第14話

 もう、俺は本当に知らないからね!俺はちゃんと言ったからね!いつもみたいにふざけて言ってるんじゃなくて割と真剣に伝えたからね。


 ここまで言って無理ならもう言わないよな、じゃあもう俺ができる事は無いよな。


 俺としては昨日のうちにある程度伝えておいて、最後に言えなかったことを追加で伝える感じがベストだったんだ。


 それだったらちゃんと早乙女が自転車で連れて行くイベントがあるし、早乙女への好感度も上がったのに。


 まぁでも、こっちの方が早乙女への印象は良いから俺としては良いんだけどね。良いんだけど、良いんだけどさぁ、心は痛いよね。


 いや、だから昨日真剣に伝えたんだけどね。


「ただいま〜」


 どうして俺は誰もいない家に帰ってきた報告をしてしまうんだ。


「おかえり〜」


 …はぁ〜。


 誰もいないはずなのに返事が返ってくるって事はあいつがいるって事だ。


「どうしてお前がいるんだよ」


「ん?私がいてほしいからただいまって言ったんでしょ?」


 ソファで寝そべってテレビを見ている女神がいた。


「ちげぇよ。これは癖で毎日言ってるだけだ」


「変なの」


 そう言って再び女神は視線をテレビの方へ移す。


「来る時事前に伝える事は出来ないのか?」


「女神の仕事は忙しいの。だから、急に出来た休憩の時に来てくるから行くか私だって分からないの」


 本当に忙しいのか?サボってばかりじゃないのか?


「で、今日は何の用があってきたんだ?」


「今日は好感度教えよっかなって」


「おー!マジか!」


 久しぶりに重要なイベントがキタな!そうだよ、これが無いと俺の現在の場所が分からない。これ次第で俺の今後の動きもそうだけど、今が余裕があるのか、絶望するのかが分かる。


「ほら、この女神様に頭を垂れなさーい」


「はは〜」


 すぐに座って手をついて頭を下げる。


 プライドは無いのかって?プライドよりも好感度だろ!


「え〜…ちょっと待ちなさいよ〜」


「はい。いつでも待たせてもらいます」


 女神はいつも通りあのカッコいい、手の上にボンッって本を出した。あれって本当に男の夢だよな、できる事ならやってみたい。


「どれどれ〜。新色更紗。あの長い髪の子ね、は〜44、ね」


 44!?


「久田遥。ショートの子ね、は〜ピッタリ40!」


 40!


「それは、本当なのか?」


「どうして嘘つくのよ」


 やったー!これはかなり良いペースだぞ!だってまだまだイベントはいっぱいあるから今の時点でこれはもう勝ち確ですわ。


 何だよ〜原作通りいってないからもっと低いのかと思ったよ。


「ッシ!」


 思わずガッツポーズが出てしまうくらい嬉しい。


「良かったじゃん」


「いや〜良かったよ〜。好感度の事がずっと頭の片隅にあったからモヤモヤしてたんだよ」


 ずっと不安だったんだよ、あの2人なかなか早乙女の事を好きな感じを出さないから。仲が良いのは伝わってくるけど、あれは好意なのか?って思ってたから。


 やっぱりあの2人はツンデレなんだね、俺にも気づかれずにずっとツンデレしてたんだね、もうそこまでくるとプロのツンデレだよ。


 自分の部屋にいる時だけ「早乙女好き〜♡」ってなってるのかな?


 …えへへ〜良き良き。それはだいぶ良きですよ。


「顔キモいことになってるよ」


「そう?」


 どうやら顔に出ていたようだ。


「はい。これで私の仕事は終わり。料理まだ〜」


 一仕事終えた女神は再びソファに寝転びテレビを観始まる。


 いつもだったらこんな奴ソファから蹴り飛ばしてやりたいところだけど、俺は今機嫌が良い。コンビニ行ってこいって言われても行っちゃうくらいだからな。


「しょうがないなぁ。今から作ってやるから待ってろよ」


 よし、女神の為に作ってやるとしますか!


 







「あの〜」


「…なに」


 なにって…この状況でよく言えるね。


「俺、別にどこにも行かないよ」


 俺が昨日行かないとか言っちゃったせいで久田ちゃんに捕まっている。両手でギュッと袖を握るだけの可愛らしい捕まえ方だ。


 そんな可愛いらしい捕まえ方じゃすぐに振り解けるけど、そんな非人道的な事は出来ない。


 やめてよ〜縄とか手錠だったら無理やり外して逃げようと思うんだけど、袖ギュッは逃げようとする気すら起きない。


「あらあら」


「まぁまぁ」


「おい!見るんじゃねぇよ!」


 クラスの女子たちが何か微笑ましいものを見てるかのような反応をするしてくる。


 こっちはこんな所を見られて恥ずかしくて堪らない。今ここに鏡があって自分の顔を見たら真っ赤になってるに違いない。


「…逃げようとするな」


「してないって…」


 も〜恥ずかしい…。自分でもどうしてこんなに恥ずかしいのか分からない。やっぱり他人に見られてるのが恥ずかしいのかな?


「…やっぱり部活行きたくない?」


 久田ちゃんは不安そうな顔で見てくる。


 無理やり連れてきたけど嫌な事はしてる気持ちになったのかな?


「昨日楽しかったから、毎日行きたいくらいだよ」


 そんな顔されたら行きたくないなんて口が裂けても言えない。

 

「…そうなんだ、良かった」


 さっきまで強く握ってた袖をパッと離す。


 え〜!離すの?離すのは違うじゃん!一応逃げないように掴んでたほうが良いんじゃない?ほら、俺逃げちゃうかもよ〜。


 いや、ここで逃げ出してしまったら…考えるだけでも恐ろしい。


「ハルカちゃんは部活楽しい?」


 原作通りにいくためだけに誘ったけどちゃんと楽しんでるのかな?


「…まだ2日目」


「それはそうだけど…」


 それはそうだけどさぁ、初日が楽しくなかったからキツイじゃん。


「…楽しいよ。毎日が楽しい。…ありがとう」


「え、…あ、うん」


 毎日?ありがとう?











 …?

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