オタクでなくファンとも言い難い何者か

二八 鯉市(にはち りいち)

我々はというか我は何者なのか

 振り返ってみると、私は『アイドルオタクっぽいもの』なのかもしれない。

 

 いや、何故そんなにも曖昧な存在なのか?

 それは、「オタク」の定義がかなり難しいからである。よもや深海の解明と同じぐらい難しいのではないだろうか。いやさすがにそれは言い過ぎか。


 さて私が、「私はもしかしたらアイドルオタクなのかもしれない」と、その属性があやふやなのには理由がある。

 である。


 ここでまた、「オタクとはどれぐらいお金を出すとオタクなのか」みたいな話になるとすごく大変なので、ちょっとここは、金額の大小については一回置いておきたい。


 整理していこう。

 私には幾つか、「新曲が出るたびにめっちゃMV見に行くアイドル」が居る。

 めっちゃMVを見に行く。曲がハマると1日4,5回ぐらい再生する日々が一週間続くし、SNSにも感想を書くし、公式から出る各種ショート動画ももれなく高評価を押して回る。


 であるなら定義としてはきっと、「MVをめっちゃ見る人」である。つまりいわゆるファンではなかろうか。

 ということはこのエッセイ、

「え、じゃあ二八さんはそのアイドルのファンじゃん。オタクかどうか悩まなくてよくない?」

で、話は終わりだと思う。


 ところがである。

 私は恐らく、アイドルだけでなく――インドカレー作りにおいても、クラフトビールに関しても、ヨガにしても、筋トレにしても、どことなくハマり方がオタクっぽいのである。

 オタクっぽいって何って言われるともうまた深い深い思考の深海にダイブしなくてはならないのだが。


 さて、では各種私のハマり方のどの辺がオタクっぽいかと言われると。

 例えばその「MV回すだけのアイドル」に関して、カラオケで友人に「この左から2番目の子かわいいね」なんて言われた日には、

「いやもうよく分かってくれたねその子は実はオーディション時代やグループの初期には×××な苦労があってでも×××なきっかけがあってメンバーの×××とは×××な関係にあって、グループの中で最年長ながらも×××のMVの時には×××なんてエピソードがあって、でも本人が語るプライベートには×××なんていうおちゃめな一面もあるんだけどこっちのMVの中でこの表情はマジでかっこいいし実は幼いころに武道を習っていたっていうギャップもあって」

と、止まらないのである(上記は今適当に考えたフェイクエピソードだが物量としてはこれぐらい喋ってしまう)


 ……めっちゃオタクやん。

 自分でもそう思う。


 ファンなのか? オタクなのか? そもそも定義って何? 我々はどこへ行くのか? 何も分からない。


 だって。

 だって私。


 そう、上記のようにメンバーに対してひぃふぅみぃ……6行ぐらい暗唱できるにも関わらず。

 このグループの事、365日推しているわけでもないのである。

 何故なら私には、これぐらいの「新曲出たらMV回しに行く」というアイドルないしアーティストないし配信者ないし若手俳優が、ざっと数えて8~10組ぐらい居るからである。

 つまりAが新曲を出したら見に行き、落ち着いたらBを見に行く。Bが落ち着いた頃にはCが新曲をリリース、Cが落ち着くちょっと前にDが大規模イベント……というように、四方八方に渡り鳥をしているのである。


 ある意味で「推し」という言葉は、こういう私の存在をも包含しているように思う。

 夏になるとどこからともなくやってくるアイスクリーム屋のように、アイドルが新曲をリリースするたびに現れてMVを回してメンバーの近況を眺めて砂漠のどこかへと消えていくことを、「最近推してるんだよね」で何となく表現できている気がするから。


 でも私のようなこういう、CDを買ったりライブに行ったりするわけでもないけどファンという枠に収めるにはディープな存在の事を表す言葉も、私が知らないだけであるのかもしれないし、4,5年後にもっとメジャーな定義として出来るのかもしれない。


 それまで私は「あーあのアイドル? まぁあのー知ってるかなー、うん。最近新曲出したよね」と名乗る事にしておく。



<終>

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

オタクでなくファンとも言い難い何者か 二八 鯉市(にはち りいち) @mentanpin-ippatutsumo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