友達以上恋人未満の恋

斗成

友達以上恋人未満の恋

 春の足音が近づいてくる頃、深山雪斗は、毎日のように放課後の教室で如月唯香と向かい合っていた。二人は同じクラスで、長い間一緒に過ごしてきた友達だったが、雪斗の心は、いつからか唯香に特別な感情を抱いていた。


 唯香はその美貌と知性で周囲の視線を集める存在だった。彼女のまっすぐな瞳は、いつも何か真剣なことを考えているように見えた。そんな彼女に惹かれたのは、彼女の純粋さが心の奥に残ったからだ。


「雪斗、これ見て。」唯香は自分のノートを広げていた。彼女の手元には文芸部の原稿があった。


「どうしたの?」雪斗は興味津々に彼女に近づく。


「この詩、どう思う?」唯香の目は、期待に満ちていた。


「すごくいいと思うよ。唯香の感情がこもっているね。」雪斗は微笑みながら言った。


「本当?嬉しい!」唯香の顔はぱっと明るくなり、雪斗の心も踊った。彼女が喜ぶ姿を見るのが好きだったからだ。


 だが、雪斗の心の中ではそれ以上の感情が渦巻いていた。四月の卒業式が近づくにつれ、告白しようと決心していた。だが、唯香が恋愛に対して疎いことを知っているため、もし自分の気持ちを打ち明けたら、これまでの関係が壊れてしまうのではと不安だった。


「雪斗、なんだか最近、あなたが少し遠くにいる気がするの。何かあった?」唯香が心配そうに聞いた。


「いや、そんなことないよ。唯香といると楽しいから、むしろ近くに感じるけど。」彼は笑顔を絶やさず答えた。


 けれど心の奥底では、不安と期待が交錯していた。卒業式の当日、彼は決意を胸に、唯香に特別な思いを伝えようと心に決めていた。


 卒業式の日、華やかな雰囲気の中で、雪斗は唯香の隣に座っていた。彼女の姿は、まるで春の花のように美しかった。先生の話や友達との別れの挨拶を聞きながら、雪斗の心は高鳴っていた。それでも、彼の胸中には迷いが渦巻いていた。卒業したら別々の道を歩むことになるのではないか、このまま何も言わずに終わってしまうのではないかと。


 卒業証書を受け取った後、彼は唯香を呼び止めた。「唯香、少し話があるんだけど。」


 唯香は驚いたような表情で振り返る。「何?」


「放課後、屋上に行かない?」彼の声は少し震えていた。


「うん、わかった。」彼女は微笑みながら答えた。


 放課後、二人は学校の屋上に上がった。風に舞う桜の花びらが舞い散る中で、雪斗は心を落ち着けようと深呼吸した。彼は唯香に向かってゆっくりと近づいた。


「唯香、実は俺、ずっと君に伝えたいことがあったんだ。」声が震えた。


「伝えたいこと?」唯香は驚いた様子で見つめ返す。


「うん、俺は…君のことが好きなんだ。友達以上の気持ちを持っている。」雪斗は勇気を振り絞って言った。


 唯香は驚き、言葉を失っていた。彼女の瞳が大きくなり、ほんのり頬が赤く染まった。彼女は口を開こうとしたが、言葉が出てこなかった。


「でも、俺も告白するってことには不安があった。君のことを失うのが怖かったから…でも、伝えないと進めないと思って。」


 唯香は徐々に微笑みを浮かべた。「私も…雪斗のことが好き。でも、どう接したらいいのかわからなかった。」


 彼の心が温かくなる。「本当に?」


「うん。私、恋愛に疎いから、どうすればいいのかわからないけど…雪斗が好きなんだ。」唯香の言葉は、雪斗の胸の奥まで届いた。


「じゃあ、これから一緒に考えていこう。少しずつ、二人で進んでいこう。」雪斗は安心して微笑んだ。


「うん、私もそれがいい。」唯香も微笑み返した。


 二人は手を繋ぎ、屋上から見える風景を共に眺めた。今までの友情を超えた特別な関係が始まったのを、二人は少しずつ感じていた。この瞬間、友達以上恋人未満の道のりを一歩踏み出したのだった。


 春の風が優しく吹き抜ける中、彼らの心には新たな希望と温もりが満ちていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

友達以上恋人未満の恋 斗成 @ranu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