第9話
その内男子は150人……つまり10人に1人の割合である。
具体的な内訳は、特別進学(特進)科に男子30人と女子120人で、普通科が残りの男子20人と女子330人となっていた。
うん、なんと言うか、すげー分かりやすいな。
ちなみに俺は高校受験をしてなかったりする。
何故なら、男子は誰がどこに学校に進学するかは政府が決めるからだ。
何かしらの基準があって色々振り分けられるのだろうけど、青西山高は県内国公立だと1番進学するのが難しい学校で、男子の割合も一番高いらしい。
っとは言え、男子9割女子1割って言う私学が実は県内1つあるので、断トツ1位がそこではあるのだけど。
隣県含めてもそこが断トツ1位で、他県の県内男子割合1位の学校は大体青西山高と似たり寄ったりって感じだ。
まあ、その私学は基本的に小学生の頃からずっと持ち上がりだそうで、本当に特別みたいではある。
なにせ、女性どころか男性も選ばれた人しか入れないそうだからなー。
うん、何が悲しくて男が多いむさい所に行かねばならんのかと俺は思うので、この学校で良いのだけども。
「とは言え、男子を入学式前に1部屋に集めてなんなんだろう」
ついそんな言葉が零れる。
うん、右も左も前も後ろも不安そうな顔してるこの世界では珍しいはずの中肉中背の男ばかり。
いや、痩せ気味の奴も太り気味の奴も混ざってはいるが、不健康すぎるって程まではない奴らだった。
たぶんこの辺りは県内で1番の進学校だからなのだろう。
またもこの世界の闇を見た気がするけども……その辺りは今考えても仕方ないか。
それに、別の疑問だってある。
何故なら、俺は未だに自分が特進科なのか普通科なのか知らないのだ。
周りの様子を見るに、たぶん皆同じなんだろうな。
と、そんな事を思っていると、1人の気の強そうな40代くらいの女性教諭が入室してくる。
「さて、今年度は逃げ出す奴はおらず、50人ちゃんと揃ったようだな。勘違いした家族が居なくてホッとしている」
思った以上に高圧的な口調で話だし、ぶっちゃけなんだこいつ? って感じた。
が、そんな俺の気持ちなんか当然相手からすればどうでも良い訳で、部屋を改めて見渡したその女教諭は、愉快そうに口を開いた。
「おお、良いねー。勘違いして睨んでくる奴もいれば、ただただ不安そうに情けない姿を恥ずかしげもなく晒す奴もいる。毎年の事だが、その顔がいつまで続けられるのか私は楽しみだよ」
凄まじく上から目線のセリフだが、それどころの状況ではなくなってしまう。
さっきからは冷や汗が止まらず、目の前の女教諭が怖くて仕方がない。
なんだこれ? 心臓もバクバクするし、意味がわからないんだが。
と、やたら鋭い目つきをしたヤンキーみたいな長身の男が立ち上がって叫び出す。
「ふざけんな! 女が男様に向かって何偉そう口聞いてやがる!」
「おっ、今年は本当にイキが良い奴がいるじゃないか。お前面白いな」
「は? なんだよこっちに近づいてきて。ぶっ飛ばされぐぶぇ」
あ、殴られて崩れ落ちた。
何やってんだあのバカ。前世の頃と身体能力が変わらない男側が、ゴリラ以上の能力を発揮できるこの世界の女性と普通に張り合えるとでも思ったのか?
「まっ、息子が生まれたら一族総出で可愛がってしまうものだからな。とは言え、ここに来させられたって事は、大したことない一族ってこった。上位層の人間たちからすれば、お前もまたただの種馬なんだから家畜は家畜らしく女様の言う事を聞け」
……は? ちょっと待て? 今なんだって?
すげー混乱しているんだが。
「ああ、一応お前らにも言っておくが、教師や成績上位の女子生徒にたてついた瞬間から家畜行きだからな。それがこの世界のルールだ」
あっ、崩れ落ちたヤンキーの頭をナチュラルに足蹴にしたぞこの人。
と言うか、あれ? マジでそう言う世界?
ちょっ、本当に今までそんな情報見た事も聞いた事もないぞ。
今世の俺が見聞きした事全部同時に見聞きしているのにだ。
激しく混乱し、しばらくヤンキーを足蹴にし続ける女教諭を見続けていたのだが、パンっと入口の方で手を叩く音が聞こえる。
びっくりしてそちらを向けば、今度はお淑やかそうな20代くらいの女教諭が立っていた。
「はい、山崎先生ありがとうございました。他の皆さんは全員クリアですね。優秀な方が多くて私嬉しいです」
ニコニコと笑顔で言っているのに、さっき以上に冷や汗が止まらない。
「ここからの説明はC級の一般教師でる山崎先生では荷が重いので、A級の選ばれた特別な私が皆さんに説明させていただきます」
あ、俺こいつ嫌いだ。
見た目はお淑やかでちっこくて可愛らしくて、今世で見て来た中で一番タイプなんだけど。
それを遥かに上回る邪悪さと不快感の方がヤバすぎる。
なんて俺が思ったところで、この女教諭の喋りは止められる訳もなかった。
俺が知りたい事もペラペラ喋りだしたしな。
「さて、本来男はただの家畜であり女の所有するステータスの一つであるべきなんですが、頂点のお一人がやれ義務教育だのなんだの謎理論を展開されまして。細かい事は省きますが、長老様の複数名も賛同されてしまったため、屈辱にもあなた方家畜認定されていない男性は保護され上級の女性と同等の権利すら与えられています」
そこで、ぴっと山崎と呼ばれた女教諭を指さした。
「そこの山崎先生と対等と言う訳ですね。なので、喧嘩腰にならなければ家畜になった彼も、不本意ですが人間扱いせねばならなかったところだったんです。まあ、折角のその権利を彼自身がふいにしてしまいましたけど」
そう言った後、ふふふふと実に楽しそうに笑い始める。
いや、何が面白いんだよ。
内心呆れながらも、何故俺がネットで法律関係やらを始め色々と調べる事ができなかったのかある程度の理解を得る事が出来た。
詳しい事はまだ全く分からないが、少なくとも元の世界と似ているとか、そんな事は全くなかった訳だ。
その頂点のお一人が無理矢理前世の価値観をこの世界に持ち込んだって訳だな。
それが良い悪いは別として、俺個人としては超絶助かったぜ。
会う事があれば心の底から感謝しよう、とりあえず今は心の中で感謝だな。
ありがとうございます!
「まあ、結論から申し上げますと、あなた方は在学中に良きグループの女性達に選ばれてください。じゃなければ、家畜行きです」
何でもない事の様にとんでもない事を言いだしてきた。
いや、これ別に家畜になれって言ってる訳じゃなさそうだな。
たぶんだが、別に誰かに選ばれても選ばれなくても、そもそもどうなろうがどうでもいい。けど、それはそれとして、俺達が困ったり不安そうにしているのを見て楽しんでいるってところか。
うん、なんだこいつマジでムカつくやつだな。
何が家畜行きになるトリガーか分からないから、言い返せないからなおさら腹立つわ。
「あー、気持ちいい。そう、その反応ですよ。下らない法律が出来たせいで高校に入るまでなんにもできませんが、だからこそ解禁したての小僧共を絶望に陥れる。うふふ、甘美すぎますわぁ」
うげぇ、そのにたぁって元の容姿の良さを台無しにする笑顔は止めろよまじで。
くそー、幼稚園の頃同級生の女の子の暴走とか、ちょいちょい道端とかで痴漢行為とか攫われかけたりとかしたけど、あれってかなりマシだったんだな。
いや、まて、つまり今後俺らは町に出るのは以前より遥かに危険になる――のか?
やばい、法律関係ほぼほぼ分かってないから、なんの判断もできねぇ。
すすり泣く声に気付いて、はっと周りを見渡したら7割くらいの男子泣いてんじゃねーか。
色々予想立ててたが……これは完全に悪い意味で予想外だったぜ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます