第6話
……やめろ。やめろ、やめろ、やめろ。
彼女に、私の彼女に、
「触るな!!!!!」
ナイトは引き抜いた剣を青年の喉元に突き立てていた。
剣を引けと心に住むもう一人の英雄騎士が最後の一線を越えようとしているナイトを止める。
──何をしている。青年は自分を慕う仲間だろう。
違う。この男は私からエリスを引き離そうとする略奪者だ。
──青年はエリスの弟だろう。
そんなものは関係ない。私からエリスを奪おうとする者は誰であっても殺す。
ナイトの行動に気付いた国民達から次々に悲鳴が上がり、剣士達は震える手で剣をナイトへと向けた。鋭い何十本もの銀の刃がナイトの周りを囲む。
この国では同志に手を出すことは法律で厳しく禁止され、重い罪になる。
分かっている。分かっているのに、本来の英雄騎士が消え掛かり、何か別のものに支配されたナイトが大きく顔を出す。
──止めてくれ…!誰かこんな私を…!
英雄騎士はナイトの心の中で最後の叫び声を上げた。
「大丈夫ですよ、ナイト様」
「っ、」
穏やかな声の主の小さく柔らかい手が後ろから青き澄んだナイトの瞳を隠し、視界を奪った。
彼女が意図せず奪い取ったのは、ナイトが愛していた広大で美しい国と最後に残っていた「英雄騎士」だった。
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