第24話

「待って、どういうこと!? うちは避ければいいの!?」

「盾がないからしょうがないだろ」

 ナーナの言葉に絶句する花梨。それでも矢は飛んでくる。

「でも、この勝負はリンが殺されない限り勝てます。あちらは矢ですので、いずれ終わります」

「たしかにそうだけど!」

 でも! と花梨は敵の背中を見る。

「筒の中にどんだけ矢が入ってると思ってるの!?」

「ざっと、合わせて100ぐらいだな」

「なんでそんなに冷静なの!?」

 花梨の大声に、びっくりしたのかリンがキュウ、と鳴く。

「あ、ごめんね、リン……。驚いちゃったか」

「冷静になれ、花梨。別にあいつらを捕まえる方法が一つしかないとは言ってないだろ」

「え、ほんと!?」

「ああ」

 そう言って、ナーナはなにか含んだような笑みを浮かべる。あぁ……、と大将が後ろで額を抑えてため息を吐く。

「え、どういうこと?」

「花梨が死ねばいい」

「はあ?」

「ナーナ、語弊があります。花梨さん、ナーナが言いたいことはですね……、なんといいますか、花梨さんの立場を利用するものになります」

「そそ。王を殺したら、死刑でしょ」

「絶対嫌だからね! 全部避けてやるから!」

 花梨はナーナをキッ、と睨む。それを見てナーナは、嬉しそうな笑顔を見せる。

「じゃあ、やるか」

「もちろん」

 花梨は前を向く。

「やり方が強引すぎますね……」

「結果良ければ全てよし。やる気になってくれてよかったー」

「本当に出会って数日ですか? 相手の考えを読んでますよね?」

「さあ?」

 意味深な二人の会話は集中している花梨の耳には届かない。

「おっと、相手もようやくやる気になってる」

 隣では弓を構えた二人組。ナーナは剣を握り締める。大将も、利き手より力がこもらない左手で槍を握る。

 ヒュン、ヒュン、と矢が三人を狙う。

「なかなか腕が立つ」

 飛んできた矢を剣で弾くナーナ。

「どうしますか?」

「スピード勝負になりそうだ。リンの最高速度は?」

「時速40㌖ぐらいだった気がする」

「割と早いな。ミゴリはそんなに体力ないんだよな、大将?」

「ええ、ありません」

「じゃあ一気に中央山まで行こう!」

「――は?」

 少なくとも中央山までは80㌖ある。リンは、最低でも2時間は飛び続けないとだ。

「な、何いってんの! リンが疲れるでしょう!?」

「そうです、ナーナ。むやみにスピードを出しても、相手は諦めて追いかけるだけになるかもしれません。矢を消費できませんし、リンが疲れてしまうだけです」

「そうだよ」

「いい案だと思ったんだけどなぁー」

 ナーナの考えは花梨の心をヒヤッとさせる。花梨はほっ、と息をついた。

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