第11話
「二葉、今日の昼休みちょっと付き合ってくれる?」
それは、突然のことだった。
「何かあるの?」
「ちょっと…ね」
凛の表情から読み取ろうとしたが、全く読み取れない。一体、昼休みに何があるのか。
…嫌な予感がする。
悪い妄想ばかりが膨らみ、授業は全く身に入らなかった。
ーとうとう訪れた昼休み。
「二葉行くよー!」
「うん」
ゴクリと生唾を飲み込む。
足どりがやけに重い。
私の前をスイスイ歩く凛は、どうやら体育館のギャラリーへ向かっているようだった。
昼休みの体育館は、学年ごとに割り振られ、自由に遊べる時間だ。
ギャラリーから体育館を眺めると、バスケやバドミントンをしている2年生がたくさんいた。
無意識に崇人の姿を探してしまう自分に嫌気がさす。
「あっ…日野くんいた。おーい」
凛は友達とバスケをする日野くんに声をかけた。
「おっ本当に来た。高橋先輩、今行きまーす」
…イマイキマス?
「え、凛どういうこと?」
「日野くんに昼休み体育館来てって、ラインで言ってあったの」
「そ、そういうことね…」
思ってもいない事態だった。
しばらくすると、日野くんがやってきた。安定の尾井川くんと一緒に。
ドキッ
日野くんに会うのは、あの告白された日ぶりだった。
「呼び出し成功、ですね?笑」
「うん!ありがとう、来てくれて。でも、やっぱ1人じゃ恥ずかしいから二葉も連れてきちゃった」
「一緒ですよ。俺も尾井川連れてますし」
どうしていいのか分からなくて、しばらく黙って2人の会話を聞いていた。
「なんかこういうのドキドキしますね」
そこに尾井川くんが参加すると、気付いたら体育祭期間中のように4人でくだらない話をたくさんした。
ただ、ただ楽しい時間が流れていた。
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り、それぞれの教室へ戻るため、歩き出す。
「そういえば…」
前を歩いていた日野くんが突然立ち止まると、思い出したようにポケットに手を突っ込んだ。
「あげます。」
「何これ?」
どこからどう見てもただのピンポン玉だった。
「さっき体育館に落ちてたんです。」
「いや、いらないよ!卓球部じゃないし!卓球もやらないし!」
「最後に触った人のものですから(笑)」
意地悪そうに笑うと、尾井川くんと共に廊下を駆け出し、二人の姿はあっという間に見えなくなった。
「あー行っちゃったよ…凛いる?」
「まー、いらないよね」
「だよね(笑)後で捨てるか」
と、この時は言っていた。
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