第4話 夢?
気づいたときには、俺は家のベッドにいた。
ベッドから起き上がると、包丁とまな板で作業している音がリビングから聞こえてくる。なごみであろうか?だが、なごみはもうこの世にはいないはずだ。
だとしたら、不審者?泥棒?鍵は閉めていた…とは言い切れない。俺だってなぜ今家にいるのかわからないのだから。
俺は、嫌な意味で弾んでいる俺の心臓を抑えて、リビングへと向かう。
ちらっとその方向を向くと、一人の女らしき人が料理を作っている。
「あ、おはようございます。今日はちょっとだけ寝坊かな?」
そんな呑気なことを言っている人は、間違いなくなごみだった。
なんだ。やっぱり、あれは夢だったのか。やっぱりあの日、俺は疲れていて今朝みたいに気を失ったかのようにベッドで寝ていたんだな。
あのときの絶望や、警察の不信な言葉、全てが俺の夢だったというわけだ。
それなら全然安心だ。
俺は何事もなかったのように、なごみに笑顔を振りまき、食卓へとつく。
今朝はどんなご飯を食べられるのかなと胸を踊らせていたが、そんなのは一瞬で終わってしまった。
食卓へとお皿を運んできたなごみがリビングに戻っていったあと俺は普通に箸を持って、食べようとしていた。すると、いきなり目の前の料理がなくなり、なごみも消えていた。
なのに俺の右手にはなにか持っているような感覚があった。見てみると、一枚の写真だった。
その写真には、第三者の目線で撮ったと思われるもので、この食卓で、男となごみらしき女が喧嘩をしていた。男は女の髪を引っ張り、顔をテーブルに押し付けていた。
その男の顔はなごみのような女性の顔と違ってはっきりと写っていなく、むしろ誰かが編集でぼやけを入れたのではと思うほど見にくい。だが、その姿にはなぜか見覚えがある。以前、なごみは彼女の兄を俺の家に泊りがけで招き入れていた。なので、必然的に三人で食事をとることになった。
その男がこんなことを…?
俺はそいつに問い詰めようとしたが、あいにく彼の連絡先を持っていない。
仕方ないかと思いつつも、彼の家は知っているので、アポ無し訪問を試みた。
ーーー
彼の家に到着し、俺はインターホンを鳴らした。
数秒待ったあと、女性の声が聞こえた。
「あ、あの斎藤と申しますが、」
「帰ってください。あなたに会わせる人は一人もいません。お引き取りください。」
俺が用件を言う前に女性はインターホンを切ってしまった。
俺は内心ムカついていた。なんだよ?俺に会わせる人はいねえって?
留守なら留守だとそう言えばいいのに。わざわざ訪問者を敵に回すような言い方をしなくてもいいじゃないか、道徳心のない女性だ。
まあ、ここに立ち往生していてもただの不審者と思われるだけなので、この場をあとにすることした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます