第31話妖精

できるだけ、迷惑をかけないように取り計らえ、との電話のやりとりだった。


うんうん、そうなるよね。


異星人対応のマニュアルをもう少し読み込むべきだと思うよ、流石に。


これはただの親切心である。


再度どうするかについて詰めていく私達。


サインはようやく出来るという段階になったのは5回ほど彼らが電話をした後。


「では、お願いします」


そうして漸く、話し合いが始まる。


「まずはこの騒ぎは妖精の仕業です」


「妖精?」


とんと信じられないと思っているが、具体的にいうと、妖精と見まごう似た存在。


有り体にいえば、宇宙人。


「取り換え子、チェンジリングを起こすいたずら好きな特徴があります」


「宇宙人!?」


驚くけど、予測は昔から学者が定説として語ることもあったけどね。


「登録は、されてませんよね」


「されてないんだったら、されてませんってことなのかもしれません。恐らくかなり古い存在なのではと思います」


「古い?最近現れたのではない?」


ナターシャは、そういえばそういう存在は古くから存在していることを聞いたことがあるなと思い出す。


イギリ◎とか。


エマも頷いて情報の補足をする。


「地球には古来から宇宙人は居た。その形跡は至る所にある」


フ◎ンスの人達や外交官の1人が驚きに目を見張る。


これはどっちの驚きなのか分からないけど、私も知らなかったよ。


彼らは続きを聞く。


その妖精の魔法により絵が笑わなくなった、のではなく入れ替えられている。


それを告げるとかなり切羽詰まった顔をして、彼らがどこにあるのかとかという質問をしてくる。


森の中だよと教えるナターシャ達。


なぜ森にと言われると「気に入ってしまったから」と言う他ない。


昔からああいう類の存在がやらかす理由。


気に入ったから、欲しいから、貰った。


妖精から取り返すには、なにか交換するものが必要だと告げると、彼らは憤る。


なぜ盗まれたこちらが?


となるが、でないと手放さないし、妖精からしたら我々が盗みにきたと思われるだろう。


だから、リスクがあり過ぎる。


「森にあるのは、その存在が森に居るから、お気に入りをそこに置いているというだけ。深い意味はない」


エマは説明し終わるといつのまにか持っていた緑茶を飲む。


あ、私も飲みたい。


と、考えた瞬間には手に緑茶を持っていた。


流石は我が妹、気持ちが以心伝心だ。


大統領の関係者2人は妹の話をメモして、立ち合いを求めてきた。


それは、嫌だなぁ。


という気持ちが顔に出ていく。


「古い存在に関わり合いたくなんて、ないです。嫌です。話はここまで。私達は帰ります。忠告しておきますが、絵は諦めた方がいい。絵なんてどうでいいと思うような事が降りかかるので」


「そんな!?それは無理です!」


「本当にただの忠告なのですがね」


本当の本当に最後の忠告。


というか、善意しかない。


「私たちが関わり合いになりたくないというのが、関わり合いたくない理由そのものなのです。それでは!」


「では」


「達者でな。私からもあの掴めぬ者は関わらない方がいいと進めよう。うちの愛娘達の言葉をよく噛み砕くといい」


と、母が最後に任意の忠告及び、娘の言葉を無視した輩を微かに睨みつける。


「ひっ」


「くっ!」


何故、微かにというと、その睨みつける目を本気にすると、人間はたちまち殺気で震えて、もしかしたらとんでもない体の変化が起こるかもしれないからだ。


今の睨みつけレベルは、多分冷や汗多めに抑え込めているだろう。


「悲鳴で済むなんて、今の地球人はちょっとだけ忍耐があった。凄い」


「私達は慣れてるからなんとも思わないけど、他人からしたら死ぬかもって思うもんね」


母は帰ってきたら満足げに私達を抱きしめてすりすりしてくる。


大きなものが私の胸を激しく圧迫してくる。


背的に口を塞ぐんだよ!


エマは的確に、母の囲いを掻い潜ってナターシャを助け出す。


エマもよく潰されてるもんね。


「私の可愛い子達は、特になにか貰えるわけじゃないのに助言をしてあげて偉いな!ご褒美に、母からお小遣いをやる」


「え!ありがとう」


「貰う。買いたいものがある」


「エマはアプリで儲けてるでしょ?足りないとか、ある?」


「あっても困らないから貰う。これ心理」


エマの言う事は尤もだ。


確かにあれはある程使えるし、ここは何かを買って地球のお金周りを回して、経済にカスってもないものを送りつつ、なにかをやりたい。


妖精の事件について否定的なのは、地球の人が気に入らないのではなく、得体の知れない生命体に関わりあいたくないだけなので、どうか勘違しないで欲しいけど……。


あれだけ説明したのに、手伝って欲しがっていたから、不信感を持たれているだろうなぁ。


ジュスティヌやナターシャらは絵にもう関わるなと言ったが、地球からするとあの絵は歴史的にも金額の価値的にも、手放すのはありえないと知っているからこそ、今後もあの絵に関するトラブルは起こるかもしれないと予期している。


エマ達は帰ってきた日から、数日間はまたそれぞれ各自好きなことをする日々を送った。


ジャスティヌは引き続き道場を。


美人に投げ飛ばされても通う人が出てきたらしい。


それって、凄いと褒めるべきなのか。

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