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でも。
それでも。
私はそのことを謝るつもりはない。
「今ここで謝ったら、貴女に対する感情を否定することになる。それに…。」
それに。
「最低ですけど、貴女に触れることができて嬉しかったことを謝りたくない。」
まさか私は本当ここまで低俗で最低な人間だと思っていなかった。
これ普通ならアウトだ。
絶対、確実に。
「ズル…い。キスも初めてだったのに…。」
じゃあファーストキスは私なんだ。
罪悪感はあるけれど、それ以上に嬉しくて堪らない。本当どうかしてるよね。
「その、えっと私に抱いた感情って……?」
貴女に抱いた感情。
それは触りたいという性的な感情だけじゃない。
「いつもお店にいるときと違った雰囲気に魅せられた。甘えてくるところが可愛いって思った。キスして感じてる貴女がキレイだと思った。」
これも本心だ。
だからこそ、私は私を止めることができなかった。
「本…当、ズルい……ひどいこと…したのに……。」
「うん。」
「私…一杯一杯だったのに………。」
「うん。」
彼女の言葉を頷くことしかできない。
彼女の言葉を一つ一つ受け止めることしかできない。
「でも……そんなミズキちゃんに惹かれてる私がいるの。」
耳を疑った。
彼女を見ると俯いて表情が見えない。
今…なんて?
私に惹かれてる?彼女が?
「ミズキちゃん、スマートで優しいし、カッコいいって思ってた。話してみたいなって。」
………驚いた。
すごく美化されてるけど、私と同じようなこと思ってくれてたんだ。
話したいって。
「あの時、偶然助けてくれて…嬉しかった。一緒にいてくれて怖かった気持ちも薄れた。もちろんキスされた時や……その……エッチなこととかすごく驚いたしショックもあったけど……嫌じゃなかった。」
嫌じゃなかった?
「忘れようとしたけれど出来なかった。むしろもっとミズキちゃんのこと気になって…気付けば家にいる時もミズキちゃんのこと考えてるし…。それに…その……あの時のミズキちゃん。普段と違ってちょっと意地悪だったけどそこがカッコよかったり………。」
私は夢でも見ているの?
罵倒され、罵られ、フルボッコにされると思って。それなりに覚悟もしていた。
だけど彼女はそれをするどころか………。
私に………………。
「おかしいよね…。でも私にはどうしようも出来なくて…。」
どうしよう。
告白………と思ってもいいのかな。
自惚れじゃないよね?
どうしよう。どうしよう。
告白されてこんなに嬉しいと思うのは初めてなんだけど。
やっぱり彼女といると私はおかしくなる。
これが恋なのか………ただの欲なのかわからないけど。
少なくとも、私は嬉しい。
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