第3話 未消化の敵意
・ツチノコ
日本に生息していると伝えられている未確認動物 (UMA)。横槌に似た形態の胴が太いヘビと形容されることが多い。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
子供の遊戯、または悪戯には、様々なものがある。その多くは残酷で、他の動植物の命を奪うような事象である。
例えばアリの巣に熱湯を注ぐ。最初は水で溺れさせるだけで満足していたのに、何度水浸しにしてもアリ達は浮上してくるし、元気に動き回るので、いつしか熱湯で全滅させたくなる。それが高じて、大人になってからアリの巣に溶かした金属を流し込み、芸術的な『作品』に仕上げる人もいる。アリとアリジゴクを戦わせて楽しむ子供も多い。天敵がどのように捕食するのか、その様子を観察して楽しむ。これも高じれば、昆虫や動物の研究家、博士への道が待っている。
例えばカエル。梅雨時、カエルが大合唱し、田んぼなどの水辺から溢れ出して道路を占拠する。それを捕まえ、尻の穴からストローを挿入して、息を吹き入れる。するとカエルのお腹は風船のように膨らみ、大きくなっていく。どこまで入るだろうかと空気を入れ続けると、やがて破裂してカエルは死んでしまう。やはりこれも、科学者になる道の入り口の一つである。
このような子供の遊戯は、往々にして「自分に対して危害を加えてこない相手」を対象に行うイジメだ。しかし、その「危害・危険」の範囲は子供には分からない。アリの中には大変危険な種類もいるし、カエルの中には猛毒を持つ種類もいる。蛇の中には大人しい種類もいれば獰猛な種類もいて、毒を持つ種類も持たない種類もいる。
アオダイショウは無毒で大人しい蛇である。愛玩動物として飼えるし、野生で発見しても大抵の場合は無害で、子供が捕まえても危険は少ない。つまり子供が悪戯をするのに適した種類なのである。森や山の中で見付けては、好き放題に虐待して楽しむ。
シマヘビはアオダイショウに似ていて、間違えることがある。毒は無いが気性が荒い。アオダイショウだと思って捕まようとすれば、手を噛まれる。噛まれた子供が腹いせに、落ちていた石っころや木片を、シマヘビの目の前で振って挑発し、丸呑みさせる。何度も何度も。目を白黒させながら、シマヘビは敵を食べ続け、やがてお腹が大きく膨らんで、身動きもままならなくなり、いずれ死んでしまう。こうして復讐を果たした子供は、満足して家に帰る。
ツチノコとは、消化しない『何か』を飲み込んでしまった、ただの蛇である。
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