幼馴染の女友達がゲームのバトル中急に「そろそろ付き合わない?」とか言ってきたんだが
啄木鳥
突然の告白
「……謙吾、多分エリアに敵一人侵入してるから倒しといて」
「ん? どこ?」
「エリアの右のくぼんでるとこ、潜伏してると思う」
「ほいほい」
俺、三島謙吾はコントローラーを操作しながら軽く返事をして、潜伏中の敵をキルしていく。
「……倒した。あっ、凛。上からチャージャー狙ってるから倒しといて」
「りょーかい」
俺の要求に軽く返事をして慣れた操作で敵を瞬殺しているのは、俺の小学生時代からの幼馴染で、高校生になった今でもこうやってよく一緒にゲームをする女友達、
凛は学校では俺とはあまり話さない。まあ、俺と話してもゲームのことくらいしか話題にならないし、周りに付き合ってるとか変な誤解されたくない、みたいな理由でだろう。凛可愛いから、誤解が広まったら色々と面倒なことになりそうだし。
しかし、何で凛は高校生になった今でもゲームをしに俺の家に来るんだろう? 凛には普通に友達もいる、そっちとは遊んだりしていないのか……?
少しそんな疑問を抱きながらも、俺は迫りくる敵プレイヤーを冷静にキルしていく。
「謙吾」
「……ん? なんだ?」
敵の一人と激しい戦闘を繰り広げていると、凛がコントローラーをカチャカチャさせながら俺に話しかけてきた。
「私たち、そろそろ付き合わない?」
「ん…………へっ?」
突然凛にそんなことを言われて、俺は手の動きが止まる。
ギギギと首を機械のようにゆっくりと動かし、凛の方を見る。
「ん? どうかした?」
しかし、告白してきた当の本人は、コントローラーを握り締めたままゲーム画面から目を離さずに真顔でそう尋ねてきた。
「え、え? いや、さっきのは一体……」
ブブブブブ!
凛にさっきの発言について尋ねようとすると、手に持っていたコントローラーが振動する。
驚いてゲーム画面を見てみると、先程戦っていた敵に倒されていた。
「ほら、バトル中なんだからよそ見しないで集中して?」
「お、おう……って、いやいやいや! 違うだろ!」
俺は思わず大声を上げてしまい、凛はその声に驚いてビクッと体を震わす。
「な、何?」
俺のことを横目で見ながら驚いたような声で尋ねてきた凛。
俺はコントローラーを置いて体ごと凛の方を向いて尋ね返す。
「いや、それはこっちのセリフなんだけど。何? いきなり」
「えっ、嫌、だった?」
「あっ、いや、そういうことじゃなくてさ……」
ちらりとこちらを向いてポツリとそんな言葉を溢す凛。俺は慌てて訂正する。
「嬉しいよ? 凛にそう言ってもらえるのは。でもさ、何でゲームしてる時なの?」
「…………」
俺の問いを無視してゲーム画面に視線を移す凛。
「あ、あの~? 今結構真面目に話してるから、一旦コントローラー置いてくれない?」
「……やだ」
俺は優しくお願いしてみるが、凛は視線を完全にゲーム画面に固定させたまま少し間を空けて拒否する。
ポチッ
「あっ!」
俺は、凛のゲーム機の電源ボタンを押して電源を切るという強硬手段に出た。
いきなりゲームの電源を切られた凛は、恨めしそうな目で俺のことを見てくる。
(そんな目で見るなよ……)と心の中で呟きながらも、俺はさっき凛にした質問をもう一度する。
「ねえ、何でゲームしてるときに、その、えっと……あんなこと言ったんだ?」
自分の口からさっき凛が口にした言葉を言うのはなんか恥ずかしかったので、俺は少し言葉を濁して尋ねる。
すると、凛はコントローラーを持ったまま体育座りをしてうずくまったような体勢になり、小さい声でぼそりと呟く。
「……から」
「ん?」
うまく聞き取れなかったので、俺は聞き返す。
「……面と向かって、言うのは、恥ずかしい、から」
「っーーー!」
耳を真っ赤にして小さな声で言った凛の言葉に、俺は激しく悶えて思わず顔をそむける。
え、何?さっきまでは大丈夫だったのに、いきなりめちゃくちゃ恥ずかしくなったんだけど。心臓バクバクうるさい、今俺絶対顔赤いだろ、熱い熱い熱い熱い!
