私と彼女の話
N_
私と彼女の話
貴方だけを見ていました
貴方だけを想っていました
貴方だけが良かった
貴方が良かった
貴方を愛してた
当然、今も変わらず愛してます
目に映る貴方はキラキラしてて、どうやら私には眩しすぎたようです。
直視出来なかった、ちゃんと目も見れなかった。
ちゃんと話も出来なかった。貴方の首より下を見るので精一杯。
貴方の首筋を見つめるだけで私の体は火照ります。
顔が赤くなっていくのが自分でも分かるくらい。
そんな時に話なんてしたら、きっと赤くなった頬に気付かれるでしょう。
私が腕相撲をしてもすぐに倒せそうな、その細い腕。モデルに負けず劣らずサラサラな黒い髪の毛。
全部が愛おしかった。
少し私より身長が高くて
「付き合ったら身長差って言われちゃうな〜」
なんて思ったりもしてました。
1人で舞い上がってる時間も、私は大好きでした。
ある時貴方は私に声を掛けてくれましたね
「暑くない?」
って。
あの時、私の心は幸福感でいっぱいでした。
高嶺の花で今まで私が一方的に見ていただけの存在だった人が、私なんかに話しかけてくれたのですから。
あの時私はしどろもどろになっちゃって
「え、あ、うん、そだね」
なんてつまんない返事をしてしまいました。
やってしまった。 と内心自分を責めていました。
つまらない奴だと思われただろうなと、勝手に落胆していました。
けど、貴方は違いましたね。しどろもどろになってる私を見て、笑いながら
「可愛いね」
って言ってくれました。
そもそも異性に可愛いなんて言われたこともないし、全てを許してくれそうな貴方の笑顔に私は
吸い込まれてしまいました。
あの時から私は貴方だけを見るようになりました
見れば見るほど貴方は素敵な人でした。
今も変わらず素敵な人です。
誰にでも分け隔てなく接し、誰にでも優しさを与える様や、敬服してしまいます。
けどやっぱり、私だけがいいと、どうしても思ってしまいます。
ある時私は貴方ともっと近づきたいと思って、勇気を出して話しかけました。
「さ、最近調子どう?」
またやってしまった。
大して接点もないのに「調子どう?」 なんて悪手でしかない。
それなのに貴方は微笑みながら
「ぼちぼちかな。あ。けど聞いて欲しいんだけどさ、この前仕事で失敗しちゃってさ───」
正直に言うと、この後の話はあまり聞いていませんでした。
貴方が私と会話しようとしてくれたことに浮ついていたから。しかも仕事のできる貴方が私に相談してくるなんて、私にとっては自信に繋がる大きな出来事でした。
話している途中で天井に向けられるあなたの目。
ほんの少し出ている喉仏をさする仕草。
きちっと足を閉じて座ってる貴方の姿。
全てが愛おしい。
こんなにも可愛いと思える人は、今まで出会ったことがありませんでした。
どうしても私のものにしたかった。
けど、何にも接点のない奴からの一方的な愛。
そんなの受け取ってくれるはずありません。
だから私は貴方とお友達になろうと思いました。
これでも私にとっては勇気が必要でした。
勇気を出して連絡先を聞きました。
勇気を出して話しかけるようになりました。
勇気を出して食事に誘うようになりました。
勇気を出してデート(買い物程度)に誘いました。
貴方との時間はすぐに溶けていってしまいます。
昔の学者が言ったように、素敵な人の隣にいると、時間なんて塵みたいなものです。
貴方と過ごした時間で私はもっと貴方を好きになりました。
休日はゲームをしながら猫と戯れてるなんて普段の様子からは分かりませんし
実は高い所が苦手で高い所で目を瞑る姿はとても可愛かったです
私服やアクセサリーの趣味なんて職場じゃ分かるはずもないので、初めてプライベートで会った時は見惚れてしまいました。
時間を重ねて行くうちに、色んな変化が自分の中で起きていることに気が付きました
貴方の目を見れるようになりました
貴方と自然に会話出来るようになりました
貴方に自然に笑いかけるようになりました
貴方の声や仕草を脳に焼きつかせました
貴方への想いは募る一方でした
変わらないことと言えば、未だに貴方を見ると顔が熱くなってしまうこと。
これは今になっても変わりません。
流石にここまで関係を進めたら、私でも分かります。これは脈はあるのではないかと。
今まで異性との交流は少なかったですが、ここまで私に付き合ってくれるのは少なからず好意があるのではないかと確信していました。
ある日一緒に仕事帰りに居酒屋に行きましたね。
一杯やって、いつものように上司の愚痴や最近あったことをいっぱいお話しました。
この時の多幸感や何とも形容しがたいものでした。
店を出ると雨がザーッと降ってきましたよね。
その日の天気予報は1日晴れ。
もちろん傘は持ってません。
どうやらにわか雨のようでした。
2人とも終電がもうすぐだったので
仕方無く駅まで走りました。
恥ずかしいことですが、私は貴方よりも足が遅かったので貴方が私の手を引いて駅まで走りました。
この時間がいつまでも続けばいいのに
と思ってしまいました。
貴方の手は思ったよりも柔らかくて、けれども私の手を力強く握ってくれていました。
雨なんてどうでも良かった。
終電なんてどうでも良かった。
貴方の手をずっと握っていたい
貴方とずっと走り続けたい
貴方と愛し合いたい
そんな気持ちに相対した私の頭の中はぐちゃぐちゃでした。
何とか終電の10分前に駅に着きました
「ドラマみたいで面白かったね」
まだ私の手を握っている貴方が笑いながらそう言います。
髪は雨で濡れ、スーツのシャツも濡れてて少し艶っぽい雰囲気を醸し出す貴方のその姿は、私の理性を壊すには十分でした。
「どうしたの?」
貴方は私の気持ちを察してくれてるように言ってくれた。
繋がれてる手を見ながら私は
「私は、恋人として手を繋ぎたい」
とうとう言ってしまった。後悔はなかった。
沈黙が私を殺そうとしてきましたが、決して屈さず貴方の応えを待ちました。
「本気で言ってる?」
貴方は困ったような顔で私に言いました。
なんでそんなこと言うんだ?
