第8話 商店の日々

商店街の駐車スペースに車を止める。車を降りて商品確認と納品店の説明を受ける。

「これは食品店さんへ。数が少ないものは手でお願いします。少し多いものは台車を使いますが、今日は私が運びます。」

「一緒に運びますよ。」

「・・・そうしようか。台車お願いします。」

2人で周り始める。よそよそしいけどこれでいいんだと思う。

「おはようございます!今日の納品です。」

「いつもご苦労様。そちらは?」

「今日からお世話になっている、鹿島悠です。どこに運びますか?」

「そこの隅にまとめてください。新しい人が来ると楽しみですね。」

「そうですね。また、よろしくお願いします。」

店主は微笑んでいる。店にはお客さんが休むスペースがある。買い物だけではなく、楽しめるスペースを用意しているようだ。

店を出て車へ戻る。

「今のは、お店の人にも印象良かったよ。次もその調子で行こうね。」

「はい。」

笑顔が眩しい。たった数十分の事だが、あの店で話したいとか考えてしまう。彼女の魅力なのだろうか。持ち前の明るさ、昨日とは別の顔を見た気がする。

次に向かったのは生活雑貨のお店だ。

「おはようございます。今日は2人ですね。」

店の前を掃除していた店員に声をかけられる。

「おはようございます。新しく入った鹿島さんです。今日からよろしくお願いします。」

「はじめまして、いつもごひいきありがとうございます。」

「うん!しっかりしてるね!どこにいたの?こんないい人。」

「・・・」

詠美が下を向いている。この姿も見ていていてもたってもいられなくなる。

「偶然、故郷に来られて働かないか?と頼まれたんですよ。」

適当に答える。

「そうなの!?がんばってるじゃん。」

詠美と店員さんは知り合い同士の様だ。2人ともそれとなく話しているが、通ずるものはあった。

「今日の納品分はどちらへ運びますか?」

「あ、今、案内します。ついてきてください。」

店員に案内され、店の裏手に周る。そこには倉庫があり、様々な商品が保管されている。

「この棚へ乗せてください。」

「わかりました。」

詠美が持っている商品を棚へ上げようとするが、少し高いようだ。近くで見ていて心配になる。その時、バランスを崩して踏み台から落ちそうな姿が見えた。持っていた商品を投げ出し、詠美の体を支える。

「大丈夫ですか!?」

「ごめんなさい。気をつけていたつもりなんだけど。商品ダメになっちゃったかな?」

言われてさっきの商品を気にする。箱は潰れていた。けど、怪我がなくてよかったんだ。

「すみません。それよりも怪我はありませんか?」

「私は大丈夫。あなたのおかげよ。」

店員に謝り、事情を話す。その場は後日の追加納品で収まった。深々と頭を下げ、店を後にする。

背を見送りながら店員は言った。

「がんばんな。」

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