ep.4 地獄のマグマダイブ日和!
「それじゃあ、俺は荒野へ行ってくる。何かあれば、アキラのガラケーに連絡を入れるよ」
そういって、礼治は先にこの場を後にした。
その前にマゼンタが何か頼んでいる様子だったが、とりあえず遺跡が見つかった後の速記翻訳は後ででもできると踏んだのだろう。たとえば、現地の様子を写真に撮って持ち帰るという手もあるのだから。
僕はあの口上が行われる少し前に、王宮から支給されたガラケーを手に立ち上がった。サリイシュは家に戻り、僕とマゼンタはケイオスを先頭に、目的の場所へ向かう。
ヒュー。
それは、僕達が嫌に蒸し暑い火山地帯へ突入した時のこと。
北の方角からだろうか。一筋の細い光が、隕石のごとく放物線を描き落下していく様子が見えたのだ。そしてそれが山肌を陰に見えなくなった瞬間、
ドーン! ブシャーン!!
「うわうわうわ…!」
ちょうど問題のトンネル近くまできた僕達の元に、隕石落下と火山噴火両方の轟音が鳴り響いた。山肌の奥からは溶岩飛び散ってるし、まって怖い怖い怖い。
「あー。やっとイングリッド落ちてきたか、アイツ」
なんてマゼンタはあたかも「人が空から降ってくるのは当たり前」かのように呟く。慣れてるんだろうけど、問題は落下の位置だ。僕は途端に心配になった。
「えぇ!? 今の音からして、それ、落ちた先マグマの海なんじゃ…!?」
「かもね。でも大丈夫だろ、あいつ太陽神だし最初はスライムだし」
「ふぇ~」
信じられない発言だ。傍から聞いた者からすればドン引き案件である。僕は顔を青ざめながらも、ケイオスを先頭についていくマゼンタの後方につく形で、先を急いだのであった。
「この溜り場の真下が、その遺跡へと続くトンネルがある場所だ」
ケイオスがそういって足を止めた目先には、確かに山頂の火口から流れてきた途中で溜まっているマグマの海が広がっている。本当にそれだけ、潜れない以上は構造物があるなんて
僕達も足を止め、その歪に光る液体の溜り場を見つめた。最早ぐつぐつというより、トロトロという表現の方が近いだろうか。ここであともう一歩足を踏み外すようなら最悪、マグマにドボンしてしまうほどの恐ろしさを放っていた。
てゆうか、頼むから後ろからいきなりドンって背中を押すなよ…? なぁ、まじで押すなよ!? これフリじゃないから、ホント冗談抜きで!
「こりゃあ、思ったより底が深そうだね… ところでアイツ、まだ来てないの?」
「ごめんごめん、お待たせ」
と、ここで聞き覚えのある声が響いてきた。
振り向くと、手には白いワイヤレスイヤホンを入れた小さい袋と、肩に小さな方舟型の機械を入れたショルダーバッグをかけている仲間の1人が。ノアだ。暑いからか、今のノアは頭にバンダナを巻いた作業着姿である。
「この中を透視するよう頼まれ、目がマグマの光でやられないためのゴーグルとかがないか探していたんだ。そしたら、丁度シアンからこれを借りる事が出来てね」
そういってノアが懐から取り出したのはシャープな黒いサングラス。本来の持ち主であるシアンがアルビノで、目も肌も日光に弱いタイプだから持ち歩いていると思われるものを、態々暗黒城へ行って借りてきたというわけね。ホントお疲れ様。
「今から俺が透視するものは、この母機のモニターにもリアルタイムで映し出される。今回の為に画面の明るさを大分下げているから、マグマ溜まりを抜けた瞬間に暗くなるかもしれないけど、そこは容赦してくれ… それじゃあ、いくぞ?」
そういってショルダーバッグから母機を取り出し、続けてワイヤレスイヤホンとサングラスをかけたノアが、その問題のマグマ溜まりの前へと片膝をつき、手でシャッターポーズを作った腕を伸ばした。
僕達も急いで母機のモニター前に寄り集まり、ノアの目線を映した画面を凝視する。
画面には確かにノアの目線が、まるでドローンのように勢いよく前進し、そのままマグマの中へと突き進んでいった。
「おぉー」
マグマの中は、とんでもなく明るいオレンジ色に光っている。
画面越し僕の肉眼では、ノアの透視が今マグマの中のどこにいて、そしてどこに何があるのかが全然分からない状態であった。こればかりはノアの感覚に任せるしかないか。
「お。これがトンネルかな? 山の裏へ続いているな」
と、ノアがぼそり呟く。
するとその直後、ノアの目線の左脇に何か壁のような黒いものが映った。
「はっ…! これだ。俺が見つけた遺跡の古代文字!」
と、ケイオスが目を大きくする。遂に遺跡を発見か。
ノアの透視は更に奥へ進んでいき、やがてマグマ溜まりを抜けたのか画面が急に暗くなった。だけど画面の端っこには、溶岩が小さな滝の様に流れている様子が見える。
「内部に抜け出せたよ。思ったほど、遺跡の中はマグマで満たされていないみたいだけど… この溶岩滝、せき止めないとだなぁ」
ノアがそう呟いている間、僕はふとケイオスへの横顔を覗いた。本人は当の遺跡を訪れた事があるから、どこに何があるのか大体把握できているのだろう。段々と自信に満ちた表情に変わってきている。
「うーっし。大体の中の構造は掴めた。さて、ここは私の出番かねぇノア?」
と、マゼンタが立ち上がった。ノアが頷き、シャッタポーズとサングラスを外す。
「今の透視は録画されているから、気になった箇所があれば早戻しして見てくれ」
という言葉を背に、マゼンタとポジションを交代。マゼンタがゆっくりマグマ溜まりの前へ手を
「セリナ達、下がってな。今から掻きだしてやる」
僕達は指示通り、マゼンタのいる位置から下がった。
すると下から「ゴゴゴゴゴ…」と地鳴らしが起こり、そして数秒後。
バシャーン! バリバリバリー!!
マグマがブワッと噴き上がる様にあふれ出し、更にはその中から1m四方の大きな鉄くずや鉱石等が押し上げてきたのだ。その迫力と轟音は凄まじく、前章で僕達がマゼンタ解放までにとても苦労した、あの巨大なタコを連想させる。あれはみんなのトラウマ。
こうしてマグマが掻きだされ、トンネルに続く窪みになったのを確認すると、マゼンタは手を翳すのをやめた。
鉄くず達も意思をもったようにコロコロと窪みから這い上がり、マグマに次いで山を下っていく。だが、その最後尾には地面を這うアメーバの様なものが。
「え!?」
僕はその姿に驚愕した。そのアメーバ、というかスライムは青白く光っており、窪みから出た瞬間眩しく発光。スライムは人の形を形成し、やがて実体化したのだ。
「はぁ… はぁ… 死ぬかと思った…!」
なんと! その実体化したものの正体はイングリッドであった。
上界の一柱である神で、マゼンタ解放により漸く自分も下界にスポーンした人。だけど場所がまさかのマグマ溜まりという、初っ端地獄な展開。
「な、何事…!?」
と、これにはケイオスも僅かに身を引いている様子。マゼンタが肩をすくめた。
「落ちた後もずっと姿が見えねーんだもん。
「危うく成仏しかけた奴にいうセリフか? それ。しかし… こんな場所があるなんてな」
と、イングリッドも先のトンネルへと振り向いた。窪みの中は湯気が立っていて凄く蒸し暑いので、このあと僕が氷魔法で冷やしてあげるとして、僕は段々と妙な感覚を覚えた。
――奥から… 感じるぞ。仲間の、オーラの様なものが!
僕のその視線に、隣で様子を見ていたノアとケイオスも気づいたのだろう、こちらへ振り向いていた。
(つづく)
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