20
今は夜の八時半を越えている。
そのため、この辺りでやっている店といえば、居酒屋かカラオケ、コンビニくらいだろう。
しょうがない。
少し広い公園があるから、そこで話すしかないかなと思い、それを彼女に提案すると、快く受け入れてくれる。
本当は私の家に彼女を招き入れたいところだけども、なんせ私には彼女を襲ったという前科がある。
警戒されてしまうし、信用もゼロに等しいのに誘える訳がない。
そのため、公園しかない。
広い公園といっても児童遊園のような公園ではなく、普通の公園だから話ができるところといえばベンチくらいだろう。
………よし、殴られる覚悟もしておこう。
「ここでいいですか?」
「はい。」
彼女がベンチに座る。
私は隣に座ろうかとも思ったけど、やめた。
少し彼女と距離をおいて座ることにした。
なぜなら私には前科があるから。
そのつもりは今はないけれど、彼女を二度も襲わないとも限らないから。
「……………。」
「…………………。」
彼女は何も話さない。
そのため私も何も言えない。
どうしよう。
この沈黙。
意外としんどい。
彼女が何を考えて、何を言うつもりなのか全く分からないから怖かったりもする。
ここは私から切り出すべき?
いやいやいや。
やっぱり彼女が言うのを待った方がいいのではないか。
しかし。
いくらたっても彼女は口を開こうとしない。
なので。
「もしかしてさ。あの時のこと?」
我慢ができず、私から切り出した。
埒もあかないし。
すると、彼女はピクッと反応した。
やはり、彼女の話とはあの一夜のことだった。
「あの……あの時、助けてくれてありがとうございました。」
「ん?あぁ、いいですよ。でもそれだけじゃないですよね、話。」
「は、はい。えっと………。」
妙に口ごもるなぁ。
何か言いにくいこと……………だったね。
彼女、たぶん初めてだっただろうし。おいそれと話題にすることができないのかな。
「あの………その………。」
だんだん彼女の顔があの時のように真っ赤になっていく。
あの時のことを、一夜のことを思い出したのだろうか。
こんなことで赤くなるとか………。
可愛すぎじゃない?
いちいちツボに入るというか。
私まで思い出してしまうじゃないか。
ああダメだ。
このまま彼女を待ってたらまた欲情しそう。
「謝りませんよ。」
「え?」
「あの時、確かに私は貴女を抱いた。それら許されないことだと思うし、恨まれるのは当然だと思います。」
「…………。」
また彼女はだんまりになる。
私の言葉を待っているように。
もういいや。
本当のことを、あの時のことを正直に話そう。
そして大人しく責められて、殴られよう。
彼女の気が済むまで。
「何か言いたいことや聞きたいことあるんじゃないですか?」
「は、はい。じゃあ……どうしてあんな………ことを……。」
やっぱりね。
言いにくいけど、答えなくては。
「それは貴女に欲情したからですよ。」
「欲、情……?」
あー分かりづらいか。
えっと分かりやすく言い換えると…。
「貴女を抱きたかった。でも勘違いしてほしくないのは、最初からじゃないってこと。初めは本当に一緒に寝るだけのつもりだった。信じられないかもしれないけど。」
本当のことだ。
怖い目にあって、震えていた彼女をほっておけなかった。
そのまま一人にしておけるはずもなかった。
気になってる人だからこそ何かしたいって思った。
本当に話をする関係になって。
少しずつ仲良くなって、貴女を知ることができたらって思っていた。
いきなり段階をすっ飛ばして身体の関係になるつもりはなかったのだ。
いや元々、キスすらするつもりも発想もなかったけれど。
「そう……だったんですね。」
「でも途中からあまりに無防備で、あまりに無自覚な貴女を見て…欲情してしまいました。触れたいって思いました。」
あんな感情、初めてだった。
私の手に負えなかった。
我慢できなかった。
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