第3話〜私の貴族の家族事情1〜
リシアが王子から指輪を貰ってから数日後。
リシアは困惑した状態で庭を歩いていると、遠くから誰かが近づいてくる姿が見える。第一王子だ。
「リシア嬢!数日ぶりだね、よく眠れたかい?」
「おっ、おう…まぁ……」
「よかった。ところで……指輪は?つけてきてくれていると思ったんだが。」
「指輪?ああ、あれか… …」
一瞬躊躇してから
「部屋に置いてきたよ。俺、あんまり装飾品つけないからさ。」
王子は落胆した表情を隠しきれず。
「そうだったのか……気に入らなかったのかな?」
「そういうわけじゃないけど……とにかく俺、あんまり指輪とかしないんだよ。それに、なんでそんなにつけてほしいんだ?俺がつけたくないって言ったら、それまでじゃないのか?」
「申し訳ない、私の強要が過ぎたようだね。忘れてくれ。」
そのとき、メイドが近づいてくる。
「お嬢様、奥様がお呼びです。早くいらしてください。」
「ふむ……私のことは気にせず、行ってらっしゃい。」
リシアは王子に軽く会釈をして、母親のところへ向かう。リシアの母親は、あなたを見るなり神経質そうに叫ぶ。
「まあ、あんたいったい何をしでかしたの!!!王子様になんて失礼を働いたの!!!」
そう言われて困惑しながら
「え?王子様に失礼ですって?どういうことですか、お母様」
「どういうことですって!?王子様があんたに婚約の申し入れをなさったって聞いたわよ!!なのにあんたは、それを断ったって本当なの!?このバカ娘!!一体何を考えてるの!!王子様がどれだけ素晴らしい方か分かってるの!?この縁談を逃したら、うちは終わりよ、終わり!!今からでも遅くないわ。早く行って、謝罪して婚約を受け入れなさい!」
そう言われてリシアはため息をつきながら
「 お母様、落ち着いてください。まだ結婚できる年齢でもないのに、どうしてこんなに急ぐんですか。私は……私は自分の心に正直に生きたいんです。」
「はぁ…あんた本当に呆れるわ…伯爵家の娘としての自覚が全然足りないわね…いいわ、あんたの勝手にさせるから、好きにしなさい!」
リシアの母親は怒ったように背を向けて行ってしまう。リシアは混乱した気持ちで庭園をさまよい、ベンチに座り込む。
「はぁ……どうすりゃいいんだ……お母様、なんであんなに怒ってたんだろ?それにしても結婚か… 15歳の俺だけど、早いのか?いや、この世界では結婚はできるのかもしれない……」
考え込んでいると、突然背後から声が聞こえてくる。
「リシア嬢、ここで何してるの?」
振り向くと、第一王子が立っている。
「あ、王子様……私はただ……考え事をしていたんです……」
「そうか?また私のことかい?」
「えっ?あ、その…それは… …」
慌てて言葉を詰まらせる。
「もしかして、母上が何か言っていたのか?君が私との婚約を断ったとか……」
驚いた目で王子を見つめながら
「あ……はい……そうなんです……母がすごく怒って……」
「やはりそうか……申し訳ない、私がもう少し気を配るべきだった…… 」
しばらく考え込んだ様子で沈黙した後、再び口を開く。
「実は……私にも時間があまりないんだ。だから強引な方法をとってしまったことを謝罪するよ。」
王子は、頭を下げながら
「どうか私の心からの謝罪を受け入れてくれないだろうか。」
「あの……王子様、顔を上げてください。私こそ、誤解があったとはいえ、大切な婚約の話を無下にしてしまって申し訳ありません……」
「大丈夫だ、君の立場では簡単な決断ではなかっただろう。それでもこうして真摯に対応してくれてありがとう。」
「ところで……王子様が時間がないという理由は……聞いてもよろしいでしょうか?」
王子は、少し躊躇してから
