10





「ごめんね志乃ちゃん、急に呼び出して。」



デキル男ってのは女の子事情までもしっかり把握してるのか、約束の時間より5分遅れて届けられた真野先輩の声に、手にした携帯から視線を上げた。



勿論メイク直しは完璧。

ついでに髪までちゃっかりセットできた。



……それに意味があったのかと問われれば、すごく微妙な心境だけど。






あたしってなんて馬鹿なんだろう。

そうだよね、そうだよね?


まさか真野先輩が二人っきりであたしに会おうなんて、




「なんで志乃センパイ制服なの?」




……思うはずないじゃん。





「来栖がどうしても志乃ちゃんに連絡しろってうるさくて。」


「だって男3人で、とかキモい。」


「相澤だって急に誘われても迷惑だろ。」


「いーじゃん暇なんだから。ね、センパイ?」




確か今日は、スタジオでの練習は入ってなかったはず。

だからあたしもこうして嫌々ながらも学校に行ったわけだし。


予想外だった。

まさか3人揃ってるなんて。


なんなのコイツら。

マジで何でいつも一緒なの。


……仲良しかよ。




「つーかマジでセンパイ、何で制服なの?」


「補講。」


「補講?なんで?」


「……」


「もしかして、センパイってバカなの?」


「……」


「え?バカなの?」



……期待したあたしって、マジでバカなのかも。





「どうせ、授業サボりすぎたってところだろ。」


「椎名さんに聞いてないんだけど。」


「いや聞けよ。」


「志乃センパイに聞いてんだけど。」


「本人が答える気ないから答えてやってるんだろうが!」


「で、なんで補講?」


「人の話を聞け!!」




こんな駅の真ん前で、やかましいったらありゃしない。

ただでさえこんなに暑い日に、暑苦しいことこの上ない。




ていうかこっちが聞きたい。


一体何の用があって、わざわざあたしを呼び出したのよ。






「今日ね、花火大会があるんだって。」




なんて心の疑問には、この場で一番大人な真野先輩が答えてくれる訳で。


だからといって、あぁそういえば、なんて暢気に返答できるはずもなく。




ていうかそれなら、尚更真野先輩と二人で行きたかったんですけど。


なんでコイツらついてくんの?

なにが楽しくてコイツらと一緒に!?




「来栖が、志乃ちゃん一緒じゃなきゃ行かないってしつこくて。」




まぁでも、来栖がいなかったらこんな展開にすらなってなかったのも事実。





「ねぇ、腹減ったから早く行こ。」


「お前はどんだけ自由なんだよ!」


「椎名さん大きい声出さないでよ、うるさいな。」


「お前の所為だろうが!!」


「志乃センパイ行くよー。」


「…アンタの奢りだからね。」




この際、ああだこうだ言っても仕方がないし、せっかくだから楽しませてもらうことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る