ep.5 キラキラした遺物に囲まれし「パリピ詩人」♪

 マグマを抜いた後の窪みから、遺跡内部にかけて、氷や霜を張り巡らせる。

 そうして内部を冷やしてから、僕達はその急こう配となっているトンネルを潜った。トンネルは思ったより狭いので、最初のようにケイオスが先頭になって案内してくれた。


 虹色蝶を光源代わりに生み出し、遺跡の中を明るく照らす。

 一部の壁にはマゼンタが生み出した鉄くずが半分埋まった状態で残っているが、恐らくワイン瓶のコルクの様に、そこから流れ出ていた溶岩滝をせき止めてくれているのだろう。


 「――そうだったんですね。あの花畑に柵を設けたのは、ケイオスさんご一家だと」

 僕は遺跡の中を歩きながら、ケイオスの昔話に耳を傾けていた。

 遺跡は天井が少し高く、よく声が響く。だから少しの声量でも皆の耳に届く分、下手な内緒話や機密裏的な話はしない方が得策であった。


 「あの花畑には昔、多くの土壁で出来た家が建てられていた。ある日、その中から数軒、室内を荒らされる事件が発生してな。当時その家に住んでいた一家が全員いなくなったのを知り、俺はすぐに組織がらみの誘拐を疑った… その頃から、あの国は近く大きな問題に直面するだろうと悟ったんだ。『襲撃』という形で」

 「そんな事が」

 「だが、思ったよりもあの国は粘った。壊滅を免れた。あの女王と勇者の2人が、あれだけ自分達に懐疑的だった住民を、わざわざ助けるために戦ってくれたのだよ。

 正直、見くびっていた。特にあの女王… いや、あの『娘』は今日までよく耐えてる。洞窟にいた頃の自分の印象を、敢えて“利用”し、普段は静かな君主を“演じて”いる。未知数の力をもった敵を刺激しないよう、自らが国ごと責任を負うと決意した、あの眼差し… なぜこの国のために、よそ者がそこまで力を注げるのか、俺には理解できない」


 アゲハの事だ。

 ケイオスさん、独立主義で他人に無関心な人だと思っていたけど、実は結構相手の事を見ているんだなと僕は感心したのであった。まさに図星だからだ。

 そんなアゲハの確固たる信念を、一住民が理解できないのは致し方ない。いや、理解できちゃいけないんだ。そんな分かりやすい君主・・・・・・・・だったら今頃、国は全滅していただろうから。


 「柵が設けられたのは、その土壁の家が数軒荒らされた後ですか?」

 僕は話を本題に戻しつつ、歩きながらとある方向へと視線を向け続けていた。

 なぜならその方向から、段々と僕が感じ取れる「オーラ」が強まってきているためだ。


 まだ見つからない仲間が、クリスタルに封印されている場所が近い…!


 「あぁ。いなくなってしまった人達の無念を風化させてはならないと、柵を設けた。“コッソリ”だったから、誰がやったかなんて、きっと今日まで住民の殆どは知らないだろう。のちにそこへ慰霊碑が建てられたと聞いた時は、嗚呼―― 当時の被害者が、長い年月を経て、漸くここへ戻ってこれたのだと悟ったさ」


 アニリンの事か。フェデュートに家族を殺され、誘拐され、砂漠の収容所で長いこと虐げられていたゴブリンの男の子だ。

 仲間の1人であるマリア・ヴェガが彼を保護し、聞いた話ではあの子はそのボスコ―花畑にかつて存在していた、土壁の家で育った元住民の1人だという。現在はコロニーの住民に引き取られ、そっちで元気に暮らしているときいた。そんな彼がどれほど苦しい思いをしてきたのか、知っている身としてはとても胸が張り裂けそうになる。


