悉皆成仏

 少年は何とか、坊主に貰った謎の紙で死んだはずの友達四人と再会を果たし一階の正面玄関へと向かう。その途中、何度か骸骨男に遭遇したがその度に僧侶が現れ助けられた。


「小太郎、あの坊さん本当に信じていいのかよ ? 」

「どういう事 ? 」

「だって、おかしいだろう ? ! 

 助けてくれてるのは確かだけど、毎回あの骸骨男に大けが負わされて殺されてるのにさ ! 次に会う時は、無傷なんだぜ ! 

 あれは、絶対に化け物だ ! 本当は骸骨男の仲間で俺たちを油断させて……それで…………」

「そんな回りくどい事する意味ないだろう」

「でも ! 」

「正面玄関に行けば、きっと全部わかる筈だ」

「そうだよ ! 化け物でもなんでも、助けてくれるなら今は信じるしかないじゃん ! 」


 正面玄関には誰も居なく、五人はしばらく辺りを警戒しつつ待機する。すると、階段から誰かが下りて来る足音が聞こえて来た。


「ごめんね。待たせてしまったかな ? 

 さぁ、いま扉を開けるからね」

「は、はい」


 僧侶は、扉に近づくとポケットから鍵を取り出して扉の施錠を解除した。


「なんで、あんたが鍵を持ってる ? 」

「あの骸骨男から奪い取ったのさ。武器があれば、やり返せない相手じゃなかったからね」


 訝しんで、問い詰めるが返答におかしな部分はなく嘘をついてる風でもない。


「よし。開いたよ」

「やった……」

「これで、おうちに帰れる」

「よかった」

「もうくたくただよ」

「こんなとことっとと出よう」


 小太郎がノブに手をかけようとすると、それを僧侶の手が阻止した。


「え ? 」

「私が開けるから、皆で同時に外へ出なさい。いいね ? 

 絶対に皆、同時に外へ出るんだ」

「……はい」


 暗がりの所為もあり俯く僧侶の表情は見えなかったが、声は今までと同じ優しい声だ。でも、少しだけ悲しんでいる様にも聞こえ小太郎は少し戸惑った。

 だが、直後に僧侶は優しく小太郎の頭を撫でる。その手の温もりは、小太郎が先ほど感じた少しの戸惑いを綺麗に消し去ってくれた。


 そして、僧侶が扉を開けると五人は手を繋ぎ同時に屋敷から外へと足を踏み出す。瞬間、後ろから雄叫びが聞こえ振り返ると骸骨男が立って居て足元には僧侶が横たわっていた。

 後ろから後頭部を鉈で殴られたのか、大量の血が溢れ出ている。


 ようやく外に出れたのに……五人が恐怖と絶望で固まっていると、僧侶の死体が目の前で消えた。何が起こってるのか解らず、困惑していると骸骨男の後に無傷の僧侶が立ち何かお経の様なモノを唱えているのが聞こえる。


 それを聞くうちに、五人は何かとてつもない安心感に包まれゆっくりと目を閉じた。そして、光に包まれた五人はそのまま空へと上がって行く。


「ふぅ……何とか無事、還せた」


 僧侶がそう呟くと、屋敷の扉がばたりと閉まる。暗い屋敷の中に一人残された僧侶は、踵を返すと階段を上り最上階の部屋へと向かって行った。

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