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花火大会の行われる川原付近は、昼過ぎからお祭りが開催されているらしく多くの出店がひしめき合うように並んでいた。
それにつられるようにたくさんの人でごった返しになったその会場はもはや戦場のよう。
夕暮とはいえまだまだ暑さが残る中、人ごみの中を掻き分け進むのもそろそろ限界を向かえそうだ。
ただこの絵に描いたみたいな人だかりが、お祭りだからって理由だけじゃないことには気付いてる。
気付いてるっていうより、気付かないほうが無理って感じ。
あたしたちが歩く後ろを、ぞろぞろと付いて来る集団。
どこから情報を得てるのか、どこからともなく集まる人々。
その人だかりに興味津々に寄ってくる野次馬。
すれ違う人だって、視線を躊躇なくこちらに向ける。
あたしたちっていうより、彼らに気付いて。
忘れてた訳じゃない、彼らの知名度を。
だからって、有名人でもあるまいし。
なんであたしがこんな目にあってんの?
なんであたしだけがこんな目に合わなきゃなんないの!
高校生バンドとして、この辺りではかなり有名な彼ら。
それは音楽性や技術もさることながら、そのルックスも然り。
女子高校生に人気の理由は後者がほとんどで、ライブ会場を埋めるのも多くは女性だったりする。
たまたま訪れた花火大会の場所は、夏の終わりに大きなイベントが行われるライブハウスの近くで、だからこそこの辺りが地元の人たちには彼らのファンが多くいる。
そんな彼らが揃いも揃って祭りに出向いてるっていうんだから、こんな事態にもなるんだろう。
それは仕方ない。
百歩譲って彼らの人気故と思って我慢できる。
でもだからって、あたしが陰口言われんのは納得できない。
嫉妬かなんだか知らないけど、聞こえてんだよそこのブス!
いや、顔はかわいいかもだけど、腹黒なんだよ性格ブス!!
あたしだってね、好きで一緒に来てんじゃないのよ!
なんなら今すぐ帰りたいとか思ってんのよ!
代わりたいってんなら代わってやるわ!!
我儘言っても仕方ないしと思ってここまで文句も言わずに付いてきたけど、限度ってもんがある。
あたしだって人間だから、言われて嫌なこともあるしムカつくこともある。
それを全部、耐えなきゃならない理由も義理もあたしにはない。
だってあたしはメンバーの一人でもないし、彼らにとっての何でもないんだから。
そう思ったから無理やりに前に進めていた足を止めた。
予想通り、そんなあたしに気付かない彼らと取り巻き。
去り際に何人かに暴言吐かれたけど、それ以外があたしを気に留める様子すらなく、喧騒は遠ざかって行った。
「本当、バカみたい。」
別に悲しくもないけど。
急に静けさが訪れたから、しんみりしてるだけだし。
「帰ろ。」
帰り際、お土産って口実で向かったリンゴ飴屋の屋台のおっちゃんが優しくて、ちょっとだけ泣きそうになった。
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