いや、一旦落ち着け、深呼吸、深呼吸、深呼吸…………
「……ねえ」
必死に平静を保とうと何度も深呼吸を繰り返していると、凛がそう話しかけてきた。俺はまだ火照っている顔で凛の方を見る。
凛は、耳まで真っ赤に染まった顔をこちらに向けて、恥じらいの色が見えるきれいな瞳で俺の方を見ていた。
一瞬、しかし俺の感覚では長い時間、凛と見つめあう。
そうして、凛が口を開く。
「……告白の返事、して、くれないの?」
(っ~~~~!)
俺はまた激しく悶えて、目を逸らして顔を背けそうになるが、ここでそれをするのはダメだと思い必死にこらえる。
「あ、その、えっと……」
しかし、何をどんなふうに伝えればいいのか全くわからずしどろもどろになる。
そうして、しばらくあれこれ考えようとしたのだが、頭が全く働かない。
「…………もし、俺で良ければ、お付き合い、させて、ください…………」
結果、口から絞り出すように言ったのは、そんなありきたりな言葉。
「…………はい」
俺の返事からだいぶ間を開けて、凛は少し俯きがちに小さく頷く。
「…………」
「…………」
それからしばらく続く沈黙。俺も凛も顔を激しく赤面させて、恥ずかしさのあまり互いの顔を直視できない。
ブブブブブブ!
「「っ?」」
急に俺のコントローラーが振動したので、俺と凛は驚いて俺のゲーム画面を見る。
すると、
「……もっかいバトル、しよっか」
「あ、う、うん」
そうして、俺と凛はコントローラーを操作して『続けてバトル!』と表示されたボタンをタップする。
(……結局、俺って凛と付き合うことになったんだよな? そういうことで、いいんだよな?)
今まで友達だった凛と付き合う、これから、男女として……いや、変なことは考えるな。
俺は
「……?」
(やっば可愛いっ!!)
俺の視線に気づいた凛が不思議そうに小首を傾げる様子を見て、俺は一瞬フリーズして、心の中で女子高生みたいなセリフを思いっきり叫ぶ。
それから少しして我に返り、自分に(今はゲームに集中、集中、集中)と念じをかけて邪な思いを無理矢理ねじ伏せる。
(あ、あと一人集まったら
俺は気持ちを切り替え引き締めて、コントローラーを強く握る。
チュッ
「…………ふえっ?」
いきなり頬に柔らかいものが触れたような感覚がしたので思わず横を見ると、頬を染めた凛の顔が目の前にあった。
「え、え、えっとー、凛? あ、あの、こ、れは……」
俺がキョドりまくりながら尋ねると、凛はそっぽを向いて小さな声でボソッと呟く。
「こ、これから、よろしく、お願いしますって、こと、で…………」
「っーーーーー!」
それは反則だろ…………!
俺は理性が吹っ飛びそうになるのを寸前のところでこらえて、声にならない声を上げる。
ブブブブブ!
そんな俺の心とシンクロするように、二人のコントローラーが振動し、
…………もうすでにちょっとヤバいんだが。
俺は半ば放心状態になってコントローラーを操作できず、ゲームのスタート地点で一人で突っ立っていた。
そして、もう一人は……コントローラーの操作をミスってそのプレイヤーの周りをぐるぐる回っていた。
幼馴染の女友達がゲームのバトル中急に「そろそろ付き合わない?」とか言ってきたんだが 啄木鳥 @syou0917
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