1日目
第23話
シュウの勧めで王宮に一晩だけ泊まったあと、三人は準備を済ませ外に出た。
「今日をあわせて5日だ」
父が言う。
「わかってる。ちゃんと戻って来るから」
「あたしは別に遅れてもいいけど」
相変わらずナーナは水を差すような言葉を言う。
「それがだめだから言ってるんじゃん」
「花梨さま」シュウが花梨の耳元でささやく。「リンに積んだ荷物の中に槍が入っていますので、大将さんに。剣も研いておきました」
「あ、ありがとう」
「いえ、当然のことですから」
いってらっしゃいませ、とシュウは頭を下げる。
「じゃあ行ってきます!」
花梨とナーナと大将はリンに乗る。花梨は大きく手を振れば、それが合図だというように、リンが空高くに飛び立つ。
「ひゃっほー!」
「ちょっとナーナ、動かないで! リンが、体制崩しちゃう!」
「空って、自由だな!」
「そりゃそうでしょ、コドリ持ってるの金持ちぐらいしかいないんだから」
ナーナが騒ぎ、花梨が冷静に対処している。いつもとは見慣れない光景にリンだけが冷静でいる。
「まずはどこに行くんですか?」
「1日で、中央山までぶっ飛ばす。行けるよな、リン?」
「あー、またリンに無茶をさせてるー」
花梨はリンの頭を撫でる。
「できるだけリンを高く飛ばせたほうがいいかもしれません。リンは高価なものです。低く飛んでいれば狙われて、命を落としかねません」
「おっけー。リン、高くいける?」
花梨のその言葉で、リンは上昇する。街や人が、より小さく見える。
「気持ちいい……」
小さな声で花梨が後ろを振り返れば、金髪をなびかせて上を向いているナーナの姿が目に入る。
翡翠色の目が、余計にきれいに見える。吸い込まれるように、ナーナの顔を見る。
「んだよ」
「あ、や……、別に」
花梨は前を向く。目の前には青い空が広がっている。
「きれいだね――」
「っ、ふせろ!」
「はっ!?」
ナーナに頭を押さえつけられる。その瞬間、ビュン、となにか鋭いものが花梨の頭上を飛んだ。
「何?」
「うっわ……」
ナーナが横を見て嫌な声を上げる。
「何?」
花梨のその方向を向けば、緑の生き物が空を飛んでいた。その背中には男性二人が乗っている。
「ミゴリ、ですね。コドリの次に高価な生き物ですが、持久力はないためそんなに高くないものです」
「とっととそのコドリをよこせ!」
ビュン、と矢が飛んでくる。
「ぎゃっ」
「このままでは埒が明きません。盾……もしくは剣が欲しいですね」
「あたしと花梨は剣を持ってるけど」
「正直、花梨さんが剣で弓を弾けるとは思えません。花梨さんはご自分で避けてください」
「え」
ナーナと大将は荷物から剣を取り出した。
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