第32話動画投稿
エマはナターシャとともにゲームの相談をしている。
エマの元にはゲームを開発するにあたり、ゲームの登録に必要だったパブリッシャーを仮に作っていたのだが、そこに大量に話や依頼が殺到しているらしい。
その依頼についてはなにかをするつもりはないとのこと。
あんな高クオリティのゲームを作った開発者に渡りを付けたい人達は沢山いる。
そのエマがなんのことを悩んでいるのかというと、VRについて。
VRを作って小型化したけど、売り出したいらしい。
あまりにも作り過ぎたので処分のつもりでゲームを放出したいと言う。
現代じゃまだVRは映像の域を出ないからね。
スマホと連動してゲームを出来るようにしたいとのこと。
今は3Dだが、VRにしか出来ないゲームも作ったのだから、拡張したいらしい。
前はあんまり広めたがらなかったけれど、作ったゲームの出来が良かったから増やしたくなったのだろう。
自分のゲームをコツコツと増築している感覚なのだ。
どうやったらVRをさせられるのかというと、正直に発売するしかない。
日本じゃ難しいから、海外から行くしかないかな。
「取り敢えず、どんなものか分かりやすくする為に動画を投稿すればいいと思うよ」
「むう。動画」
「見本、サンプルってやつかな?分かりやすいなら、通りやすいよ審査」
「時間をかけたく無い。既に審査を申請していた。技術に関しては必要最低限にしておいたものを審査のものに適用していた。そろそろ届いてもいい頃」
「う、うん?分解されてそう」
「私のものを分解するなら、さっさと審査して欲しい」
とっくに申請していたらしいが、新過ぎていくら大国でも迷っているのかもしれない。
あまりにもオーバーテクノロジーだから。
でも、待たせるだけ待たせてしまったらエマはVR機器を手元に戻すだろうから、お国はどちらか性急に決めた方が良いだろうね。
VRについて説明する為に、まずは動画投稿を始める事にした。
機材はエマがお手製したものを使うらしいよ。
カメラとか、マイクとか。
撮影は前にCMで使ったものがあるので、まあ用意は要らなそうとは分かっていた。
あんまり撮るのは歓迎してなさそうなエマをどうにか説得するには、VRを作ったことを広める為だよとなんとか言い繕う。
VR生産に関しては初耳だったので、私だって知識がないから動画なんて写りたいとは思わない。
だが、VRについて広く知らしめねば動くものも動かない。
それに、エマは悪用されてもそれを的確に対処したりするくらいは余裕で出来るからこそ、私は広めても良いだろうという理由があった。
ナターシャはエマがVRゲームを入れたがっているからこそ、参入しやすいだろう動画を進めた。
そうじゃなきゃ、私も出たくはないかな。
いくら加工しても私達って気づくだろうし。
宇宙人を触らぬ法がある限り、安全というわけではないが、一応対応は出来る筈だし。
ここは大海原に飛び込むつもりで、やってみないと。
「動画のタイトルはVRを流通させるために始めました」
「まんま。シンプルが一番。カメラはセット済み」
空中に浮かぶカメラはオーバーテクノロジー。
「先ずは撮る前に流れを打ち合わせした方が良いよ」
「打ち合わせ?頭の中に出来上がってる」
「それはそうだろうけど……」
流行る気持ちなのか、なんなのか。
空気を折るつもりはないので、エマに任せてしまう事にした。
エマがVRについて説明した後、動画を編集したものをぺたりと貼り付ける。
それは、エマや私がVRで遊ぶところを映したもの。
まあ、手っ取り早く分かりやすい。
VRの凄さを見せ付けて、その都度説明するエマ。
ゲームの拡張をしたいからVRを流通させるということも言い、なにか変なことをする目的なのではないかという不信感を和らげる。
ナターシャはそれを見てるだけに留めた。
私は居なくても妹はやれた。
「これで投稿」
編集をすぐに合わせた彼女はボタンを最後に推した。
「うん。VRはいつ発売?」
気持ちが急ぎ過ぎてはいる。
「いつでもいい。周りがVRについて知った後にすれば良く売れる」
世の中には宣伝が大切。
「個人的にページを作って売り出せば待つ必要はないもんね」
国の申請に通らないとどうにもならない。
けれど、違法じゃないから売りは出来る。
エマなりのマーケットだ。
EMMA SHOPとつけられた簡易に見えてデザインがずば抜けた販売ページを見せられた。
白黒で分かりやすい。
オマケにVRが5千円だ。
破格過ぎて偽物疑惑を持たれるのではないか。
「早く流通させたい」
「私の贈り物で体験型VR限定を配信したら嫌でも気づくように出来てる」
「発売日はナターシャが決めて良い。エマは準備出来てる」
「そっか。私もある程度知名度が広がってからで良いと思うよ」
動画を投稿してから数時間後、私達は呑気にゲームをして遊んでいた。
人生ゲームを。
妹がいつの間にか買っていたボードゲーム式のもの。
物理的に遊ぶタイプで2人でルーレットを回して遊ぶものだ。
何人でも参加出来るやつなので、大きい。
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