温かい欠片
1000フォローありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいです
あと今回は抑えれなかったとだけ言っておきます。
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『──ちゃん!───ちゃーん!』
少女が、雨上がりの地面を蹴って私の方に向かって走ってくる。
4.5歳ぐらいの女の子だろうか?可愛らしく手を振りながら私のところへ来る。
『ーーちゃん?なにしてるの?あそぼう?』
少女が私に話しかけてくる
一体何が起こっているのだろう。
『──うん、あそぼう!』
幼い声が発せられる。私は声に出したつもりは無いが、確かにこれは私の声なんだろう
すこし困惑する⋯が、すぐにわかった。これは夢なのだろう。あまりに非現実的すぎる⋯けど、心が温かい。ぽわぽわしててずっとここにいてもいいとすら⋯
『今日は、なにしてあそぶ?』
『そうだなぁ⋯あ、そうだ!』
『お母さんとね、クッキー作る練習したからどう?』
『おねえちゃん、私も食べる!』
『いいよー』
相変わらず勝手に口が動く不思議な感覚。
どうやら私?はクッキーが作れるらしい。1人増えているが、夢だしいきなり増えるだろう。
もう1人の子もそれに同意したようで、頑張って作っている、そんな光景を見てなんだか懐かしく感じてしまう。
そこで、私は夢から覚めた──久しぶりに見た夢はとても楽しそう私と誰かの姿だった。
「ん⋯」
おはよう世界。昨日は疲れちゃってすぐに家に帰って寝たんだっけ?することも無いし別にいいけどね
今私がいるのは、研究所の真上にある家。
住処に困っていた私は、とりあえずここに居座ることにした。
もし研究員が帰ってきてもむしろ好都合だからいいので、居座らない理由がない。
「今、何時だろう?」
なんでこの家には時計がないんだろうね⋯どうやって時間見てたんだろう?それはいいとして今日からやるべきことが出来た!それは⋯
「お金集め⋯!!」
魔物の素材を売ればお金になるということは、沢山狩りまくったらお金が沢山貰えるということになる。
使い道こそないけど、あって困るものじゃないしやるしかないよね
「そうとなれば⋯
変身して魔物の気配を探ってるんだけど⋯
気配をまるで感じないな⋯いつもなら少しだけいるのに⋯探索エリアを広げた方がいいのかな?
高確率で迷子になるからあんまりしたくないんだけどいないのも困るし⋯行くしかないか
「行くかぁ──ぐぅうぅ⋯」
⋯そういえば昨日、何も食べずに寝たような気がしなくもない⋯かも
「はぁ⋯せっかく変身したのに⋯お金もあるし、何か買いに行くしかないよね⋯で、お店はどこにあるんだろう?」
今までお店に行ったことないんだけどなぁ⋯
え?今までどうしてたのかって?⋯自給自足しようとしたら失敗したとだけ言っておくよ、ハハ⋯
とりあえず私は街中を歩くことにしたが、やけに視線を感じる。なんなんだろう?害がある訳ではないけど、こういう経験はないからちょっとむず痒い。
「⋯これ、ください」
なんか雰囲気が良さげなお店に入ってご飯を選んだんだけど⋯相変わらず視線が気になる。回りを少し見てみると大体の人が大人だった。
大学生らしき服装の人もいるけどまぁそう変わりないだろう
私が席に座ると、ひそひそと話が聞こえてくる。
『あれ、コスプレかな?』
『どこか、見たことあるな⋯』
『あれって、もしかして最近噂の⋯』
コスプレ?噂?なにが?⋯⋯あれ、私、もしかして⋯?
自分の格好をみてみる。
「⋯あ」
変身とくの忘れてた⋯なるほど、周囲の視線の理由はこれだったんだね。けど、今解除なんてしたら⋯うん、このまま何も聞かないふりをして待とう。
料理早く来ないかな⋯ずっと見られるのなんて慣れないしやりずらいんだけど⋯
『おまたせしました』
あ!きた!待ってたよ私の救世主⋯!!
早く食べきってこんな所からおさらばしよう。
私がもぐもぐと食べていると私の方に誰かが向かってくる。私に用があるのは明白
こういう時は大体がめんどくさい事だと相場が決まってるんだよね⋯
一応私は向かってきた人に目を向けた
目を向けると目を見開き息が荒い少女が目に入る。この子は、見たことがある。お弁当をくれた人だ。
「⋯⋯」
『こんな所で⋯なにしてるの?』
息を正しながら、正面の席へと座ってくる。
なんでこの人自然な流れで座ってくるんだろう⋯
「⋯食べてる」
『言ってくれたらつくるのに⋯⋯それより、昨日は葵さんとあった?』
「⋯葵さん?」
葵さんって誰のこと?昨日は白澤さんとしか会ってないような気がするから⋯
『あ⋯、ごめんわかんないよね。白澤葵って人なんだけど』
「⋯知ってる」
『そうだよね、あのさ⋯ちょっと聞きたいことあって』
「⋯?」
『──私の名前って、覚えてる?』
急に何を言い出すかと思えば名前⋯?名前⋯知らない。名乗られた覚えはないしそれに覚えてるって⋯?
