第4話 下調べ

部屋にはベットと机があり、窓は1つ高い位置にあるため光は入る。窓の換気は吊り下げたような紐で開け閉めを行うことでできるようだ。まだ日は高いから開けておこう。着替えは着ている服と似た服が2着、入っている。洗濯について聞かなかったから、洗濯室を探しに行こう。

部屋を出て、建物内を探してみる。部屋はどこも外に面していて、中央に食堂のような広間がある。南側に玄関があるから、北側に向かう。そこにはトイレ、お風呂、洗濯室の順に各室が並んでいる。洗濯室に入ると洗濯機が2台、乾燥機が1台あるのがわかった。確認は終わった。外に出て、作業棟へ向かう。

ちょうど、休憩のようだ。外に出ている人がいる。

「明日からよろしくお願いします。鹿島と言います。」

「ああ、よろしく。どこから来たんだい?」

「病院ですよ。」

聞かれたくない話題だった。

「それなら、無理しないほうがいいよ。」

「ありがとうございます。」

何も言えることがない。なんで言えることが無いんだろう。言葉を忘れた訳ではないのに。

様子を見ていたのか1人が話しかけてきた。

「今日の詠美ちゃん、キレイだったな!」

「ああ、そうだな。あんた、どう思った?ほら、案内してもらった人。」

「ああ、そうですね。」

ここでも言えることがない。好き・嫌いの会話にすらできていない。

からかったほうもわかったようだ。

「そろそろ、時間だから戻ろう。」

「そうだな。じゃあ、明日からよろしく。」

「よろしくお願いします。」

ひとまず、会話は終わった。本当に職場にいるような感覚だ。そもそも俺はもう好きになっているということなのかもわからない。

窓越しに室内を見ると彼女は笑顔で作業を手伝っている。この環境に明日から入るのか。少し不安になってきた。宿舎へ戻ろう。

戻りながら考えることはない。さっきの農場で謝ることにした。

「さっきは失礼な言い方で、すみませんでした。」

「?何が?ここはあなたが作業するところじゃありませんよ。」

「そうですよね。」

また、返す言葉がない。どうしたんだ、一体。頭を下げ、その場をさった。逃げるように宿舎へ向かう。

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