第4話 夢次元の侵略

・ドッペルゲンガー

諸説あるが大枠としては「自分にそっくりな人が自分を含めて3人存在しており、そのうち2人が出会うと死んでしまう」という都市伝説。


   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆


 暗黒の世界。何の感覚もない世界。無の空間を漂うことしか出来ない世界――フト。ドコカ遠クニ何カヲ感ジル。初メテノ感覚。ソレハ明ルク。温カク。楽シク。懐カシク。兎ニ角、一刻モ早ク、ソコヘ向カッテ行ク――


「ね……今、誰か見てなかった?」

「どうしたのぉ~急にぃ~」

「うん……なんか視線を感じて」

「やだぁ~理沙りさ、怖いこと言わないでぇ~」

「気のせい……だよね……」


――学校。ソウ。アレハ学校。知ッテル。明ルイ世界。リサ? 理沙。私ハ彼女。私ハ理沙――


「理沙、早くしないと学校に遅れるわよ~」

「ちょっと髪形が決まらなくって……」

(おかしい……やっぱ視線を感じる……気のせいだよね?)

「……もう行くね」

「行ってらっしゃい~」


――私ノ顔。鏡ノ向コウノ。ガラスニ映ッタ。彼女ハ私。私ノ顔ハコンナ顔。声ノ主ガ母親。温カイ家族――


「……誰っ!?」

「えへへぇ~ビックリしたぁ?」

「もうっ。なっち、脅かさないでよっ」

「あはは~ごめんごめん。最近、キョロキョロおどおどしてるからさぁ~面白そうかなぁ~って思っちゃってぇ~」

「今度やったら怒るからねっ!……心臓止まるかと思ったんだからっ!」


――コレガ私。理沙。隣ニイルノガ友達ノ千夏ちなつ。愛称ハナッチ。私ノ友達。楽シイ世界――


「……う~ん……むにゃむにゃ……お爺ちゃん……あれ買って……」


――夢ノ中ノオ爺チャン。小学校ノ頃ニ死ンジャッタ。顔。声。匂イ。分カル。覚エテル。優シイ。懐カシイ。私ノオ爺チャン――


「あら、今日は早起きね」

「オカーサン。オハヨー」

「どうしたの? 何か変よ」

「ナンデモナイヨ」

「そう。朝ごはん食べて、学校行ってらっしゃい」

「ハイ」


――……暗い。えっ? ここは……どこ? なんで私――


「理沙ぁ! おっはよぉ~」

「ウン。オ早ウ。チなツ」

「千夏? ってなによぉ~」

「千な……なっチ!」

「うむ。宜しい」


――これは……夢? 妙にはっきりしタ夢。寒いから……もう少し寝テよっと――


「さ、これでいいわ。あとは理沙、数珠を持って」

「うン。分かっタ」

「父の七回忌だったか」

「そうよ。あなたも、ほら身だしなみ整えて!」

「おトーさン。ネクタイ曲がっテるヨ」


――寒クて……暗イ……まダ夢ガ覚めテくれなイ……嫌っ、そこにイる私……アなタハ誰っ!?――

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