第10話
「はーい、田中先生長々とありがとうございました。そこまで話すのを私は許した覚えはないんですが……まあ、皆さんに危機感を持ってもらえたのでよしとします」
意地悪そうな笑みを浮かべていた似非お淑やか教諭――田中って言うのか、覚えたぞお前ぜってー近づかねーからな。
っと、そんな場合じゃなくて、田中の後ろから定年間近っぽい女教諭が登場した。
ぶっちゃけ今の時点でお腹いっぱいなんだが、この婆さんは何を言い出すのやら。
「ぐっ、校長……」
「ここは貴方が普段働いている私立とは違い、法律通り300年以上前に人のランク分けは廃止されています。この学校に出向なさっている以上、最低限のルールを守って下さい」
「この小娘がぁ」
「はいはい、老害はもう黙っていて下さいね。さあ、今回の事は不問にして差し上げますから、退室してくださいね」
田中が校長先生をぎろりと睨むものの、何も言わずに教室から出ていく。
校長先生はその姿を見送った後、深いため息を吐き出した後いつの間にか呻いているヤンキーを片手で持ち上げている山崎へと視線を向ける。
「すみません山崎先生。損な役回りをさせて」
「いえ、校長のお役に立てるのなら何も問題ありません。それでは、私はこれの手続きをしてまいりますので後はよろしくお願いします」
「はい。その子は残念でしたが……なるべく穏便に済むように配慮をお願いしますね」
「……校長がそう望まれるのであれば微力を尽くさせていただきます」
短いやり取りだったが、校長先生と山崎……先生とは田中の時と違って確かな関係が伺えた。
これは、本当に教師一人一人で考え方とか色々と違ってそうだな。
その辺りをちゃんと理解しないと、後々厄介な事になるかもしれない。
が、少なくともこの校長先生は今の所一番マシに思える。
無論、これから何を言い出すかで俺の印象も変わるけど、あくまで今の所だ。
「皆さんすみません、怖がらせてしまいましたね。ただ、非常に残念ですが男性の皆さんに色々教えて差し上げる事が私達教師にも許可が下りておりません。そして、世の中には田中先生の様な人も大勢いらっしゃいます」
申し訳なさそうに俺達に告げてくる校長先生は、それだけで非常に優しそうな印象を受けた。
口調も非常に柔らかく、こちらを配慮する雰囲気は演技でなければかなり信頼できる教師――なのかもしれない。
「幸いこの学校では田中先生にさえ気を付けて頂ければ、間違った言動をしなければ理不尽に家畜堕ちさせられる事はありません。ただし、間違った言動を行ってしまえば、やりたくなくとも私達は貴方方を家畜堕ちさせねばならないのです」
そこで、校長先生は一息呼吸を入れて俺達を改めて見渡した。
「私達教師は貴方方の味方になる事を禁止されています。私立と違って足を引っ張るような真似はしませんが、助ける事もできないのです。だからこそ、この学園で貴方方を守って下さる女子生徒を見つけて下さい」
ふと校長先生が廊下の窓の外――丁度待機しているだろう男性保護官達が居るだろう方向へ視線を向ける。
「男性保護官も貴方方の身の危険を守る使命を与えられていますが、家畜堕ちからは守ってはならないと決められているのです。ただし、貴方方を大手を振って守る事を許可されている人達が家族以外にも居ます」
ここで改めて俺達の方向へと視線を向け、真剣な様子で校長先生が俺達にアドバイスをし始めた。
「この学園に通う女子生徒達です。彼女達は新学期が始まる明日以降貴方方に対してかなり出来る事が増えます。教師が話せない真実もごく一部ですが話す事が出来ますし、もし婚約まで辿り着けば更に色んな事ができるようになります」
と、ここでより一層深刻な様子に校長先生が変わる。
「ですが、貴方方をハメる事も出来るようになってしまいます。それこそ己だけの家畜にする事もやり方によってはできてしまうのです。なので、貴方方は女子生徒達を見極めなければなりません。そして、それは教師は誰も手助けできないのです。誰が良いのか悪いのか、あくまでも自分自身で考えて決めるのです」
そこまで力強く一気に語った校長先生は、一呼吸おいて再び柔らかな表情を浮かべた。
「ただ、非常に幸いな事にこの学校に入学できた彼女達はとても優秀です。そして、私立に通う女性達と違って古い価値観にとらわれている者も少ないです。居ない訳ではないので注意は必要ですが、危機感がないのはダメですが、過剰になる必要はないのです」
うん、この先生はきっと信用していいのだろうな。
俺はそう確信を持ちつつ、校長先生の締めの言葉を聞いた。
「少しでも貴方方が良い未来を掴めるよう、私も微力を尽くします。皆さん、改めてですが、入学おめでとう。少しでも良い出会いがある事を願っています」
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