「知らない」
『⋯そっか』
急に名前を聞いてきたかと思えば次は落ち込み始めたんだけど?えぇ、何この子わかんないよ⋯
撫でといた方がいい?いや、落ち着け私。
手を伸ばしてもこの距離じゃギリギリ届かない。
まぁとりあえず⋯
「⋯落ち着いて、話して」
『⋯⋯うん』
いきなり『私の名前って覚えてる?』なんて聞かれて、気にならないほどの心は持ち合わせてないんだよね。普通に気になるし⋯
できる限り優しく声をかけるのを心構えて言葉を発し、私は話の続きを待つ。
私が待ってると、決心がついたようで彼女は私に向けて話す ──
『⋯東雲美華に聞き覚えはある?』
私を観ている瞳はどこか悲しげだけど、どこか期待を宿している。よくわからないけど、ちゃんと付き合おう
東雲美華⋯有名人ってわけではないだろうしこの子の友達⋯?いや、私に聞く理由が無さすぎる⋯だめだ、わかんない
「知らない」
『っ⋯』
彼女の方へ視線を向けると俯いてしまっている。
なんか良くないことでも言っちゃったかな
『⋯やっぱり、そう、だよね』
「⋯」
やけに、落ち込んでる。
落ち込んでいるかと思えば、徐々に肩が震え出しているのがわかる。なにかを我慢する声が聞こえる
彼女をじっと見つめていると、彼女も気がついたようでーー
『ごめん、ごめん⋯』
「⋯⋯っ」
私はぼーっと見つめる。
今の彼女はあまりに、弱々しい。
いつも彼女は何かを背をっているかのように覚悟の決めた瞳をしていたのに今はそれが、光が、失われてしまっているかのよう。
周囲から、怪訝そうな視線が集まる。
⋯はぁ⋯こうなったら仕方がない⋯よね?
そうして私は彼女の隣へ移動する
『⋯?』
不思議そうな表情をしている彼女をよそに
私は彼女の頭に手を置く。
『っ!?な、なに⋯!?』
私は彼女の頭を撫で始める。
ちょっとというかかなり緊張するけど⋯これ以上視線が集まるのはいただけないし⋯仕方がない、よね?
⋯さっきから思ってたけど髪がサラサラしていて触っていて気持ちがいいな
『ぁっ⋯』
ゆっくり優しくと、そうしてると肩の震えは少しずつ止まっていく。肝心の本人の調子は⋯すんごい見つめらてる⋯?
「いやだった?」
『あ、いや⋯気持ちいい、なって⋯』
「⋯っ、そ、そっか」
調子は徐々に戻っていき、嬉しそうに撫でられている。お持ち帰りとかって、やってますかね?
何故か、周囲の視線が怪訝そうなものからまるで生暖かいものを見るような視線になっている。
⋯ちょっと、恥ずかしくなってきたからそろそろ離そう。
『ぁ⋯』
惜しそうに彼女の頭から離れた手を見つめる彼女。どうやらまだ少し足りなかったらしい。
やっぱお持ち帰りとかって対応してないですか?
まぁでも私のなでなでは特急品だもんね、いつも美華にああやって──⋯美華⋯?
「美華⋯って、誰?」
確かこの子が東雲美華って子の名前を出してたはずだから…何か知ってるよね?
『え?きゅ、急にどうしたの?』
「いいから」
『⋯美華は私のことだよ』
この子、美華って名前だったんだ⋯
今知ったってのはさておきどうして美華が⋯
それになんだかよくわかんないけどなにかが私の心に訴えかけてるような⋯なんか、頭痛くなってきた⋯
『それがどうかしたの?』
「⋯いや、大丈夫⋯美華はもう大丈夫?」
『⋯っ。うん、もう大丈夫だよ。ありがとう』
「⋯⋯」
『そ、そんなに見つめられても⋯』
「ごめん⋯なんか──」
『?』
──美華が可愛く見えて。
なんて言えないし⋯じゃなくて急にどうしたの私!?
美華って名前が浮かんできてからおかしい⋯
親しい友達かのように、いやそれ以上に安心感を覚える。緊張もいつのまにか消えてしまっている
そうだなぁ⋯あ、妹だ!例えるなら妹のような可愛いらしさを覚えてしまう。
「いや、なんでもない」
──ぐぅうううーー
可愛らしい音が鳴る。
『⋯あ、えっと違くて!!』
顔を赤くして恥ずかしそうに下を向いてる美華、なんていうかうーん、
「可愛い」
『へぇっ!?』
「何照れてるの?いつも⋯」
──いつも、なんだろうか。
美華を見ているとなんだか揶揄いたくなるし、もっと甘やかしたくなる。いつもとは真反対の感情。
「ご飯、注文する?」
『うん、お願い⋯します』
恥ずかしそうにメニューをみてるの可愛すぎないかな、お持ち帰りは⋯してない??おかしい思います、この世界。
『うーん⋯』
メニューに迷ってそう。美華が食べたいのは多分⋯
「ハンバーグ、でしょ?」
『え?⋯確かにハンバーグの気分かも⋯なんでわかったの?』
「なんとなく、そんな感じがして」
『⋯⋯』
美華の食べたいものがわかるって結構きもくない?キモがられてないよね⋯?
ちらっと隣をみてみると、穏やかな顔つきでみてきてる⋯?なんか嬉しそう。
「な、なに?」
『⋯ちょっと、ごめん⋯』
そういうと、美華がこちらに近づき、腕を背中に回してきて⋯!?
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