


「なに?!」


「先輩、急いでますか?」


「…別に急いではないけど」


「ちょっと、しゃべって帰りません?」


凛の顔が頭に浮かぶ。 


「…うん、いいよ。」


頭では分かっていても、何故か断ることはできなかった。

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