好きな人の好きな人

第1話 好きと言えないまま

あなたのことがこんなにも好きなのに

あなたには好きな人がいる

わたしと笑っている時は、たぶん友達同士

心から笑えないよ

あなたはあの子が好きだから――

あの子もあなたのことが好きみたい

わたしみたいに〝おくて〟じゃないから

いつもあなたと手を繋ぐ

――わたしも、

なんて、欲張りだよね

あなたと話せるだけで幸せだった

幸せだった、けど

その先を望んでしまった

その時から

形のない想いが押し寄せて――

――わたし、もうどうしていいか分からないよ

――ねえ、あなたはあの子のことが本当に好きなの？

　　だめだ、わたし、疑ってばかり　嫉妬ばかり

　　あなたと手を繋ぐあの子が羨ましい

このまま世界は真っ直ぐに未来に向かっていく

この先の未来

わたしはあなたの隣にいない

いるのはたぶんあの子

わたしは脇役なのよ

でも恋のキューピットにはなれない

作り笑いで誤魔化して

応援しているふりをして

心の中で泣いて――

〝結婚〟という人生の通過点を

あなたと二人で渡りたかった

大学受験の進路は変更した

あなたと同じ大学だと

わたしは苦しくなってしまうから

あなたとあの子の姿が

まぶしく見えてしまうから

でも

あなたと過ごした日々は

大切な　大切な

たからもの

あなたに出会って四度目の春が訪れた

暖かな陽だまりを抜けると

わたしはひとり、桜並木を歩いて帰った――

☆彡