ep.3 古代文字を、呼び覚ますために――
「ここか」
辿り着いた場所は、コロニー周辺より少し盛り上がった丘にある林。
その林に囲まれる様にして
『誰だ!? 話す用などない、帰れ!』
開かない玄関の奥から、男性の激昂が鳴り響いた。
ただノックしただけなのに、そんな怒鳴る事なくない? こりゃ相当心に何か問題を抱えているとみたぞ。サリイシュは「ひっ」と身を震わせ、僕は気まずくなった。
礼治はなお、冷静である。
「いとこの女王に、そちらがずっと一人で
『うるさい! 女王だのいとこだの、そんなもんどうでもいい! ガキ共が、さっさと帰れといってるんだ!』
「「ふぇ~」」
「くっ…! 何もそこまで言わなくても」
「まて」
サリイシュが更に怯えだし、僕が痺れを切らし前に出ようとした所を、礼治が腕を伸ばし制止した。
すると礼治、一旦ふうと呼吸を整えてから、記憶の一部を思い出すようにしてこう告げる。
「『危なくなったら荒野へ逃げろ。グリフォン達が皆を守ってくれる』」
『…!?』
あれ? それって、確か礼治が謎の象形文字の正体を速記だと気づいて解読した、あの宝箱から出てきた石板のやつ!?
という僕の疑問視を横に、玄関の奥から爺さんの感嘆符が上がった。礼治は更に続ける。
「『だが、くれぐれもグリフォン達の誇りである「姫様」に危害が加わらぬよう、気を付けてくれ。もし、そんな事になったら… 彼らは、皆に牙を向けるだろう』 ――母神様と称されるヒナが海底から拾い上げた、石板に刻まれていた古代文字だ。俺が解読した」
『っ…!』
「その隻眼は、グリフォン達に目を食い
爺さんの激昂が、途端に止んだ。すると数秒後、
ギーッ
「なぜ、それを?」
まさかの! 僕達より少し小柄の、
これにはサリイシュも驚きの表情。まさか本当に出てくるとは思っていなかったのだろう、ここまでの道のりがとても大変だった事が
………。
「――古代文字が存在する事は、考古学に触れる前から何度か耳にしていた。俺はその謎を解明したく、暗黒城となりの火山地帯へ足を運んだんだ」
ケイオスがそういいながら、歯痒い顔で俯く。
あの後、玄関前に出てくれたこの爺さんを筆頭に、僕達は近くの大きな切り株を机にし、静かに話を聞いていた。
曰く元トレジャーハンターというケイオスの口からは、次々と衝撃的な話が出てくる。
「あの火山の下には、人為的に掘られたトンネルがあって、その先へ進むと大きな遺跡が建てられている。壁画には古代文字をはじめ、グリフォンに関する抽象的な絵がびっしりと描かれていた。『姫様』として崇められし、一際小さいグリフォンの絵もそこにはあった」
「!」
「だが俺が解読しようとしたその瞬間、どこからかマグマが大量に流れ込んできた。
想定外だった。急いで避難したものの、遺跡はあっという間にマグマに満たされ、唯一の道であるトンネルでさえマグマの海に沈んだ。今はもう、誰もその遺跡に行く事はできない」
「…」
「帰ってから遺跡の存在を教えても、信じてくれる者は誰もいなかった。構造物があった形跡ごと、マグマに飲まれたのだからな。
皆からは『ホラ吹き』だと
妻と息子は俺が心配だと、一緒についてきてくれた。だけど、その選択が間違いだった」
妻と息子―― 僕はとても嫌な予感がした。ケイオスの下唇と拳が、震えている。
「荒野に到着してすぐ、グリフォン達が一斉に襲いかかってきた。その瞬間、俺はもう『姫様』に
聞いているだけで、心が痛くなる。
ケイオスの左目から、涙が溢れ出ていた。そんな辛い事があったんだな。しかも2回も。
「ホラ吹きの
そういうケイオスの震えが、徐々に収まってきた。サリイシュが泣きそうになっている。
「かわいそう。私、ケイオスさんにそんな過去があったなんて、全然知らなくて」
「ふん。お前達はまだ小さかった。知らなくて当然だ」
ケイオスがそうぶっきらぼうに言うと、礼治がここで腕を組んだ。
「だが、そう1人で引き籠る決意をしたわりには、ここ数日前から2人の家の前を覗きに来ているそうじゃないか。本当は、まだ諦めきれていないんだろう?」
「なっ…! そ、それは」
「あーいたいた。おい礼治ぃ、そこで何アブラ売ってんだよ?」
その声は、マゼンタか。
礼治を探し、ここの匂いを嗅ぎつけてきたのだろう先代魔王トップの女性が、僕達の元へ歩いてきたのであった。礼治が呆れ気味にいう。
「そういうマゼンタはなぜ俺に尋ねてきた?」
「あのジョナサンがあんたを探してたんだよ。早く約束の場所へ連れて行かなきゃ! てね」
約束とは、礼治がこんど仲間のジョン・カムリ、マイキ、そしてヒナの4人で行く荒野探索の件だ。さっき上がった石板の内容をヒントに、台地の下に何かあるかもしれないと見越しての事である。礼治はそれを思い出した。
「あーあれか。だが、まだそんな日時ではない。あいつは何を急いでるんだ?」
「さぁ。また何か嫌な未来でも見えたんじゃねぇの? …ところで、そちらの方は?」
と、ここでケイオスへと目を向けるマゼンタ。僕達はここまでの経緯を一通り話す事に。
……。
「なるほど、火山地帯の遺跡がマグマ溜まりで先へ進めないと。確かに気になるな、ソレ」
事情を把握したマゼンタが、真っ先に興味をもったのは例の遺跡の件だった。てっきりケイオスの辛い過去に同情するだろうと思っていたが、どうやら僕の思い違いみたい。
「速記だっけ? そいつが沢山書かれているのなら、さっさと解読してこっちの強みを伸ばしていった方が得策だろ?
ならやってやろうじゃないか。遺跡のマグマ、全部抜いてやる」
「「「えぇ!?」」」
僕とサリイシュの目が点になった。今、とんでもない事を言い出したぞこの先代魔王。
マグマを抜くって、どうやって!? マゼンタがその疑問に気づいたのか、途端に呆れた表情を浮かべた。
「おいセリナ達、私のこと見くびんなよ? これでも鉱石魔法を遠隔で発現し、それで埋め尽くしてマグマを押し上げる事くらい朝飯前なんだ。伊達に魔王を務めたガラじゃねぇ」
「なんと… そんな素晴らしい能力をお持ちの方がいるとは!」
と、ケイオスも驚いている。マゼンタは悪い気がしなかったようで、フッとしたり顔を浮かべていた。
【クリスタルの魂を全解放まで、残り 5 個】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます