第13話
き、聞き間違いじゃないよな?お、俺気色悪いって言われたよな?
いやいやいやいやいや、そんな訳がない。だって俺フミちゃん先輩のおばあちゃんとは初対面なんだよ?初対面でそんな暴言吐かれる訳ないじゃん。
確かにあの3人に比べられたらそら、気色悪いかもしれないけど、水野祥太ってそこまでだよ?
「え、おばあちゃん何て言ったの?」
フミちゃん先輩は自身のおばあちゃんの発言が信じられなくてもう一度聞いた。いや、もう聞かなくても大丈夫だよ、俺はハッキリと聞こえてしまったから。
「何だ?この気色の悪い男は?」
ほら〜だから言ったじゃん、もう聞かなくても大丈夫だって。俺、メンタルそこまで強くないから思っても素直に口に出さないでよ〜。
「お前はうちの旦那にそっくりだよ」
「あ、はい」
別に何もしてないはずなのに怒られてる気分だ。何もしてないのに怒られるのってこんなにも落ち込むもんなんだな。俺のおばあちゃんに慰めてもらいたい。
俺とフミちゃん先輩のおばあちゃんの旦那さんってそんなに似てるんだ。若い頃の旦那さんにそっくりだから思い出したのかな?
「見た目は似てないけど、うちの旦那はしょっちゅう女遊びしてたからねぇ。お前にはその匂いがプンプンする」
何その意味の分からない理由。俺が女遊び?そんな訳がない。転生前は童貞、今は主人公の親友ポジなんだぞ?そんな俺が女遊び?いちゃもんもいいところだな。
「は?鼻でも悪いんじゃないんですか?」
俺もお年寄りなんだから黙って過ごせばいいんだけどプツンときてしまった。
「んだと、このクソガキ!」
「やんのか、このクソババア!」
フミちゃん先輩のおばあちゃんは立ち上がって俺の方へ来ようとしたので俺もファイティングポーズをとっていつでも戦えるようにする。
「「まぁまぁまぁ」」
フミちゃん先輩のおばあちゃんは近くにいた早乙女が抑えて、俺は近くにいたフミちゃん先輩が抑えた。
このおばあちゃん本当に危ないのか?めちゃくちゃ元気じゃねぇか!
「ふぅ〜けいちゃんとイケメンくんと別嬪さんたちごめんねぇ。ビックリしたでしょ?」
「いや、私たちは大丈夫ですよ」
「はい」
「…うん」
「俺に謝罪がないんですけど」
俺にだけ謝罪がないのは納得がいかない。俺が1番の被害者なのに。
「もう!」
「グエッ!」
隣にいた新色が肘で俺のみぞおちを攻撃してきた。また喧嘩するからもう余計なことは言うなって意味なんだろう。
「もう私たち帰るね、おばあちゃんに私の後輩たちを見せたかっただけだから」
これ以上俺とおばあちゃんを一緒にいさせてはいけないと思ったフミちゃん先輩は帰る事を提案する。
それには俺も賛成だ、このおばさんはまだ俺を嫌なものを見る目で見てくる。そんなに旦那さんと仲良くなかったのか?旦那さんと仲良くないのを俺にぶつけられても困るんだけどな。
「お前さんはちょっと残りな」
最後に部屋を出ようとした俺を呼び止めた。
「ちょっ、おばあちゃん!」
「大丈夫ですよ。先に行っといてください」
また俺に愚痴を聞かせるために残れと言ったのか?と思ったけどさっきと雰囲気がだいぶ違ったから何か他に言いたい事があるのだろう。
「でも…」
「喧嘩なんかしませんから」
「じゃあ先に行くね」
と、フミちゃん先輩は他の3人を連れて部屋から出ていった。足音が遠くになるのをジッと待つ。どうやら他の人には聞かれたくないらしい。
そんな重要な事を話すのか?それともやっぱりムカつくから俺を刺そうとしてるのか?
