第3話

「ああ、賀川先生、すみません。」



事務室のドアが開いて、事務員が声をかける。

「もう一つ、確認したいことが…」と言われたので、そのまま事務室へと入り出てきたとき……



もう桜の下には誰もいなかった。








配属されたのは、1年部。

1年5組の担任だ。



学年部の顔合わせに、分掌の(校内の係分担)の顔合わせ。それぞれの細かい仕事の分担の打ち合わせがある。


それに加えて、入学式に際する業務もあって、まだ春休み中というのに、真琴は自分の机に着く暇もなく働いた。




次の会議までにお茶でも飲もうと、真琴は給湯室へと立った。

新しい職場なので、お茶の1杯を飲むのでさえ勝手が違って気を遣う。





「お茶?こっちに、コーヒーあるけど?」




給湯室で立ち尽くしている真琴に、声がかけられる。



振り向くと――、

確か同じ1年の担任をしている古庄だ。


思わず身構えてしまうようなイケメンとは、彼のような男性をいうのだろう。



真琴も例に違わず、息を呑んで緊張する。



けれども、せっかくの好意を無にしてもいけないので、古庄の隣へ行ってカップへとコーヒーを注いだ。

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