第16話「恐怖!不眠のサイクル…!」
【シェアハウス・エテルノ】
ここはエテルノの…荒木京の部屋。
時刻は夜中の2時を過ぎた頃。
京(……眠れない)
静かな部屋のベッドの上で一人、中々眠れずに悶々としている男が居た。
京(ええい、明日は朝っぱらから体育だから、しっかりと睡眠時間を確保したいのに…!)
しかし人体とは厄介な物で、こういう風に「寝なきゃ寝なきゃ」と考えれば考えるほど眠りが遠くなっていくのである…。
京(…ダメだ、一回リビングで飲み物でも飲んでこよう……)
そう考えた京は一度共用スペースのリビングへと移動する。
【エテルノ・大リビング】
京「さて、とりあえず温かいお茶でも飲もっと」
聖夏「え?」
京「あれ?聖夏じゃん…どうしたこんな夜遅くに」
聖夏「それはこちらのセリフですわ…。こんな時間にこっそり起きて、なにかやましいことでもしようとしてるんじゃないでしょうね?この頭の中ピンク男!」
京「いや、真っ先にそんな発想になるお前の方が頭の中まっピンクだからね?」
聖夏「はぁ…わたくしは眠れなくて困っていたのですわ…。明日は朝から体育だっていうのに…」
ソファに腰を下ろしながらそう言う聖夏。
京も温かいお茶を淹れながら共感を示す。
京「俺も全く同じだ。なんでさっさと寝なきゃいけない日に限って中々眠れないんだろうな…人間とかいう生き物の身体どうなってんだよ」
聖夏「まあ、よく遠足の前日は楽しみで眠れないとか言いますし…」
京「楽しみで眠れないのとはちょっと違うような気もするけど…」
聖夏「というか、本当にどうします?ここでのんびり談笑してても目が覚めていくだけですわ」
京「よし、ここはネットで寝れないときの対策を調べてみよう」
聖夏「なるほど…見てみますわ」
そう言ってスマホで検索を始める聖夏。
その間に京も彼女の向かいの席に座る。
京「どうだ?有力な情報はありそうか?」
聖夏「ふむふむ…どうやら寝る前にスマホを見るのはよくないみたいですわね」
京「一瞬にして本末転倒だな…」
聖夏「迅速に終わらせますわよ。えーっと…耳の後ろや頭頂部らへんにリラックス出来るツボがあるみたいですわよ」
京「よし!早速やってみるぞ!」
そうして書かれている通りに無言で頭頂部のツボを押さえる二人…。
聖夏「……」
京「…どうだ?眠くなってきたか?」
聖夏「いいえ…『わたくしは一体何をやってるんだろう』と虚しい気持ちになってきましたわ…」
京「ええい!次だ!次の方法を試すぞ!」
聖夏「次と言っても、他に書いてあるのは『常日頃から生活習慣に気をつけましょう』とかそういう対策系ばかりですわ…」
京「やっぱりそんな都合良く即効性のある睡眠方法なんてない…か」
聖夏「一応まだありますわよ…『どうしても眠れないときはもう逆に眠るのを諦めましょう』って書いてあります」
京「なんだよそれ…もう書いてる方もやけくそだろ…」
聖夏「まあ、それぐらい気持ちをリセットさせた方が良いということなのでしょうけれど…諦めろと言われても諦めるわけにはいかないんですよね」
京「はぁ…なんかさ、寝ようとすると脳内会議が始まっちゃうんだよ。『あれ?明日の準備済ませたよな?いや済ませたはずだ…』みたいな感じで、脳内で自分の思考が止まらなくなるのよ」
聖夏「わかりますわ…わたくしも『ああ、なんであの時あんな返答しちゃったんだろう…』って、脳内反省会が始まって落ち着かなくなってしまいます」
京「なんて難儀な生き物なんだ、人間は……」
聖夏「……最近の調子はどうなのですか?京」
京「なんだよ、唐突だな…」
聖夏「まったく関係ない話をしてたら眠くなるんじゃないかと思って」
京「俺の近況は眠くなる話だってのかい」
聖夏「あら?日本睡眠研究会推奨の入眠コンテンツなんじゃありませんの?」
京「ちょっと実在しそうな組織名を出すのはやめなさい。…で、なに?最近の調子だっけ?まあ普通に学生生活を楽しませて貰ってるよ」
聖夏「あの学校にも慣れました?」
京「ああ、敷地が広すぎたり教室の数が多すぎたりして未だに迷うこと以外は慣れたよ。部活にも入ったし」
聖夏「そう言えば入部したとか言ってましたわね、レンタルクラブでしたっけ」
京「うん、聞いたことある?」
聖夏「名前ぐらいは…。エレナちゃんが所属してる部活ですわよね?」
京「え?あの金髪ツインテチビ後輩と知り合いなの?」
聖夏「知り合いってほどでは。中等部の梅原エレナと言えば、定期的にやらかすトラブルメーカーとして校内ではそれなりの有名人です」
京「いや、悪い意味で有名なのかよ…」
聖夏「……でも、学校生活をそこそこ楽しんでそうでなによりですわ…」
京「うむ…あ、そう言えば聖夏はなんか部活入ってるのか?」
聖夏「……」
返答がなかったので彼女の方を見ると、すやすやと寝息を立てていた。
京「……本当に俺の近況話で寝るなよ」
………。
………………。
【朝・エテルノ・大リビング】
美咲「…りんかおはよ~」
りんか「あ、美咲さん…おはようございます」
美咲「どうしたの?ソファの方ジッと見て」
りんか「京さんと聖夏さんがここで寝てて…」
美咲「え?……ほんとだ」
りんか「どうしてここで寝てたんでしょう…」
美咲「なんかこの二人ってさ、兄妹みたいじゃない?」
りんか「あー…、ちょっとわかります。お二人のやり取り、微笑ましいですよね」
そう言ってニコニコと笑う二人に見守られながら、いつもの朝がやってくる。余談だが、ソファで無理な体勢で寝たせいで、二人は関節を痛めてこの日の体育は結局欠席したらしい…。この日以降、生活習慣により一層気を配るようになった京と聖夏なのであった…。
踊り場で足を止めないでっ! 落合かぐや @Kiyokun
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