第6話

 ナーナの口から出た予想外の言葉に、花梨は間抜けな顔をする。

「盗賊がよく出るところには馬車が出る。人をさらって他国で売るんだよ、くだらねえ商売だ」

「そんなこと、知らないんだけど」

「だから言っただろ、最後は4年前だ。お前が国王になる1年前」

「親父も言ってなかった」

「そうか」

 衝撃の言葉に花梨は自然とうつむく。

「ま、とりあえず……、リン、中央山まで行け」

 リンは主人の言葉でなくとも大人しく空を泳ぐ。

「ちょっと待って!」

 ある程度進んだところで花梨が叫ぶ。

「なんだよ」

「あれ、何?」

 花梨が指さした先をナーナは見る。そこには、馬車があった。

「なっ、こっちかよ!?」

「勘当たるんじゃないの!?」

「あたしも驚いてる!」

 花梨は人買いがいたことに、ナーナは自分の勘が外れたことに、驚く。

「どうすればいい!?」

「声量下げろ。見つかったら殺されるだけだ、このまま静かに通り――」

「空に子ども2名!」

 ナーナの言葉を遮るように地上から男性の声がする。

「こうなったら、戦うしかねえよ!」

 ナーナは花梨の膝から荷物を取ってリンに縛り付ける。

「なにしてんの!?」

「リンから飛び降りる。こいつが死んだらあたしらも死ぬからな。――リン、お前は空を飛んでろ」

 キュウ、とリンは鳴く。言葉はわからないはずなのに、ナーナは肯定と感じ取ったらしく、太刀をもう一度しっかりと背負う。

「行くぞ」

「はっ!?」

 ナーナは花梨を抱いて飛び降りる。

「うち、太刀なんて握るの初めてなんだけど」

「振り回してけばいいんだよ! あたしが守る!」

 その言葉と同時にナーナは綺麗に着地する。

「敵だ!」

 降りた直後、ナーナはそう叫ぶ。ますます花梨は混乱する。

「て、敵襲!」

 だが、混乱しているのは敵も同じだった。その隙をついてナーナがどんどん切り倒していく。

「上手くない!?」

「こんなもん、朝飯前だ! っていいたいところだが、さすがに敵が多すぎんぞ! おい花梨! お前もさっさと殺れ!」

「ええ!?」

 花梨もナーナに言われたとおりに太刀を振り回す。幸いにも、どんどん人に当たってく。

「いいじゃん、花梨!」

「たまたまだよ!」

 その言葉によって、花梨にどんどん人が集まっていく。「たまたま」だという発言から下手だと敵にわかってしまったのだろう。

「花梨!」

 間一髪のところで、いつもナーナが斬る。

「危なっかしいな!」

「ナーナがリンから降ろしたんでしょーが!」

 ナーナの言葉に花梨は苛立ちを隠せない。元はと言えば、ナーナが悪いのだ。

「あークソ! どんどん人が増えやがる、キリがねえ!」

 急に叫んだナーナに、花梨は驚いて目を見開く。

「敵は弓矢を持ってねえみたいだ」

「ちょ、まさか!」

「リンを呼ぶぞ!」

「やめて!」

 花梨は相手を適当に斬りながら叫ぶ。

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