なんで私の気持ちが分からないんだ?
私はこんなにも貴方を愛しているのに
本気の証拠と言わんばかりに、私の唇を貴方の口に当て、舌をそっと貴方の中に入れようとしました。
貴方の頭を押さえつけて、耳あたりを右手の親指で触りましたよね。
高揚感の中でも鮮明に覚えてます。
どうしても貴方と繋がりたかった。
どうしても私を知って欲しかった。
どうしても私だけを見て欲しかった。
どうしても、どうしても、どうしても、どうしても
けれども貴方は私を押し飛ばして、怒ったように言いましたね。
「ごめん、好きな人がいるんだ。君とは友達だと思っていたし、恋人になるとかは。それに....ごめん」
そう言うと貴方は近くにいたタクシーに乗って、私から逃げるように行ってしまいました。
それからは地獄でした。
貴方に食事の誘いをしても断られる
貴方と一緒に帰ることを提案しても断られる
貴方は目を合わせてもくれない
こんなに私は貴方の目を見ようとしているのに
貴方に恋人ができたことは直ぐに知りました。
恋人といる貴方は楽しそうにしている一方で、どこか息苦しそうでした。
貴方の恋人は自己中心的なのでしょうか。
しょうもない。
貴方が忙しい時に限って、連絡をしてきて会おうとしてくる。貴方のことを愛していない証拠だ。
私の方が先に好きになったのに、私の方が貴方を愛せるのに、私の方が貴方のことを分かってるのに、私の方が私の方が私の方が私の方が!
きっと貴方は私を見ていないんじゃなくて、見れないんだと思いました。それは貴方の恋人のせいでしょう
可哀想な人
私が救わないと、貴方はずっと不幸になってしまう
だから私は貴方の恋人とお話しに行きました
本当に空っぽな人でしたね
私が貴方のことを想っていることなんて微塵も思わずに、私に付いてくるのですから
正直どうやって私の家に連れて行ったのかなんて覚えてません
ただ貴方を救いたい一心でお話しようとしていたので
そこからは簡単でした
とりあえず薬の入ったコーヒーを飲ませて
声が出ないように口にはガムテープをくっつけて
お風呂場に投げ込んで
しっかりとお話しました
何故貴方に困るようなことをするのか
何故貴方と付き合っているのか
何故私から貴方を奪ったのか
私がどれだけ貴方を愛しているのか
耳元で問いながら少しずつ指を折っていきました
当然の報いですよね、貴方を不幸に導こうとしたのですから
これで分かってくれれば解放しようと思っていたんです。けど、あいつの目ときたら!!
私を睨みつけて、私のことをまるで汚物を見るような目で見てきたんですよ!
ただ私は貴方を幸せにしたいだけなのに...
そこからはあいつの至る所を斬り始めました
指から肩から足の付け根から首元から足の指から
赤いものが風呂場に広がりました
後でシャワーで洗い流すからいいと思いました
何か言っていたようですが聞いてませんでした
私の方が貴方を愛していることを伝えてあげました
徐々にあいつの原型は無くなっていきました
その時私の心はスっとしました
やっとあいつから貴方を解放したんです!
...どうしたんですか?
なんで震えてるんですか?
怖いんですか?
私が?
なんで?
なんで?
貴方を愛してるだけなのに?
大丈夫ですよ、貴方を殺したりはしないから
愛する人を殺すはずがないでしょ?
これは、私と貴方の彼女との話
貴方には関係ないんですから
あいつは貴方には必要なかったんですよ!
これでやっと私だけを見てくれますね
やっと愛しあえますね
やっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっと!
貴方とふたりきり...
私、本当に貴方を愛してるんです
私が男だろうと女だろうときっと貴方を愛してた
貴方が私を受け入れられないのは、あの「
大丈夫、暫くしたら受け入れられますよ
だって貴方の手、こんなに暖かいんですから!
もう離さないで
もう離さない
私とずっと話していて
私をずっと見ていて
─あ い し て ま す。
私と彼女の話 N_ @n_to
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます