【5人台本】硝煙、薫る

夜染 空

硝煙、薫る

企画【台本師の戯れ】様

ハッピーエンドは犠牲の上に 題材として作成



タイトル

硝煙しょうえんくゆる』

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グレイ:雇われスナイパー。男性。年齢は30代

エマと婚姻関係にあるが子供はいない。ロブとは親友。


エマ:グレイの妻。3歩後ろを歩くタイプの大人しい30代女性。ロブとは幼なじみ。


ロブ:グレイの親友にしてエマの幼なじみ 元軍人で現在は妻子を持って幸せに暮らしている。グレイと同い年。※兵士無線と兼役


ダニー:グレイを執拗に追い回すイカレ野郎。グレイより3歳ほど年下。行き過ぎた執着心がグレイを絶望に突き落とす。


ジャック:グレイの通信バディ。仕事はできるが何かとグレイに振り回されるちょっと可哀想なポジションの男性 30代


※ス テイシー︰ロブの嫁。名前だけ登場



0:以下、本編



ジャック:「M/某国……ここは未だに人々が武器を取り、争いを続けている」


ジャック:「M/終わらない争いに疲弊していく人々…そして奪われる命…」


ジャック:「M/そんな中でも、必要とされてしまうのさ…この男は」


タイトルコール

エマ︰「硝煙、薫る」


(とある戦場…戦地にて行動するグレイと、上空からヘリで通信を受けるジャック)


-瓦礫と化したビルに身を潜めるグレイ

-愛用のスナイパーライフルを構えながらうつ伏せになった状態で静かに通信を開始する


グレイ:「…目的地に着いた、現在の所敵影なし…妙に静かで気味が悪いぜ…」


ジャック:「了解だグレイ。周囲の警戒はおこたるなよ?」


グレイ:「わかっているさ。」


(しばらく辺りをスコープで覗いて)

グレイ:「……居た」


グレイ:「距離1200!ガレキの山に囲まれた3階建ての建物の中だ」


ジャック:「オーケィ…狙えるか?」


グレイ:「いや無理だ。頭こそ見えるが不自然に動いて狙いが定まらない」


ジャック:「わかった、だが気を付けろ!何をしてくるか分からん」


グレイ:「わかっているさ…」


-じっとスコープを覗き、息を潜めるグレイ

-ターゲットの不自然な動きに違和感と疑問を持ちつつも、その目はしっかりと目標を捉えている


(少し長めの間)


グレイ:「…」


グレイ:「……?」


グレイ:「……っ!?」


グレイ:「あんの野郎!」


-グレイの驚きの声に反応して声を上げるジャック


ジャック:「グレイ!どうした!?」


グレイ:「(歯を食いしばるように)あいつ、建物から出てきたと思ったら…身体中にマイト(ダイナマイト)括りつけてやがる!」


ジャック:「なんだと!?」


グレイ:「……畜生が!!」


-離れた場所でも伝わるほどの爆発の衝撃音が、グレイの耳とジャックの通信に響く


グレイ:「…くそが…っ…目標は自爆…周囲はヤツの肉片まみれだ。爆発の寸前、何かを叫んでいたようだが…クソ…嫌なもん見せやがってっ!」


-上空からでもわかるほどの惨状を見て呆然とするジャック


ジャック:「ひでぇ…どれだけの量を仕込んだらああなるんだ…」


ジャック:「…グレイ、周囲は問題ないか?」


グレイ:「(小さく溜息)……クリア。」


ジャック:「……迎えに行く、おつかれさん」


グレイ:「あぁ…おつかれ。あの不自然な動きが、まさか自爆の準備だったとはな……(地面に拳を叩き付ける)クソが!」


ジャック:「気持ちは分かる。俺だって胃が丸ごと出てきそうな気分だ……とにかく、気を付けて帰還してくれ」


グレイ:「りょうか---っ」


-グレイに向かって後ろから銃弾が放たれる、しかしその銃弾はわざと外されたもの


グレイ:「(振り返りながら)誰だ!」


-姿が見えない敵に警戒するグレイ


グレイ:「……!」


ジャック:「(鬼気迫る感じに)グレイ!どうした!敵襲か!?」


グレイ:「わからん!だがそこまで遠くじゃない!」


グレイ:「聞き覚えのある銃声……まさかっ!」


ダニー:「(遠くから)ぐーれぇい!!!俺だァ!グレイを愛してやまないダニーちゃんだぜぇ!!」


グレイ:「あんのイカレ野郎!こんな所まで着いてきやがった!」


ジャック:「イカレ野郎……まさかダニーか!?」


グレイ:「そのまさかだ!」


ダニー:「(遠くから)ぐれーぃ…悲しいじゃないかぁ!俺とも遊んでくれよぉ!!!」


グレイ:「冗談じゃねぇ!てめぇの相手をしているほど俺ァ暇じゃねぇんだよ!」


(グレイは銃声が聞こえた方向に向かって射撃)


ダニー:「ん~~~!!!そんな弾当たらねぇよぉ!!」


グレイ:「はっ!金に物言わせていいもん使ってるやつは言うことが違うな!慈善団体に寄付した方がよっぽど世の中のためになるんじゃねぇのか!?」


ダニー:「いいだろぉ?お前を殺すためならぁ、俺はどれだけの大金がかかろうとも惜しまず出すんだぁ!俺の金は、俺だけのために使うんだ!他所にばらまく余裕なんかないねぇ!!」


グレイ:「イカレクソ野郎め!俺はこれから帰るんだよ!てめぇと遊ぶのはまた今度だ!!」


ジャック:「(大きな声で何度も呼びかける)グレイ!大丈夫か!応答しろグレイ!!」


グレイ:「ジャック!俺の現在地周辺に煙幕を張ってくれ!!」


グレイ:「ダニーが居たんじゃ移動も何も出来ねぇ!」


ジャック:「(言葉と同時にスイッチを押し、スモーク弾を発射する)了解だ!」


(煙に巻かれて咳き込みながら)

ダニー:「ぐれぇぇぇぇぇぇい!!!」


グレイ:「あばよイカレ野郎!!!」


-煙の中を走り去るグレイ、その足はジャックが待機する合流地点に真っ直ぐ向かっていた


0:間


-ダニーへの文句を呟きながら家の前に到着するグレイ


グレイ:「ダニーのクソッタレめ…あいつが邪魔してこなきゃもっと早く帰れたってのに…」


(自宅に帰還したグレイが呼び鈴を鳴らす)


-エマは小さくドアを開け、訪問者を確認する。そしてそれがグレイだとわかると、ドアを勢いよく開け歓喜の声を上げる


エマ:「はぁい……」


エマ:「っ!グレイ!」


グレイ:「エマ、帰ってきたよ!」


-グレイの帰還に喜びを隠せないエマ、言葉と同時に抱きつこうとする

-しかしそれは、グレイの軽く挙げられた手で静止される


エマ:「おかえり(なさい!)」


グレイ:「(遮って)待った!ハグはシャワーの後でもいいかい?こんなホコリだらけでハグしたらせっかくの服を汚してしまう」


エマ:「あ…私ったらつい…」


グレイ:「気持ちはわかるさ。話はシャワーを浴びながらでも出来るだろ?家に入ろう」


エマ:「えぇ、本当に…おかえりなさい」


グレイ:「ただいま」


0:間


-シャワーが終わり身体を拭きながら会話をするエマとグレイ


グレイ:「それで、変わりなかったかい?」


エマ:「そうね、特には……」


エマ:「あっ、昨日ロブが来たわ」


グレイ:「ロブが?」


グレイ:「なんだアイツ…またエマを口説きに来たのか?」


エマ:「グレイったらまたそんな冗談を言って」


グレイ:「ははっ、で、何の用だったんだ?」


エマ:「2人目が生まれるんですって」


グレイ:「そりゃめでたいな!どっちだ?」


エマ:「男の子」


グレイ:「欲しがってたもんなぁ……着替えたらお祝いを買って、ロブの家に行こう!」


エマ:「そうね!何がいいかしら……」


グレイ:「(少し考えて)…俺ならしばらく使えるものがいいな」


グレイ:「……タオルはどうだ?ぬいぐるみ付きの」


エマ:「いいと思う!」


グレイ:「そうと決まればのんびりしていられないな!」


0:買い物を終えてロブ宅に到着した2人、呼び鈴を鳴らし家主が出てくるのを待つ


ロブ:「はぁい、どちら様…」


グレイ:「よっ!」


ロブ:「…っ!グレイ!帰ったのか!」


-ロブは親友の帰還に歓喜し、両手を広げて迎える


グレイ:「ロブ!またエマを口説きに来たんだってな!懲りないヤツめ!」


ロブ:「はっはー!お前が言うと冗談にしか聞こえないなぁ!」


グレイ:「お前に言われても嬉しいだけだぜ!」


-再会を喜び腕を交差させる


グレイ:「それより、子供が生まれるんだって?」


ロブ:「そうなんだ!念願の男の子だ!」


ロブ:「こんなところで立ち話もなんだ、家に入ってくれ!」


グレイ:「お邪魔するよ!」


エマ:「(グレイの背後から顔を出して)こんにちはロブ、お邪魔します」


ロブ:「エマも一緒か!さぁ入って!」


0:間


-リビングのソファーに座りコーヒーを飲みながら談笑する3人


グレイ:「ステイシーはどうした?」


ロブ:「子供とお出かけだよ、パパには内緒のお出かけ!だとさ…」


グレイ:「パパには内緒ねえ…可愛いじゃないか!」


ロブ:「蚊帳の外にいる気分だよ」


エマ:「あの…ロブ、これを」


-道中で買ってきたプレゼントを渡すエマ


ロブ:「ん?」


エマ:「私とグレイで選んだの、産まれてくる子供にと思って」


-プレゼントを受け取り喜ぶ目を開いてロブ


ロブ:「ありがとう…!」


ロブ:「あはっ、ぬいぐるみと…これはブランケットか!」


グレイ:「提案したのは俺だが、物を選んだのはエマだ」


ロブ:「嬉しいよ!2人ともありがとう…!」


エマ:「喜んでもらえてよかった…!」


グレイ:「センスはエマの方がいいからな」


-贈り物に喜び笑うロブ、しかしその顔はゆっくりと真剣な表情に変わる


ロブ:「(真剣な面持ちで)…そうだ…グレイ。」


グレイ:「……なんだよ、そんな真剣な顔して…」


ロブ:「産まれてくる子供の、名前を決めて欲しいんだ」


グレイ:「はぁ!?俺が!?冗談はやめてくれロブ!俺にはネーミングセンスなんてないぞ!」


ロブ:「だからだよ!」


グレイ:「…ステイシーは、それでいいって言ったのか…?」


ロブ:「もちろん了承済みだ。」


-信じられないと言った表情で静かに否定するグレイ


グレイ:「おいおい…待ってくれ親友…いくらなんでもその頼みはきけない…」


ロブ:「お前は、いざと言う時真剣に考えてくれるし、真剣に行動出来る。そういう男だ。だから、お前に頼みたいんだよ」


グレイ:「…」


エマ:「グレイ…考えてみたら?」


グレイ:「(エマの言葉に静かに驚く)エマ……お前もか…」


エマ:「(諭すように)私たちは子供を作る未来を絶っている…。2人で決めたことよ。でも、ロブは違う。」


グレイ:「……」


エマ:「こんなお願いをされることなんて、人生で1度あるかどうかよ…ましてや、親友の子供の名付けなんて、とても素敵な事だわ」


グレイ:「…わかった、考えてみるよ」


ロブ:「お前ならそう言ってくれると思ってた…!」


ロブ:「(照れくさそうに)実を言うとな…男の子が出来たら、グレイに名付けしてもらおうって前々からステイシーと話してたんだ」


グレイ:「じゃあ…」


ロブ:「娘が男の子なら、今の頼みをしていたよ」


グレイ:「(天を仰ぎながら)なんてこった…ロブ……お前ってやつはほんとに……」


ロブ:「頼んだぞ、親友!」


-親友の頼みを聞き入れ、にこやかに言葉を返すグレイ


グレイ:「わかった、いい名前を考えるよ」


エマ:「やっぱりふたりは仲良しね」


ロブ:「……だろ?俺の親友は、世界一良い奴だからな!」


0:間


-しばらく談笑をしていた3人……しかしそこに1本の電話が入る

-話の邪魔をするまいと、出来るだけ静かに、座ったまま身体を逸らして電話に応えるグレイ


グレイ:「おっと、すまない……」


グレイ:「…俺だ」


ジャック:「(少し焦ったように)グレイ、俺だ、ジャックだ。」


グレイ:「ジャック?どうしたんだ」


ジャック:「悪い知らせだ…拠点Cが爆破された」


グレイ:「(立ち上がって大声)なんだって!?」


-グレイの驚きの声に身をビクつかせるロブとエマ


ロブ:「…!?」


エマ:「……!」


ジャック:「しかも配達の小包に時限爆弾を紛れさせて…ときたもんだ。通信設備が固まったあの拠点をやられて、上はてんやわんやだ」


グレイ:「そりゃご機嫌だ…で、俺に何をしろと?」


(皆まで言わずとも分かるだろう?と言った感じで)

ジャック:「簡単だ……」


グレイ:「……わかった。場所は」


エマ:「…グレイ?」


グレイ:「1時間後…家でのんびりする時間もないのかよ…」


ジャック:「すまない……」


グレイ:「いや、いい。すぐに行く」


-電話を切るグレイ


エマ:「グレイ…どうしたの?」


グレイ:「仕事だ」


エマ:「…また、行くのね…」


グレイ:「安心しろエマ…俺が帰るのは、君の隣しかない。戦地で死んでタグを帰還させるような真似だけはしないよ」


エマ:「……」


ロブ:「グレイ…エマには俺たち家族がついてる…必ず帰ってこい…!」


グレイ:「そのつもりだ…頼んだぞ親友」


0:間


ダニー:「M/連中は想定外の襲撃でてんやわんや……そこに必ずグレイは来る……でも、それだけじゃあない…これはショータイムの始まりに過ぎないぞグレイ………さぁ、踊ろうじゃないか…!」


0:間


-指定の場所で待機していたジャックと合流するグレイ


ジャック:「グレイ!」


グレイ:「ジャック!愛の告白にしては強烈だったぞ!次はもう少しお*しとやかにしてくれ!」


ジャック:「冗談言ってる場合じゃない!お前が来る間に拠点Fも同様の手口でやられた!」


グレイ:「…なぜ場所が知られている」


ジャック:「俺が聞きたいね!」


グレイ:「犯人は」


ジャック:「不明だ…だが的確に拠点の場所を把握している…軍に裏切り者がいるか…あるいは……」


グレイ:「裏切り者の線は無しだ。」


ジャック:「…グレイ?」


グレイ:「攻撃された拠点は俺が出入りしている場所でもある。って事は…」


グレイ:「俺を狙っている可能性もある…俺は、人気者だからな」


ジャック:「……馬鹿言うな」


グレイ:「さぁ行こう」


-軍用車に乗り込み狙われた拠点に向かうグレイとジャック


0:間


-一方、グレイを見送り玄関先で手を合わせながら不安な顔をするエマに、ロブは優しく声をかける


ロブ:「…エマ?」


エマ:「グレイ……大丈夫かしら…」


ロブ:「大丈夫さ、今までだって帰ってきたじゃないか」


エマ:「そうだけど…」


ロブ:「エマ…心配なのは俺も同じだ。だが、俺たちはただ待つしか出来ないんだ…帰ってくると信じて待つしか…な。」


エマ:「…えぇ、」


ロブ:「さぁ、中に入ろう」


-ゆっくり肩に手を置き、ソファーまで身体を誘導する


ロブ:「じきにステイシーたちが帰ってくる…そしたら女同士で話すといい」


エマ:「(静かに座って)…ありがとうロブ。」


0:間


ダニー:「M/さぁ種は撒いた…どうする?グレェイ……」


0:間


-拠点に向かう車で会話を続ける2人


ジャック:「お前を狙うやつなんてアイツしかいないだろう」


グレイ:「あぁ、あのイカレ野郎なら…俺を*おびき出すためなら、きっと手段は選ばない…今までは運が良かっただけだ。戦地に行けば俺がいる…それがわかっているから今まではこちら側に手を出さなかった」


グレイ:「だがあの時…あの時は一方的に俺が離脱した。だからヤツは、頭のネジを全部ぶっ飛ばしてこんなやり方を選んだ…そうだとしたら…あいつは俺が殺さなければ今後何をしてくるかわからん……」


ジャック:「嫁さんやロブに危害か及ぶと?」


グレイ:「…最悪なのはそれだ。そんなことされたら、俺はいつでも悪魔に魂を売る気持ちだ…出来ればそんなことはしたくないがな……。だが、もしヤツがエマやロブに危害を加えるようなら…その時は、どんな手を使ってでも、やつを殺す」


ジャック:「(落ち着かせるように)最悪を想定して行動しよう…だが今は拠点だ」


グレイ:「……こんな時に一番近くにいてやれない事が悔しいぜ…。雇われスナイパー…か。数多くの勲章を貰ってもなんの意味もない。俺が望むのは平穏無事な生活だ。それさえあれば十分だ」


ジャック:「それはみんなが思うことだろうさ…俺だって軍に居なければ別の生き方をしていただろうし、お前と知り合うこともなかった」


グレイ:「まったくだ…」


-グレイにBluetooth無線の音が入る


ロブ:「(兵士無線)こちら拠点A通信!誰か!誰か応答してくれ!」


グレイ:「(無線に反応)グレイだ!どうした!」


ロブ:「(兵士無線)何者かは分からん……だが狙われている!距離も不明!外の味方は全員やられた!拠点内の兵士も何人か負傷している!」


グレイ:「スナイパーか!?」


ロブ:「(兵士無線)おそらく…………っ!?……銃声が…聞、こえ……(脳天を打たれて死亡する)」


グレイ:「おい!どうした!おい!!」


ジャック:「どうした!?」


グレイ:「(無線機を戻しながら)今度は拠点Aだ…通信していたやつが何者かに殺された」


ジャック:「次から次へと…俺たちの身体は1つしかねぇってのに!」


グレイ:「全ての拠点を短時間で回るのは不可能だ…拠点Aから1番近いのは何処だ!」


ジャック:「……拠点B…だがあそこは既に投棄されている、行っても何も無いぞ」


グレイ:「…なら……」


-再び無線に音声が入る


ダニー:「(挑発するように声を上ずらせながら)あーあーあー!マイクテスマイクテス?はろーはろぉ??きこえますかぁぁぁ??」


グレイ:「このふざけた声は…!」


ダニー:「はぁいグレェイ…!グレイの事を殺したい程愛してるダニーちゃんだぜぇ」


グレイ:「てめぇダニー!やっぱりお前の仕業か!何が目的だ!」


ダニー:「んん?俺の目的はいつだってひとつだ…お前との殺し合いだよ」


グレイ:「なら何故あんな真似をした!」


ダニー:「家でぬくぬく幸せな時間を過ごす……それを邪魔するためさぁ!スコープを覗き息を潜め、顔色ひとつ変えずに人を殺す…そんなお前と遊ぶためさぁ!!」


グレイ:「(管巻く感じに汚く)クソッタレがぁ!!てめぇの脳みそはチーズか!穴だらけにした覚えはねぇぞ!」


ダニー:「至って健全さ、健全そのものさぁ!」


ダニー:「(にやけて笑いながら)じゃなきゃ、こんな方法は思いつかないだろぉ?」


グレイ:「つくづくイカレ野郎だ…」


ダニー:「そぉ言うなよ…。なぁグレイ……俺は今から、どこに行くと思う?」


グレイ:「……なぜそんなことを聞く」


ダニー:「ただの質問さっ!深い意味は無い!」


ダニー:「でももし、もし意味があるとしたら……お前が俺なら…お前は次にどこに向かう?お前が俺と同じ思考を持てたとしたら…お前ならどうするぅ!?」


-少し考えなが、ダニーの思惑に気付き絶望の顔をするグレイ


グレイ:「…おい、まさか………やめろ……それだけは辞めてくれ!」


ダニー:「ぎゃはははははははははっっっっ!楽しみだなぁ!お前が絶望する顔!真っ黒に染るその瞬間!!俺を殺したくて殺したくて仕方なくなって悪魔に魂を売るその瞬間!!!」


グレイ:「頼むダニーそれだけはダメだ……!やめてくれ!!!」


ダニー:「…さぁ、早くかえっておいでぇ……じゃないと…くくくっ…あははっ…あはははははははははっっっ!!」


-ダニーの高笑いが響き渡る。

-最悪を想定……しかし想定した最悪はすぐにやってきた


グレイ:「(無線の音が切れ、項垂れる)……ジャック、家に帰ってくれ…」


ジャック:「なんだと!?拠点は!軍は!?」


グレイ:「(肩をつかみ訴える)そんなことどぉでもいいんだよ!!!!エマが…エマが狙われた……早くしてくれ!頼む!」


ジャック:「……っ!!しっかり掴まっとけよ!!」


グレイ:「エマ…無事でいてくれ…!!」


-来た道を急ハンドルを切って戻る2人、そしてグレイの顔は不安と恐怖に染っていた


0:間


-ロブ宅、グレイの身を案じて待つ2人

先程とは違う空気の中、恐る恐る口を開くエマ


(2人は座ってコーヒーを飲んでいる)

エマ:「ねぇロブ…」


ロブ:「どうした?」


エマ:「あ…えっと、変な事を聞くけれど、良いかしら…?」


ロブ:「構わないさ、俺とエマの仲じゃないか。何が聞きたいんだい?」


エマ:「…私、グレイが怒った所を見た事がないの…いつも笑っているから、怒った姿も想像出来なくて…ロブはグレイが怒った姿を見た事があるのかなぁ…って、」


ロブ:「怒ったグレイか…無くはないな」


エマ:「え!?」


ロブ:「だがあれは…怒ると言うより…」


エマ:「…?」


ロブ:「あの時のグレイは…まさしく鬼のようだった…」


エマ:「お、鬼?」


ロブ:「だがあれは、グレイを激怒させた元上官が悪いな」


エマ:「どういうこと?」


ロブ:「俺は騒ぎを聞きつけて現場に向かったんだが…一部始終見ていたやつが言うには、火をつけたのは元上官らしいんだ。」


エマ:「……?」


ロブ:「(クスりと笑いながら)元上官は、美人の嫁を貰えるグレイに嫉妬して、グレイがいる目の前で嫁になる女性の事をこれでもかと悪く言ったらしい。」


エマ:「それって…」


ロブ:「普段は笑いながら冗談で切り返すグレイも、こればかりは笑っていられなかったらしい。元上官がある事ないことを散々言い散らかすそのニヤけた面を、グレイは無言で殴り飛ばしたらしい」


エマ:「…そんな事が……。」


ロブ:「俺がその場に着いた時、元上官の顔は紫色に変色して顔がパンパンに膨れ上がっていたよ。そして…顔色ひとつ変えずに、ただただ元上官を殴ったグレイの拳は真っ赤に染まっていた」


エマ:「そ、想像出来ない…」


ロブ:「だろうな、俺もあの時のグレイを見て背筋が凍る思いをしたよ…温厚な人間ほど怒った時が怖いもんだ」


エマ:「その後は…その元上官さんは、どうなったの?」


ロブ:「…元上官は実力こそあった。だがグレイが入隊してしばらくは素行不良が目立ち、上は対応に困りあぐねていたらしい。結果何が起こったかと言うと…」


エマ:「…(生唾を飲む)」


ロブ:「上は、問題を起こしたグレイではなく、問題の原因となった元上官を切ったんだ。」


エマ:「え!?」


ロブ:「元上官は、隊を抜ける間際までグレイへの恨み事呟いていたそうだ…そして、その後元上官がどうなったのかは、誰も知らない」


エマ:「そんな事があったのね……知らなかった…」


ロブ:「まぁ、好いた女を悪く言われて怒らない男はいないさ……」


ロブ:「飲み物がなくなってしまったね、同じものでいいかい?」


-言葉につられてカップを渡すエマ


エマ:「あぁ、ありがとう」



ロブ:「(1つ笑みを浮かべてから)それにしても…ステイシー達遅いな…パパ抜きのデートはさぞ楽しいんだろうな」


エマ:「ロブったら…パパには内緒のお買い物なんだから、そんな事を言ってはいけないわ」


ロブ:「そうだな、ちょっと待っててくれ、すぐ新しい飲み物を用意するよ」


-立ち上がってキッチンに移動するロブ


0:呼び鈴が鳴る


エマ:「あ…ロブ、お客様よ?」


(キッチンからエマに声をかける)

ロブ:「すまない、手が離せないんだ!ステイシー達かもしれない、悪いが出てくれるか?」


エマ:「わかったわ」


---ドアを開けるエマ


エマ:「ステイシー?帰ったの?」


ダニー:「…はぁぁぁい…エマ……。」


エマ:「……!?」


-叫ぶ事すら許されず、エマはダニーに攫われてしまう。来客への対応を任せたエマが戻らない事を不思議に思いながらも、ロブは淹れたてのコーヒー片手に歩きながらエマを呼ぶ


ロブ:「……エマ?ステイシーたちが……エマ?」


-開けっ放しになった扉と、忽然と姿を消したエマ。

ロブはコーヒー放り出し、急いで外を確認する


ロブ:「…エマ!!」


ロブ:「…エマがいない……なんて事だ…どうしよう…グレイに連絡を…エマが……エマが……!」


-焦りながらもスマホを操作するが、その指は震えて言う事を聞かない


ロブ:「(震えながら)あぁクソ!!なんでだ!なんでちゃんと打てないんだ……!エマが、エマが大変なのに…!クソぉ!!」


-連絡しようとするロブの前に、荒々しく1台の車がロブ宅に到着する

車から勢い良く飛び出してエマの無事を確認するグレイ


グレイ:「ロブ!エマは…エマはいるか!」


-震えて今にも泣きそうになりながら、ロブはグレイにエマが消えた事を伝える


ロブ:「グレイ……すまない…エマが…エマが、消えちまった…」


グレイ:「……(舌打ち)野郎…やりやがった…本当にやりやがった……クソが!!」


ロブ:「俺がドアを開けさせたから…俺のせいだ…俺のせいでエマが……」


グレイ:「(怒れる感情を抑えながら)…いや、お前のせいじゃない……お前は悪くない……」


-安心させようとしっかりとロブの肩を叩くグレイ、そして深く深呼吸し、ロブの肩に手を置いたまま息を整える


グレイ:「お前に怪我がなくてよかった…」


ロブ:「(我慢できずに涙がこぼれる)すまない…すまない、グレイ……」


グレイ:「泣くなよ親友…パパがそんな簡単に泣いてたら、子供達に*揶揄からかわれてまうぞ?(肩を叩きながら)しっかりしろ」


ロブ:「……」


グレイ:「連れ去ったヤツは検討が着いている…連れ去った場所もだ…エマは必ず取り戻す……」


ロブ:「グレイ……」


グレイ:「それに、産まれてくる子供の名前も付けてやらないといけないんだ…必ず帰ってくるよ」


ロブ:「(溢れる涙を拭って)…わかった、必ず帰ってこい…!」


グレイ:「言われなくても」


0:間


-投棄された拠点Bにて…気絶していたエマが意識を取り戻す


エマ:「…っ、ここは……」


-座って気絶するエマを眺めていたダニーがニヤけた顔で声をかける


ダニー:「はじめましてエマ…気分はどうだい?」


エマ:「…あなたは」


ダニー:「俺はダニー……ダニー・ニコルソン。」


エマ:「ダニー…?」


ダニー:「グレイから聞いたことは無いか?元上官を殴ったと…」


エマ:「……さっきロブが言っていた、元上官?」


-エマの言葉を聞き首を傾げながらも、ダニーはまるでスポットライトを浴びる役者のように振る舞い歓喜する。


ダニー:「なぁんだ、俺が到着する前に俺の事を話していたのかい?そう!俺はホットな話題の主人公、ダニーちゃんっ!(落胆した声で)…でも、そうかぁ…グレイから聞いたんじゃなかったのか…残念だ。話の通り、俺はグレイの元上官だよ」


エマ:「…なぜ元上官である貴方が、私をこんな所に…」


-気を取り直して不気味な笑みを浮かべながら、ダニーは言葉を出す


ダニー:「簡単さ、グレイとサシで殺し合うためのエサだよ。お前はエサ…グレイは必ず食い付いてくる。何よりも大切なお前のためなら、戦場なんかほっぽってここに来る…」


エマ:「何故そんなことを…」


ダニー:「復讐だよ……」


エマ:「…復讐?」


ダニー:「(恨めしそうに)あの時、切り捨てられるのは俺じゃなくグレイのはずだった…なのに上は、グレイではなく俺を切った…俺のプライドばズタボロになった。俺はヤツが許せない…どこにいても追いかけて、必ず殺す…だがヤツは……ヤツはいつものらりくらりと逃げおおせる……許せない……だから俺は奴が逃げられない方法を取った」


エマ:「……」


ダニー:「お前が居ればグレイは逃げない…必ずここに来る…必ずだ」


エマ:「…グレイ……」


0:間


-ロブ宅を出て大急ぎで車を走らせるジャック

焦るグレイは、遅いと言わんばかりに強く急かす


グレイ:「ジャック頼む!急いでくれ!」


ジャック:「馬鹿言うな!これでもハンドル操作ギリギリのスピードだ!これ以上飛ばしたら車がイカレちまう!」


グレイ:「関係ない!お前ができないなら俺が変わる!!」


ジャック:「待て待て待て!!それは危ない!ってコラ!ハンドル持つな!」


グレイ:「ならあと5分で着ける裏ルートを使え!俺がナビする!」


ジャック:「ご、5分!?そんな道どこに…って待て、グレイ何する気だ!?」


グレイ:「簡単だ……こうするんだよっ!!」


-ハンドルを強引に奪い操作するグレイ、道無き道と悪路にジャックは思わず悲鳴をあげる


ジャック:「ぎぃゃぁぁぁぁぁああああああ!!!」


-そしてグレイの言った通り、5分で目的地に到着する

グレイの乱暴な運転にすっかりやられてしまうジャック


ジャック:「…すまんグレイ……俺はここから一歩も動けん……嫁さんは心配だが…足でまといにはなりたくない……」


グレイ:「余計なやつが入り込めば、すかさずヤツは殺しにかかってくるだろうさ。ここにいてくれた方が都合がいい」


ジャック:「…帰ってこいよ」


グレイ:「分かってるさ。エマも一緒に、必ず帰る」


0:間


-一方、ダニーとエマは会話を続けている


ダニー:「お前を悪く言った時…ヤツは眼の奥にドス黒い炎を宿した……あの瞬間…あの一瞬、ヤツは悪魔に魂を売ったんだ」


エマ:「私も友人から聞いて驚いたわ…まさかグレイがそんな事を…って」


-まるで神に祈るかのように手を組み、当時を思い出して悦に浸るダニー


ダニー:「俺は感動したよ……顔色ひとつ変えずに人を殺す人間にも、あんな瞬間が訪れるんだってことにな…プライドをズタボロにされたことも忘れて、俺はただただあの眼に恋していたんだと気付いた…グレイのあの眼に俺が写る事を夢見て、俺はグレイを追いかけ続けた」


エマ:「さっきは復讐と言ったのに、今の言い方はまるでストーカーね…」


-組んでいた手を離して腕を大きく広げながら、言葉を続けるダニー。

そして自身の望みをあ、潰れそうな声をしながらエマに伝える


ダニー:「なんとでも言ってくれ!俺はあの眼をしたグレイと殺り合いたいんだ!そのためなら俺はどんな手段でも使う…!そして、戦場に行けばグレイは必ずいる…だから追いかけて追いかけて追いかけ回して、地の果てまで追いかけ回して……そして殺し合う…それが俺の望みだ…」


エマ:「狂ってる…」


ダニー:「狂う?そんな簡単な言葉で片付けないでくれ……これは愛…そう愛だよ…憎しみに染まってもなお輝く感情…これを愛と呼ばずになんと呼ぶのが正しいと言うんだ…」


エマ:「…あなたは地獄に堕ちるのがお似合いね…」


ダニー:「お前もいつかわかるさ…この深い感情を……愛にも似た殺意を……それが分かれば、お前は俺と同類だ…」


-けたたましいブレーキ音が響く


ダニー:「ほら!王子様の到着だ」


エマ:「グレイ…」


0:間


-ジャックとの会話を終えたグレイが怒りの形相で走って来る


グレイ:「ダニィィィィ!!」


ダニー:「待ってたぜぇグレェィ!!」


-強引にエマの手を引きわざとらしく笑いながら


ダニー:「ほぉら!!お前の愛するエマはこの通り無事だァ!さぁ…楽しいパーティの始まりだぜぇ!?優雅に踊ろうじゃないか!!」


グレイ:「テメェとダンスだぁ!?冗談じゃねぇ!なら悪魔と踊った方が幾分マシってもんだ!」


ダニー:「そんなつれないこと言うなよぉ…お前と踊るためなら、俺は

もう手段を選ばない…もぅ逃がさない…さぁ踊ろうぜぇ!!!」


グレイ:「(舌打ち)エマ!必ず助ける!待ってろ!」


エマ:「グレイ!!」


ダニー:「退けアバズレェ!!(エマを突き飛ばす)」


エマ:「きゃっ!!」


グレイ:「こんのクソッタレがぁ!」


ダニー:「ぎゃはははははははははっっっっ!楽しいなぁグレェィ!!!!」


グレイ:「楽しいだァ!?ふざけんじゃねぇ!」


ダニー:「楽しいだろぉ!?もっとダンスを楽しもうぜぇ!!」


-グレイは放たれる銃弾をできる限り躱しながら、器用に物陰に身を潜め、ダニーを狙う


グレイ:「てめえは昔っからそうだ!調子に乗ると歯止めが効かねぇ!何がダンスだ!てめぇとは死んでも踊らねぇよ!!!」


ダニー:「これがダンスじゃなければなんだって言うんだぁ!?シャドーダンスなんてつまらねぇ事はもぅお終わりなんだよ!!1人でイッて何が楽しいんだ、あぁあん!?いいから黙って俺と踊りやがれ!!」


グレイ:「1人で踊ってろクソッタレが!そしてそのまま悪魔と*乱癡気らんちきパーティでもするんだな!」


-ふたりの怒声と共に銃撃戦は続いた


ダニー:「大体なぁ!気に入らなかったんだ!俺より後に入った奴が重宝されて、挙句そいつには嫁ができる!?ふざけんな!俺にない全てを持ってるやつなんかみぃぃぃんな消えちまえばよかったんだ!」


グレイ:「てめぇがそんなんだから上があっさり捨てたんだろうさ!残念だったなぁ!俺はお前と違って優秀だったんだとよぉ!」


ダニー:「ならあの時俺を殺せばよかっただろうが!俺を殺さなかったばっかりに愛しの嫁さんを人質に取られて可哀想な奴だ!!ざまあみろ!!」


グレイ:「てめぇがそれを言うのか!寝言は寝てから言いやがれ!」


ダニー:「寝言ぉー?これが寝言だってぇ!?お前の耳は腐っちまったのかぁ?ならその耳…要らねぇよなぁ!!!!」


グレイ:「……っ!?」


-放たれた銃弾が耳を掠る


ダニー:「外したか…」


ダニー:「だが次は当てる…さぁぁぁぁあぁぁぐれぇい!!続きを楽しもうじゃないかぁ!」


グレイ:「クソっ!」


-傷を負い物陰に素早く身を潜めるグレイ

だが、ダニーが放つ銃弾はしっかりとグレイを捉えている


ダニー:「どこに隠れても無駄だぜぇ…?」


-言葉と共に1発の銃弾が飛んでくる


グレイ:「クソっ!逃げ隠れしてても弾が飛んできやがる……*装填そうてんもチンタラやってたらそこを狙われて終わりだ…どうする…」


ダニー:「グレイ…何をしたらお前はあの時の目をするんだぁ?どうしたらまた悪魔に魂を売ってくれるんだァ??どうすればあの時のお前と殺り合えるんだぁ???」


-怒りと苦悶の表情を浮かべながらグレイは言葉を吐き出す


グレイ:「そんなのただの人殺しと変わらん!俺はそんな下衆になるつもりはねぇよ!エマを助けるためなら悪魔に魂を売るつもりでいた…、だがな!そんな事しちまったら俺はもう人には戻れねぇ!」


ダニー:「仕事で人を殺すのは正義だと綺麗事を言うつもりかぁ…??お前の手は、その銃を握った瞬間から真っ赤に染っているんだ!」


グレイ:「んなこたァ言われなくてもわかってるんだよ!!」


ダニー:「……」


-その言葉を聞いて、ダニーは攻撃をやめる


グレイ:「……何のつもりだ…」


ダニー:「(静かに)残念だよグレイ…残念だ。」


グレイ:「何がだ」


ダニー:「(絶望しながら)殺人兵器と呼ばれたお前から…顔色ひとつ変えずに人の命を奪ってきたお前から……そんな言葉を聞かされるとは思ってもみなかった…」


グレイ:「…?」


ダニー:「もぅいいわかった!!」


-ダニーは言葉を吐き捨て、そして安全な場所にいたエマを強引に連れてくる


エマ:「い、痛い!離して!!」


グレイ:「エマ!!」


-エマの頭に銃口を突きつける


エマ:「ひっ…!」


ダニー:「これでお前は…俺を殺したくてたまらなくなったはずだよな……大事な大事なエマをこんな風に乱暴に扱われて、ましてや銃口を突き付けられて、いつ殺されるかも分からないこんな状態でぇ……お前は、怒らないわけが無いよなぁ…!?」


エマ:「ぐぁっ!!」


グレイ:「テメェ…今すぐその汚い手を離しやがれ!」


ダニー:「そうそう!そうやって怒りに身を任せて俺を殺しに来いよ!」


グレイ:「ダァニィィィィイ!!!!」


-エマを取り返すべくグレイは走り出す


ダニー:「おいおい…そんな無防備で大丈夫かぁ!?」


グレイ:「……っ!?!」


-グレイの右足に向けてダニーが発砲、そしてその弾丸はグレイの右太ももを貫通、グレイはその場に倒れ込みそうになるがそれを必死に堪える


グレイ:「……ぐっ!」


-苦悶の表情を浮かべるグレイに、ダニーは挑発しながら叫ぶ


ダニー:「ほぉら、ここまでおいでぇぇぇ!!」


グレイ:「畜生がぁ!」


-すかさずグレイは落とした拳銃を手に取り、ダニーに向けて発砲する。その弾丸はダニーの左肩を貫通した


ダニー:「…っ!」


エマ:「グレイ!!」


グレイ:「今すぐその手を離せダニィ……」


ダニー:「…やるじゃないかぁ……なら、これならどうするぅ??」


-ダニーは忍ばせていたナイフでエマの左腕を傷付ける


エマ:「っぁ!!!」


グレイ:「エマ!?……きっさまぁぁぁ!!!」


ダニー:「ぎゃっははははははは!!俺を殺せぇ!殺してみろ!グレェェェェェイ!!!」


-出来るだけエマに当たらない角度で、出来るだけエマを傷付けない場所に、グレイは身を隠した。そして、グレイのダニーに対する殺意が溢れ出す


グレイ:「(殺す、殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!)」


ダニー:「どこに隠れても無駄だと言っただろう?」


グレイ:「殺す……」


ダニー:「良い殺意だ……その殺意をもっと見せてくれぇ!さぁ!悪魔に魂を売れグレイ!」


グレイ:「死ねぇぇぇえ!!!」


0:長めの間


-互いに無数の銃弾を受け、腕も足も上がらなくなったグレイとダニーは地面に仰向けになり、息絶え絶えになりながらも会話をする


ダニー:「…なんでまだ生きてるんだァ?」


グレイ:「クソッタレがぁ…」


ダニー:「殺すつもりで撃った弾は…エマを傷つけまいと急所に当たらず…俺はお前とダンスするために急所を外し続けた……」


グレイ:「このクズ野郎がっ!いつまで経ってもエマを離しゃしねぇ……」


ダニー:「離すわけが無いだろぉ?ここにエマがいるだけでお前は手加減をする。それがわかっていたから、何があっても手を離さなかった…俺は、お前と……」


-傷を負ったダニーの拳銃を拾うエマ

そして仰向けになったダニーの眉間に銃口を向ける


エマ:「……っ!」


グレイ:「エ、エマ…?」


エマ:「(深く深呼吸する)」


-エマの行動に思わず声を荒らげるグレイ。

ひとつの決心をしたエマは静かに目を閉じて言葉を出す


グレイ:「エマ…!何をするつもりだ!!」


エマ:「ごめんなさいグレイ……私を守るために…でも、もういいの……」


ダニー:「エマ……やっと理解できたのかぁ?」


-閉じた目をゆっくり開きダニーを見る


エマ:「えぇ…でもこれは愛なんかじゃない……これは、純粋な殺意……グレイが守ろうとしたものを理解した…私の殺意よ」


-身体を引き摺りながら手を伸ばし、エマを止めようとするグレイ


グレイ:「待ってくれエマ……ダメだ、お前は、手を染めちゃあいけない……!それだけはダメだ!」


-銃口をダニーに向けたまま、エマは静かに声を出す


エマ:「グレイ……貴方には沢山守ってもらった…沢山の幸せも貰った……でも、もういいの……あなたが見てきたものが、あなたが背負ってきたものが…わかった気がしたから」


