第21話 霊通貨
「あとこれ……どうしようか」
「そうですね……」
頼の手に乗せられた紙の束は、見覚えはあったけれど、手にしたことはなかった。
「霊とは深く関わらないためにこれまでは断ってまして……後々厄介なことに巻き込まれても困るので」
「確かになぁ……せっかくだし受け取っても良いと思うけど……ああ、そうだ。あの男の人に聞いたらどう?」
「あの男の人……?」
彼の提案で、この紙については利伝に聞くことになった。実家にこんな頻繁に出向くのは久々で、逆に新鮮に感じる。
「頼。そこの自販機でお水を買ってもいいですか?」
「もちろん。喉乾いてたか?」
「いえ、何か歯茎と口に挟まっているような感覚が」
「それクスクスかもな。俺もそうなる」
そうしている間に実家に着き、もらったものについて利伝に説明すると、彼はため息を吐きながら下を向いた。
「まさかお前……これまで出会った霊たちから何も受け取って来なかったのですか? 御礼をくれると言われたのに断り続けていたと?」
「はい……だって黙って受け取ったら後から請求されたり、問題になると思って」
「……お前の兄や姉達からは何も教わらなかったのですか」
「え? ええ……」
利伝はなんてことだと言いながら額に手を添えた。なんだその反応は。受け取ってもよかったのですか?
「僕は、お前達兄弟が親密であるという理想を勝手に抱き、それが現実であると信じ込んでいたようです」
「兄や姉達とはほとんど連絡を取りません……」
答えた通りだ。綾咲家の人間はとにかく人数が多く、私にも兄や姉が多くいる。それぞれが霊媒師としての力を持っており、個々で活動している状態でほとんど顔を合わせることはない。
特に霊力が低い私なんて見向きもされていないだろう。何かを教えるなんてことあるわけがない。
「これまでもらった御礼が何なのか、確認はしていましたか?」
「いや……すぐに断ったので隠し場所しか知りません」
「ならすぐに回収しに行きなさい。成仏した霊達にはもうどうにもできません。お前に渡したものとして捨てたことでしょう」
ここまで黙っていた頼が私を見て、じゃあ取りに行ってみるかと言ってくれた。それにすぐに頷き、そうした自分に少し驚いた。いつの間にこんなにすぐ他人を頼るようになったのだろう。利伝が再び口を開く。
「それに、その御礼はお前が思っているような現代の金銭ではありませんよ」
「え……!? じゃあ何だっていうんです?」
「本当の名前はこの時代じゃ誰も知りません。それについて話すときのために、我々は“霊通貨”と呼んでいます」
“霊通貨”……?
「霊通貨をこちらに差し出せば、現代のお金に換金できますよ。これは報酬であり、汚いお金でも後から請求されるお金でもありません」
「逮捕も……されませんか?」
「されません……」
はぁ……とため息を吐かれ拍子抜けしてしまった。
「ただでさえ今は……」
「え?」
「あ、ああいや……なんでもありません」
利伝は何かを言おうとしていたけれど、はぐらかされてしまう。もう一度聞くか迷っているところで、それは大きな足音とと声にかき消された。
「りでーん!! 白紙の話だけどさー!!」
「天満(てんま)! その話は内密にと……!」
「いーじゃんだれも……って人いたのかよ」
そこに入ってきたのは五つ歳上の兄である天満だった。
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