第2話〜これが私の生活事情2〜

〜第二話〜これが私の生活事情2〜



「な、なんですの!?どうしてここにいるんですの!? 」

逃げようとするが、後ろにある壁にぶつかり、行き止まりだと気づく。

「私がここに来た理由はもちろん、我が愛しい君に会うためだよ。」

「は、はぁ!?何を言ってるんですの!?それより、ここはどこで、なぜ私をこんなところに閉じ込めたんですの!!?」

「閉じ込めたという表現は適切ではないな。言っただろう、私は君に会いに来たと。この場所は私の秘密の部屋であり、君に話たかったから呼んだんだ、リシア嬢、私と一緒になってくれないか?」「一緒になってですって!?ふざけないでください!こんなことをして、無事だと思ってるんじゃないよな!?」

声が徐々に大きくなり、男口調が出てくる。

リシアの変わった口調にも関わらず、相変わらず落ち着いて言う。

「無事かどうかは、私が判断することだ。心配する必要はない。君はただ私を受け入れればいいのだから。」

「はぁ、クソ、頭おかしいんじゃねぇの!?こんなことして、ラング王国が黙ってるわけないだろ!?」

「ラング王国?ああ、そこがどうしたのかね?確かに大きな力を持っているが、私の前では取るに足らないものだよ。」

「取るに足らないって…どんな自信だよ、一体…

…」

王子がリシアに近づく。

リシアは恐怖を感じながら後ずさる。

「こ、来ないでください!この変態野郎!!! 」しかし、すぐに壁にぶつかり、これ以上後退できない。

王子はそんなリシアを見て微笑む。

「ハハハ、可愛らしいね。その表情、まるで小動物のようだ。さあ、もう諦めて私の腕の中に抱かれなさい。」

王子が手を伸ばしてリシアの顎を掴む。

「やめろ!!」

王子の手を払いのけながら、男口調がさらに露骨に出る。

「俺の体に勝手に触るな!!お前なんかに抱かれてやるもんか!!」

「その荒々しい口調…中々そそられるね。今までの弱々しいお嬢様言葉よりは、ずっといいじゃないか。」

「何言ってんだよ、この変態野郎!!はぁ、もういいや。どうせあんたみたいな奴に俺がどうにかできると思ってんの?俺が伯爵家の人間だってこと忘れたのか?お前如きが手を出したらどうなるか、考えればわかるだろ!」

「ふふ……伯爵家か…それが今重要なのかい?ここには私と君しかいないんだよ。力なんて何の意味もない。ここで私の目に留まれば、君はそれ以上でもそれ以下でもないんだ。」

王子の言葉に呆れたように嘲笑う。

「ふん、笑わせるな。結局力頼みじゃないか。ラング王国で一番権力のある家がうちだってことは、お前もよく知ってるはずだろ?お前もバカだな。俺を無理やり手に入れても、得るものは何もないぞ。むしろ逆効果になるかもしれないってわかんないのか?」

「得るものはないだって?本当にそう思っているのかい? 」

リシアの顎を片手で掴んで上げながら

「私は君という美しい花を手に入れられるんだ。それ以上の喜びがあるだろうか?そして、逆効果になるという心配は必要ないよ。なぜなら、すでにこの空間の中では私がルールだからね。」

「何言ってんだよ、バカ野郎。頭おかしいんじゃねぇの!?おい、お前王位継承者だろ?王子様が、こんなことしてる場合か?他の兄弟がこれを知ったら、黙ってないぞ!」

「王位か…それがどうした?私にはそんなものより君の方がずっと大切なんだ。他の兄弟が知ったところで問題ないさ。すでに私の味方も多いんだ。むしろ君こそ、自分の立場をよく考えた方がいいんじゃないか?私が君の夫になれば、君の望むものは何でも手に入るだろうに。」

「望むものを手に入れるだって?ふん、俺はお前と結婚なんてしないぞ。それに、さっきから気になってたんだけど、一体何で俺のことをそんなに好きになったんだよ?見た目だけなら他の貴族の子女たちも相当なもんだったのによ。」

「それは…君も知ってのとおり、私が幼い頃から社交界のパーティーに参加していたから、同年代の子女たちを全て一度は見てきたんだ。もちろん、親の意向で婚約者もいたこともある。破談になったけどね?でも……いつも同じ顔ばかり見ていると飽きてしまってね。そんな中、君が私の前に現れたんだ。初めて見る顔、新鮮な雰囲気…そして何より、君は他の子たちとは違って、いつも一人で静かに隅っこにいたじゃないか。それが私の興味を引いたんだよ。」

「それで?興味が湧いたから近づいてみたら、ただの臆病なおとなしい子だと思って求婚したのか?随分と短絡的な考えだな?まあ、見る目がないってわけだ。」

「見る目がないだって…ハハ、これは面白いね。まさか君、自分の魅力に気づいていないのかい?」

「魅力だと…俺にそんなものがあるわけないだろ。ただの冴えない伯爵家の長女だよ。まあ、伯爵家ってのは少し…目立つけどな。」

「ふむ…謙遜する必要はないよ。君はラング王国最高の貴族家の娘にして、その類稀な美貌と賢明さで知られた人物じゃないか。これまで君を放っておいた他の貴族たちの目を疑うべきだな。そして、君が冴えない伯爵家の長女だと言うけど…それは少し違うよ。君の存在自体が我が王国にとってどれほど重要な意味を持つか、君自身がよくわかっているはずだ。」

「……何が言いたいんだ?」

「君と結婚すれば、王室の権威をより確固たるものにできるということさ。伯爵家との結びつきは、我が王家の基盤をより強固なものにしてくれるだろう。それに加えて、君は次期国王の妃として完璧な資質を備えている。頭脳、教養、容姿…すべてが申し分ない。私にはもったいないくらいだよ。」

「はっ!つまり俺を政治的な理由で欲しがってるってことか?お前個人の感情じゃなくて?だったら…嫌だな。そんなの面白くない。」

「個人的な感情か…それもないわけではないよ。しかし、私が王位を継ぐ者として最善の選択をしなければならないという点は認めざるを得ない。だから君を求めるのは、単なる私のエゴイスティックな欲求ではなく、王国全体のための決断なんだ。それがわかってほしい。」

「エゴイスティックな欲求ねぇ…それを人々は利己的な欲求って言うんだよ。はぁ、お前王子なのになんでこんなに頭が固いんだ?もうちょっと柔軟に考えられないのか?」

「柔軟さは時に決定力を失わせる諧謔だよ。時には断固とした決定が必要な時もある。しかし…君の言う通り、もう少し頭を柔らかくしてみようか? 」

王子は、リシアにさらに近づきながら

「私と結婚してくれないか?リシア嬢」

「お、おい…!急に何言って…!」

「君の言う通り、私がもっと柔軟な態度を見せることにしたんだ。私と一緒に王国を導いていく準備はできたかい?君なしでは何も始められないような気がするんだ……」

「あ、ああ……えっと……そうだな、そこまで言うなら…いや、ちょっと待って!今、俺、何か言いかけて……じゃなくて、話をそらすなよ!」

「ははは、そらすだなんて。私はただ君の答えを待っているだけだよ。この瞬間、この場所で君と私の未来が決まるんだ。断るという選択肢はないことを覚えておいてくれ。」

「いや、あるだろ!断るってのが正解なんだよ!」

「……本当に断るつもりなのか?」

「あ、当たり前だろ?なんで受け入れるわけ……あ、いや、そうじゃなくて……ああもう、ダメだ。どうしてもっていうなら……その時は…その時考えるよ……」

「その時が来れば、必ず私を受け入れてくれるという意味かな?」

「そ、それは……つまり……あー……くそ、頭痛い。おい、お前いつまで俺にくっついてるつもりだよ?もう消えろよ!」

「はは、わかったよ。じゃあまた今度会おう。良い夜を。あ、そうだ。これ……」

ポケットから小さな箱を取り出し、リシアに渡す。

「今度のデートで君にプレゼントしようと思っていたものだけど、今日の君の可愛らしい姿を見たら我慢できなくなってね。受け取ってくれ。」

「お、おい……これ…なんだよ……?」

「気に入ってくれたらいいんだが。開けてみてくれるかい?」

箱を開けてみると、中にはダイヤモンドが埋め込まれた指輪が入っている。

「君に似た宝石だよ。美しくて清らかな君のようにね。」

驚いた表情で王子を見つめる。指輪を手に取って詳しく見る。素朴だが品のある装飾が施された、女性らしい指輪だった。

「まだ正式なプロポーズをするには早いからね。先に送らせてもらったんだ。必ず返事を聞くまでは外さないでくれると嬉しい」

「お、おい…これは……」

「返事はいつでも構わないよ。考えてみてくれ。じゃあ……リシア嬢、屋敷に送らせてもらうよ。ここに呼び出してすまなかったね?」

王子はリシアを屋敷の前まで送り届ける。彼が去った後、リシアは一人残されて指輪を見下ろす。

「なんだよ、一体俺にどうしてこんなにこだわるんだ?それに、この指輪は……はぁ、どうすりゃいいんだ……まあ……とりあえず家に戻ったんだし。口調を戻すか……ん、さてと……ただいまですわ」


そう言って、リシアは自分の屋敷の中に入って行ったのであった。 




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