犯した禁忌の代償

「あの坊さん……大丈夫かな ? 」


 少年は、なんとか逃げ切り一階の浴室へと身を潜めていた。僧侶に託された四枚の紙をポケットから取り出すと、半信半疑で血まみれの浴槽にそのうちの一枚を貼る。


「はぁ、はぁ……すぅー……っ……み、美由紀 ! 」


 そして、紙に書かれた名を呼んだ。だが、返事はない。


「……だよな。あの嘘つき坊主」


 膝をつき俯く少年、友達も全員殺されあの僧侶もきっと殺されたに違いない。


「もう、嫌だ……帰りたいよ」


 大粒の涙が、床へと零れ落ちる。するとその時だった。


「小太郎は、昔から泣き虫だよね」


 聞きなれた声に驚き、少年は顔を上げる。先ほどまでは、間違いなく血まみれで誰も居なかった浴槽の中にそこで殺された筈の少女が座って居た。


「な、なんで ? ! 」

「なんでって……何が ? 」

「だって、お前……こ、ここで、殺されて ! 」

「え、何それ。怖いんだけど、訳わかんないこと言わないでよ」


 少年は混乱する。今目の前に居る少女は、数時間前に間違いなくこの浴槽であの骸骨男に殺されているのを見たからだ。


 事の起こりは、少年が少女含む他三人と計五人で地元の祭りに参加して帰る道中での事だった。祭りの会場である神社は、少し奥まった山の中にあったが地域住民はみなが行き慣れた場所だ。

 谷はあるが小さな山で熊も出ない様なとこなので、子供同士でも余裕で来れる。でも、何故かそんな行き慣れた場所で五人は迷子になってしまったのだ。

 どうしようかと途方に暮れていると、見覚えのない場所にいた。辺りを見渡し、どうやら谷底だと言う事がわかったが戻り方がわからない。

 そもそも、どうやって来たかも記憶がはっきりしないのだ。仕方なく、しばらく歩いていると一軒の洋館を見つけた。

 谷底にぽつんと建つ洋館に五人は、異様なものを感じる。だいたい、こんな物が谷底にあるなど聞いた事もないしこんな場所に人が住んでるのだろうかっと……


 だが、途方に暮れていた五人は藁にもすがる思いでこの洋館に足を踏み入れてしまった。そこが、人食鬼の住処とも知らず。

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