 「さっきからどこを見ている?」

 ケイオスが、僕の視線に気づきそう聞いてきた。僕はその壁の前に立ち、正直に話した。

 「この奥から、特殊なオーラを感じるんです。人の魂が、封印されているような…」

 「封印?」

 「あぁ、俺も同じものを感じるよ。そういえば、セリナも遂に『魂の息吹』を使えるようになったんだったな」

 と、別のグループと固まっていたイングリッドもこちらへ歩いてきた。マゼンタ、ノアと続き、ノアがその壁の奥を透視すると…

 「すごいな。奥の部屋は宝の山だ。大きな壁画も描かれている」

 という呟きにケイオスが「!」とすぐに振り向いた。

 やはりそこはトレジャーハンター。かつて栄えていたであろう文明の構造物からお宝や遺物が見つかると、心が躍るのだろう。


 「あった! 宝箱の中にクリスタルが… げっ」

 すると僕のオーラを読み取る感覚が見事に当たり、ノアが透視でクリスタルチャームを発見した… が、どういう事か少し気まずそうに一歩身を引いたではないか。こりゃチャームの中身が誰なのか本人、気づいたとみたぞ。

 「その反応、もしかして~?」

 と、マゼンタがしたり顔でノアに煽りの質問を投げる。ノアは苦笑いを浮かべ答えた。

 「…俺の身近な人」


 だろうと思った。

 僕も正直、そのオーラはマゼンタに似た岩属性でありながら、どちらかというとキラキラした「音」を感じるものだと分かる。実際にそこから「音」が鳴っているわけではないけど、なんかこう、音を武器にして戦う吟遊詩人が発してそうなあれ。ダメだ語彙力がゴミすぎる。


 「ここ、石を敷き詰めて漆喰で隠してるだけの脆い壁だね。どかしていいかい?」


 マゼンタが、僕達が向いている壁の一部をコンコンとノックした。正確な所有者はここにはいないけど、念のためケイオスからの指示を仰ぐ。

 ケイオスは頷いた。するとすぐに、マゼンタが壁に手を翳し魔法を唱えた。そして、


 ドシャーン! ガラガラガラ~


 その壁はパラパラと崩れ落ち、奥へと続く道が解放された。

 僕達はその道を進んだ。奥へ広がる部屋は壁の一面に大きな壁画があり、そして多くの宝が保管されている大広間。


 「おお… なんて神々しい。これは歴史的発見だ!」


 ケイオスが興奮している。実に分かりやすい。

 なんておちゃらけた事は冗談でも口にせず、彼とノアが中の様子を録画している間、僕はその「オーラ」の発生源である宝箱の一つへと歩み寄った。

 イングリッドも続き、僕がゆっくりその宝箱を開封する。宝箱自体は鍵がかかっていないので、こんなセキュリティで大丈夫か? と不安になるくらい簡単に開いたのが驚きだった。にしても、


 「あった。しかし、なんでこんな宝箱の中にクリスタルチャームが?」


 と、僕はその宝箱の中から新たなクリスタルチャームを取り出し、それを手に持ったまま呟いた。イングリッドが、

 「それを言ったら、あのヒナのチャームだって海底の宝箱にあったんだろ? その時点で、もう何処にチャームが転がっていたっておかしくはないよな」

 と正論をツッコミ。うん、確かにそうなんだけども! 僕は小さく肩を落とした。

 「で、魂の解放は誰がやる?」

 なんて続けて訊かれたので、ここは僕が「やります」と返答をしたのであった。




 「ふぅ」


 僕は深呼吸をし、自身の左手の甲に置いてあるチャームに向け、右手を翳す。

 そこから、クリスタルに封印された魂を解放する「念」を入れ、静かに気を送り続けた。


 クリスタルの光が、更に強くなった。


 その光はやがて、白から、虹色へと分離していく!


 そしてさらにレーザーの様な光線を放ち、勢いよく空へと放たれた!




 ドーン!

 「「おー」」

 イングリッドとケイオスが光に関心を示している声が聞こえた。


 光のスライムは弧を描く形で部屋の中央に降り立ち、やがて人型を形成。実体化していった。



 ストッ

 「ハーイ! シャバに出られたの、いつぶりかしら~♪」


 実体化した仲間は褐色肌の女性。両手に鉄扇をもった高身長ギャル。

 ノアの姉で、拾った「音」をカタチにする魔法の使い手。ジュリアであった。


(つづく)

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