-掠れた声でエマの行動を喜ぶダニー


ダニー:「…魂を売ったのは……お前の方だったかぁ……」


エマ:「えぇ、ありがとうダニー…あなたのおかげで私は赤く染まることが出来る…グレイが守ろうとした私は…もう居ない」


ダニー:「それでいいのかぃ??」


エマ:「私にとって…。背負って生きる意味を知る事は……グレイと同じ場所に立つことと同意だわ」


-エマの殺意を受け悦ぶダニーのその顔は、恍惚な表情をしている


ダニー:「嬉しいよエマ…いつか地獄で、僕とダンスを踊ってくれるかい……!?」


エマ:「…いいえ。」


エマ:「私が死んで踊る相手は…グレイただひとりよ」


-エマはダニーの眉間をしっかりと捉え、そして目を瞑ること無く両手でしっかりと構えた銃の引き金を静かに弾いた


ダニー:「(小さく笑い絶命)」


エマ:「……」


グレイ:「エマ……」


エマ:「ごめんなさいグレイ…でも私は…」


グレイ:「…帰ろう」


-エマはグレイを支えながらジャックが待つ車に向かう


ジャック:「…終わったのか」


グレイ:「お前…ちゃんと運転できるんだろうな」


ジャック:「もちろんだとも!…とりあえず病院だな…」


グレイ:「頼む、全身穴だらけでいってぇのなんの。」


ジャック:「…エマだね?君も怪我をしているのかっ…早く行こう、さぁ乗って!」


エマ:「…よろしくお願いします」


ジャック:「気にするな!これも俺の仕事さっ!」


-後日、数日入院をしていたグレイは、退院すると急ぎ足でロブの家に向かう

-呼び鈴が鳴り訪問者を迎えるロブは、それがグレイだと知ると安堵の表情を浮かべでグレイを歓迎する


ロブ:「…おかえり、親友!」


グレイ:「おう!帰ったぞ親友!」


-包帯やガーゼでいっぱいのグレイの身体を見ながらも、肩を軽く叩き苦笑いを浮かべながら会話を続ける


ロブ:「にしても酷い姿だな…今までの傷なんて目じゃないぐらいボロボロだ」


グレイ:「これでも治りは早い方だ!」


グレイ:「…それより、決めてきたぞ」


-肩を叩く手が止まり驚きの表情をするロブ


ロブ:「……おい、まさか」


グレイ:「そのまさかだ。」


-胸で十字を切りながら歓喜と安堵の声を出すロブ


ロブ:「…あぁ、神よ…今日この日まで…グレイを生かしてくれたことに感謝する!」


グレイ:「今から死ぬみたいに言うんじゃねぇ!!だいたいお前は!(遮られる)」


ロブ:「(食い気味に)で!名前は!?」


-一瞬驚いた顔をして、グレイは優しく微笑みながら


グレイ:「…アイザックだ!」


0:間


グレイ:「M/ダニーの遺体は軍が回収し、簡単な葬儀が行われたと言う。」


グレイ:「M/俺は、エマが背負ってしまった業を受け入れるのに時間がかかった……」


グレイ:「M/何があっても背負わせまいと決めていたものを、俺のせいで背負わせてしまった…」


グレイ:「M/エマは相変わらずニコニコと過ごしながら、何事も無かったかのように振舞っている」


グレイ:「M/俺はそんなエマに申し訳なさを感じながら、日常を過ごしている…」


エマ:「グレイ、今日は何が食べたい?」


グレイ:「…エマが食べたい物がいいな、いつも俺のリクエストに応えてくれているから」


エマ:「…私はグレイが食べたいと思っているものを作るのが好きなの。だから、気にしないで?」


グレイ:「……」


エマ:「だったら、どこか食べに行きましょう?たまには……ね?」


グレイ:「…そうだな」


エマ:「(クスりと笑う)」


グレイ:「(俯きながら)エマ、本当にすまなかった…」


エマ:「まだ気にしていたの?」


グレイ:「(顔を上げて勢い良く)気にしないでいられると思うか!?!」


エマ:「…っ!」


グレイ:「(必死に訴える)お前がトドメを刺す必要なんてなかった……お前が手を染める必要なんてなかった…!」


エマ:「…グレイ、いいの…あれは私が(決めた事)」


グレイ:「(遮って)でも!お前がやる必要は無かった!!」


エマ:「グレイ!」


グレイ:「(エマの声に驚き黙る)……!」


エマ:「グレイ……私が決めて、やった事よ。」


グレイ:「…ヤツの死が、エマを変えたのか…?」


エマ:「…そうね……。ダニーと言う犠牲が無ければ…私は、ずっと何も知らないままだった」


グレイ:「エマにとって……これはハッピーエンドか?」


エマ:「あなたと過ごすこの日々が続いて死ねるのなら…それは私にとって、最高のハッピーエンドよ」


グレイ:「(驚いた顔をしながら)そうか…」


エマ:「えぇ、」


エマ:「グレイ、愛しているわ。」


グレイ:「俺もだよエマ…」


グレイ:「M/俺はその後軍を辞めた。」


グレイ:「M/望まないと決めた未来を取り返すために、そして、この幸せを守るために…」


グレイ:「M/感謝するよダニー…どうせ俺が死んだらお前と同じ地獄行きだ。」


グレイ:「M/その時は一緒に踊ろう…1度だけなら、それもいいだろう。」


グレイ:「M/それまでは、この幸せを守り続けるんだ」


END

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【5人台本】硝煙、薫る 夜染 空 @_Yazome_

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