「行ったね」
足音が遠くになったのを確認してフミちゃん先輩のおばあちゃんは口を開いた。鼻は悪いのに耳は良いのかよ。
「お前さんに頼むのも癪なんだけどね、けいちゃんの事をよろしく頼んだよ」
フミちゃん先輩のおばあちゃんから出てきた言葉は意外なものだった。俺はビックリして言葉が出なかった。
「あの子は真面目過ぎるところがあるからね、お前さんがちゃんとバランスとってやりなよ」
「どうしてそれを俺に?」
意味が分からない。さっきまであんな俺の事を嫌ってたくせに大事な孫は俺に託すのかよ。
「あん?…お前さんがうちの旦那に似てるからだよ」
何だよ、嫌い嫌い言いながら旦那さんの事が好きなのかよ。このツンデレババアめ。
「…はいはい。分かりましたよ」
「はいは1回!」
「へーい」
「そういうところも旦那そっくりだよ!」
じゃあめちゃくちゃ旦那さんと似てるんだな、俺って。
「じゃあ失礼しますね」
「ちょっと待ちな。お前さんの名前は」
「…守口宏人」
少し考えて転生前の名前を口に出していた。どうしてその名前を言ったのかは分からないけど、そっちの方が良い気がした。
「じゃあ守口宏人。孫の事を頼んだよ」
「はい」
今回はちゃんと1回だけ返事をして部屋を出ていった。もう長くないと自分でも分かってるからこうやって俺に頼んだのだろう。
だが、悪かったな。俺は主人公じゃないんだ、主人公はあくまでも早乙女なんだ。最低限の事はしてやるけどそれ以上はしてやれない。
さて、と。じゃあ俺は今回の目的を達成するとしますか。今回来たのはあのおばはんにキレられるためじゃない。
『もしもし』
『もしもし。どした?』
早乙女に電話をする。もちろん周りに配慮はしてるよ。
『先輩いる?』
『いるよ』
『先輩の事呼んでるから来てほしいって伝えて』
『あいよ』
もちろん嘘である。誰もフミちゃん先輩の事なんか呼んでない。
でも、俺の目的には必要な人物だから呼ばせてもらった。
「あ、祥太くん。おばあちゃんが私を呼んだんだよね?」
「はい」
「分かった」
何気に初めて俺の事を呼んでくれたな。俺の事は祥太くんって呼んでくれるんだ〜。原作だと交わる事が無いから名前を呼ばれる機会がない。だからフミちゃん先輩は俺の事を祥太くんって呼ぶって事を知れて嬉しい。
「ちょっと待ってください」
おばあちゃんの元へ行こうとするけど、フミちゃん先輩の腕を掴んで止める。
「どうしたの?」
これを言ったら嫌われるかもしれないけど、言うしかない。まぁ俺は別に嫌われても良いんだけどね。
「怒るかもしれないですけど、もうフミちゃん先輩のおばあちゃんは長くないです」
「何言ってんの?」
大好きなおばあちゃんがもうすぐ死ぬって言われたらそら怒るよな。
「怒る気持ちも分かります。でも、冷静に聞いてください」
俺の気持ちを伝えるため一呼吸置く。
「ふぅ〜俺はおばあちゃんに何も言えず離ればなれになりました。だから、すごく後悔してます。お願いです、先輩は後悔の無いようにしてください」
俺は俺の本音をフミちゃん先輩にぶつけた。これが今回の目的だ。
「……」
フミちゃん先輩は俺の真剣な感じを読み取って怒りを鎮めてくれた。
「お願いします」
「分かった。行ってくる」
そう言っておばあちゃんのいる部屋へ向かっていった。
「あれ?どうしたの?」
「ん?おばあちゃんが呼んでるって祥太くん…さっきおばあちゃんと喧嘩してた子が」
そら、そうなるよな。実際は呼んでないから。
あ、俺はしっかりと外で聞き耳を立ててるよ。
「ああ、ごめんねぇ。呼んでたの忘れてたよ」
「なんだ〜」
お、ナイスババア。ちゃんと空気読めるじゃねぇか。
「後輩たちの面倒はしっかり見なさいよ」
「それだけ?」
「うん」
そうだよな、実際は俺が呼んだんだから。
「そうなんだ〜」
「うん」
「…あのね、おばあちゃん」
そうだ、言え!ある程度言いたい事は今のうちに伝えておけ!
「あのね!」
「うん」
「…ごめん。やっぱり何でもない」
…照れやがった。
「そうかい」
「うん、また会いに来るからね。バイバイ」
「じゃあね」
聞き耳を立ててたのがバレたくないから足音をたてずに急いでその場から離れる。
「あ、祥太くん。待っててくれたんだ」
「はい」
「ありがとう。じゃあ行こっか」
「…はい」
いや、俺は言ったからな!後悔しないようにって、ふざけなしで真剣に!
…いや、本当に知らないからね。
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