第6話 工場での笑いもの
月曜日、茂雄は工場でいつもの作業を始めた。
ベルトコンベアの前で部品を組み立てる単純作業。Cランクの仕事なんて、こんなもんだ。だが、今日は少し気分が違った。一輝を野球選手にする――その目標が、心のどこかに灯をともしていた。
昼休み、同僚たちと弁当を食べていると、茂雄はつい口を滑らせた。
「俺、息子を野球選手にしようと思ってさ。」
一瞬、テーブルが静まり返った。そして、爆笑が響いた。
「ははっ! お前が? Cランクの西本が何だって?」
「野球選手って、お前、Aランク以上の世界だぞ。夢見すぎだろ!」
同僚の山田が腹を抱えて笑う。茂雄はムッとしたが、反論する気力はなかった。確かに、Cランクの自分がそんな大それたことを言うのは笑いものだ。
だが、山田がさらに畳みかけてきた。
「まぁ、息子もどうせDかCだろ? お前ら夫婦からまともなランクが生まれるわけねえよ。」
その言葉に、茂雄の中で何かが切れた。
「A⁺だよ。一輝はA⁺ランクだ。」
今度は本当に静寂が訪れた。山田が目を丸くし、他の同僚も箸を止めた。
「……マジかよ?」
「マジだ。病院の検査で出た。遺伝子データも揃ってる。」
茂雄は淡々と答えた。すると、山田がニヤリと笑った。
「ならなおさら無理だろ。お前みたいな底辺が、A⁺を育てられるわけねえ。どうせ才能潰して終わりだよ。」
その言葉が、茂雄の胸に突き刺さった。確かに、自分には何もない。金も知識も体力もない。だが、一輝は沙夜が残してくれた宝だ。潰すわけにはいかない。
「黙れよ、山田。俺がどうにかしてやる。」
茂雄は弁当を放り出し、立ち上がった。同僚たちの嘲笑が背中に刺さったが、無視して工場に戻った。
その夜、一輝がボールを握って笑う姿を見ながら、茂雄は思った。
「笑いものでもいい。俺は一輝を世界一にする。それが俺の勝ちだ。」
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