死生観、というものを丁寧に描き切った作品だと感じました。
AIの発達により、「人がいつ死ぬか」が完璧に予測されている社会。死の原因はわからないものの、時期だけは確定している。
そんな社会の中で、亜子は間もなく命を終えることがわかる。主人公である「あたし」は幼稚園からの幼馴染である悠人と三人で、亜子の「人生お疲れ様」のパーティーを開く。
死を受け入れている亜子。そんな亜子との別れにはやはり寂しさを感じる。これからは同じように一緒に道を歩くこともできない。
でも同時に、「死」というものが見えるようになったことで、「生きていること」の意味についてもしっかり向き合うことができるようになっている。
世の中にいる資産家たちは金の力で「生」や「若さ」を維持しているが、それが本当に幸せなものとは映らない。
死ぬこと。そして自然の一つとなり、生命として循環していくこと。
それを意識したことにより、これまで見えていなかった「世界の広がり」が見えるようにもなっていく。
空を飛ぶ鳥たちの姿が象徴的に描き出される本作。ごく普通に生き、ごく普通に死んでいく動物たち。それと同じように、人間も同じく生命としての終わりを迎える。
「切り離された永遠」を生きる資産家たちとは真逆に、「循環する有限」を意識する亜子たち。死を受け入れることで、人間という小さな「個」の感覚から解き放たれ、「自然という大きな何か」との一体感が得られる。
悲壮感ではなく、希望を持って死生観が描き出される、とてもあたたかな物語でした。