戦記を書いた、『※この戦記にはハーレムはありません。』と注釈入れたら、俺は何故か『神様』にどやされた

筑波未来

序幕 後世の為に戦記を書こう、そしてイラつこう

『異世界からの使者。その者がこの国と世界の平和を取り戻し、その者は勇者として末代までその栄光を語り継がれることが約束されるであろう。

この物語は異世界「ネオ・ペルツバァー」に転生した少年が、出会いと別れや戦い、そしてを築きあげる壮大な戦記なのである!』

「……で、良いのか?」

「うむうむ、上出来上出来!」

手に持ったから視線を変え、目の前に座るこのボケ老人……もとい、『神様』と名乗る人物に問いかける。

「いやぁ、良いね良いね。面白くあらすじが書けたと思うんじゃが、どうかねハージュ君?」

ハージュとは俺のことだが、ここでの詳細は省かせてもらい、

「別に良いんじゃないですか。」

とそれなりに褒めてみる。が、

「全く、また口先だけで褒めよって……。心から最高と思っていないじゃろ。」

……チッ、バレたか。こういう細かい所まで気付かれてしまうから本当にこの口うるさい爺さんは嫌いだ。

「それに、また『この口うるさい爺さん』かさとでも思っているんじゃろ。」

勝手に心を読むな。……当たっているけど。

「あと、先ほどはスルッとスルーしたのじゃが、ワシは一つ怒りたい部分がある。」

そう言うと俺の持っている台本をひったくり、バンバンととある一文を叩きながら、見よと言わんばかりに俺の顔に近づける。

「このの部分!何故、ハーレムと読まないんじゃ!?折角、ルビまで振っておいたのに……。この戦記はこの部分がある意味メインディッシュなんじゃぞ!?それを何故読まない!……!?もしや、当て付けか?こんな馬鹿みたいなことになんで付き合わなければならないと思って、だったらテキトーにやってやろうと思ってのワシへの当て付けか?」

グイグイと迫る白ひげを蓄えた顔、……鬱陶しい。何故、いちいちこのジジイの愚痴を聞かなければならないのだろうか。あの時、二つ返事で返答した俺も馬鹿なのかもしれないがだからといって相当歳いっている長い白髪を振り乱したジジイ、もとい『神様』に若い者が好きそうな「ハーレム?」だが「ゴーレム?」だか知らないが、そういう戦記モノを書くのに赤子みたいに駄々をこねるシーンを見させられているんだ?手伝いとはそこまでも含まれているのか?言葉のニュアンスや表現方法について少し注文が違うからとここまでされるとやる気もへったくれも無くなる。

「……何であの時にあんなこと言っちまったんだろうか。」



そんなこんなもこの状況になったのについてはあの日、『の前日』まで遡ることになる。……今思えばあまり思い出したくもない一日だな。

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