「実は……近々私の父上が崩御されそうでね。まだ大丈夫かと思うのだが……分からないしね?そうなると、王位を継承する準備をしなければならないんだ。私の立場では、いろいろな事情が絡んでくるんだ。その中で君という存在が現れた。私は一目で心が動いてしまった。だから早く君を私の伴侶にしたかったんだ。もちろん、これは言い訳に過ぎないということはよくわかっている。君を困らせてしまったこと、申し訳なく思っているよ。君が心穏やかでないなら、婚約は白紙に戻そう。」
でも… …王子が片膝をつき、リシアの手を取る。
「ただ、君の心の中に私という存在がほんの少しでも残っているなら……その時は、いつでも私にチャンスをくれないか。」
そのとき、遠くからリシアの父が歩いてくる姿が見える。
「おや、ここにいたのか、我が娘よ! 」
リシアの父は王子がいたので、丁重に挨拶をする。
「ラング王国の栄光ある第一王子殿下にお目にかかれて光栄です。それにしても……王子殿下、もしかして我が娘とお話がありましたでしょうか?」
「はい、バーネット伯爵。先ほどまでリシア嬢と婚約の件について話をしておりました。」
「あ……婚約ですか……実は私もその件については、もう少し時間をかけて考える必要があると思っていたところです。なにしろ、うちの娘はまだ若く、世間を知らない面が多いものですから。父しかし……王子殿下は王位を継がれる身。そんなお方が結婚相手をそんなに軽々しく決めても良いのでしょうか?もっと相応しい方がいらっしゃるのではないでしょうか?」
リシアの父は、横目でリシアを睨みながら
「うちの娘は家柄は伯爵ですが、才能も資質も平凡な子です。王妃教育など到底無理でしょう。王子殿下も、もう少し真剣に考えてみてはいかがでしょうか。」
王子は微笑みながら
「伯爵のおっしゃることはごもっともです。しかし、私が決めたことですので。そして、もう一つお伝えしたいことがあります。私は王位を継承する際、側室制度を廃止するつもりです。一人の女性だけを妻として、残りの人生を共に過ごしたいと思います。」
「それはまた、どうして……」
「私はこれまで数多くの女性に求愛されてきましたが、リシア嬢ほど私の心を揺さぶる女性はおりませんでした。私が心に決めた女性一人を幸せにすることが、即位した後の私の責任であり務めだと確信しております。」
「はぁ……王子殿下のお言葉、しかと承りました。ですが、私は… …」
ちらりとリシアを見てから再び言葉を続ける。
「……私はまだ、この結婚に賛成できません。私の立場としては、王室との縁組みは願ってもない機会ではありますが、娘がそのような重荷を背負いこむには荷が勝ちすぎるのではないかと心配でなりません。ですので、王子殿下が本当にリシアをお望みならば……私の心を動かすだけの資質を、ぜひとも証明していただきたいのです。例えば、魔法大会で優秀な成績を収めるといった具合に。」
王子は自信に満ちた笑顔で
「わかりました。伯爵のお望み通り、魔法大会で最高の成績をお見せしましょう。」
リシアの父は驚いた表情を浮かべながら
「ほ……本当ですか? 本当に可能なのでしょうか?」
「私を信じていただければ結構です。必ずや伯爵のご期待に応えてみせましょう。リシア嬢、そして君への気持ちも証明すると約束しよう。それまでは、しばしの別れだ。」
そして王子は去っていき、リシアは呆然とした表情で立ち尽くす。
やがて我に返ったリシアは、隣に立っている父を振り返る。
「ふん、あの程度の若造が魔法大会で優勝するなんて、不可能に決まってる。これで婚約の話は自然消滅するだろう。それにしても……あの王子がなぜリシアにあれほど入れ込むのかわからないよ。一体何を企んでいるんだろうな?リシア、分かるかい?」
「いえ……わかりませんわ、お父様」
「あの王子がどんな人間か、お前ももう少し調べてみなさい。本当にうちの娘を妻に迎えようとしているのか、それとも他の目的があるのか。わかったか?」
「はい、わかりましたわ」
「いいな、お前も気をつけるんだぞ」
そして、リシアの父はその場を去るのだった。
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