序幕2 この世界を知るための戦記、そしてオマケにジジィ
その日、王の間は異様な空気に包まれていた。
「明日はいよいよ召喚の儀を行う。各々方、明日はよろしく頼む。」
ネオ・ペルツバァーと呼ばれる世界。
そしてこの世界の中心でもある国、アグリア王国。その最上位である女王、フィルラ妃のこの号令により俺を含む配下の将全てが緊迫し、ざわめきが起こる。
「ついにやるのか。」
「この世界の危機だ。やるしかないだろう。」
「再び、平和を取り戻す為に。」
各将が言うのも無理はない。再びこの国は、いやこの世界は滅亡の危機に陥っているのだから。
アグリア王国を含むこのネオ・ペルツバァーには5つの大陸がある。ヒューマン、フェアリー、ビースト、エルフ、アヤカシと呼ばれる種族が治める国はかつて種族の差別や偏見から自国民の安全を守るために他種族の殲滅を開始。自国の領土拡大の名目で大陸間戦争を行なっていた。世界の半数の者が死に、魔術や妖術、兵器によってほとんどの大地が荒野となった。後にグリーボア戦争と呼ばれるこの戦いは約100年に及ぶ長期に渡って行われた。しかし、終わりは呆気なくその戦争は今から約80年前に終止符が打たれた。
『異世界ニホーン』と呼ばれる世界から来た一人の少年の手によってたった1年で終わりを迎えた。
その戦争の詳細を記載した『グリーボア戦記』にはこう締めくくられている。
『異世界からの使者、勇者ヒロトと平和を愛する各国の仲間によって長期戦を覚悟した戦争はたった1年という短期間で終戦を迎えた。しかし終戦後、彼はこつぜんとこの世界から姿を消した。』と。
そして、
『彼は仲間こう語っている。「俺はこの世界のみんなが好きになった。だから、終わりにしよう。」と。
この言葉から、彼は平和を愛する平和の使者なのかもしれない。我々は彼の言葉の通り、平和の為に醜い戦争を二度としないことを誓い、この平和が永遠につづくことを願っている。』
これでこの戦記は終わっている。
その言葉通り、世界は平和を取り戻した。今でも差別や偏見の色合いは少し残るものの、各国は他種族の交流を開始。お互いの相互理解に取り組んでいる。平和を謳歌する世界、しかしそれは長くは続かなかった。
再び世界は混迷に飲み込まれようとしていた。
魔族、今度の敵は彼らだった。
ある日を境にネオ・ペルツバァーに魔族と呼ばれる異様な魔物、中には人型の魔物が現れた。そして全国に魔王と名乗るモノが空に現れ、こう宣言した。
「この世界を我が物とする。」
その宣言の通り、魔族軍は攻撃を開始。各地の町や都市を占領、そこから支配地域を拡大させていった。彼らの本拠地はわからない。わかっているのは彼らは再び世界を闇に落とそうとしていることだけ。各国は連携を組み、魔族討伐連合軍を形成、反攻に出た。
そしてそこから半年の月日が流れた。戦況は膠着状態に陥り、両軍とも疲弊していった。そこで再び異世界から勇者を呼び出し、平和を取り戻そうと考えたのだ。そしてその召喚を行うのに白羽の矢が立ったのがアグリア王国なのである。何故なら、この国こそが前大戦の終結に貢献した勇者を呼び出した実績があるのだ。実際は戦況を動かすための起爆剤として利用したかったらしいが、結果的には彼自体がそれを否定して世界を平和にしようと行動したのだがここではその話は割愛させてもらう。
ともかく、未曾有の危機に再び召喚の儀を行うことが決定してから数時間後、俺ことハージュ・フィドルは自室に戻る途中だった。
「遂にこの時が来た、この目で召喚の儀を謁見することができるとは……。」
俺が興奮するのも無理はない。戦記でしか知らないものを実際に明日行われるのだから。
「これで、世界が再び平穏を取り戻せることを願うのみだな。」
と異世界からの勇者登場を夢見ながら、俺は自室の扉を開けた。
「やぁ、待っておったぞ!」
そしてすぐに扉を閉めた。
「……?疲れているのか?」
俺はまだ若いはずなのだが、ここで来て疲れか?幻覚と幻聴が同時に起こるなんで。これは気のせいだな、そんなバカなことある訳ない。再び扉を開ける。
「おいおい、何故扉を閉めるのだ?ここはハージュ、お主の部屋じゃろ?」
……バカなことが起こっている。俺のベットに片肘ついて横になっているロング白髪のジジィがいた。
「まぁともかくじゃ。ハージュ君、君に頼みたいことがあるのじゃが……。」
話を勝手に進められる前に、一言言っておこう。
「……だ、誰じゃテメェ゙ェ゙ェェェーーー!!!!!」
戦記を書いた、『※この戦記にはハーレムはありません。』と注釈入れたら、俺は何故か『神様』にどやされた 筑波未来 @arushira0710
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