第34話 廃れた街
気がつくとリンは学園の中庭に立っていた。周りには人の気配がない。不思議に思いながらも他に誰かいないか確認する為に校舎の中を歩く。
1年A組の教室に入ると自分と似た姿の女の子が座っていた。彼女が振り向き顔が見える。相手は自分と全く同じ顔をしていた。リンは怖くなって足を数歩後退りする。
「誰?!何で同じ見た目をしてるの?」
問いかけても返答はなく彼女はスッと姿を消す。教室から出ようして躓いて転び目が覚める。さっきのは夢だったようだ。
、
「顔色悪いけどどうしたの?悪い夢でも見たの?」
「少し奇妙な夢を見ただけ」
心配するオペラに平然を装いながら返事する。
「えっと祭りの準備の手伝いをするんだっけ?具体的には何をしたらいいの?リカールさんもう準備しに行っちゃったんでしょ?」
「えっと商人の方々がいらっしゃってるのでそちらの準備を手伝ってと言ってました。手伝いが終わったら後は何しててもいいって。手伝いを終わらせてスイーツでも食べに行こうよ」
「暑いから冷たいスイーツが食べたい」
「スイーツの屋台も来てるはずなので作業が終わったら貰えないか聞いてみましょう」
陽の光が照らす中屋台を出す準備をする商人の手伝いをする3人。
手伝いが終わらせ商人から貰ったスイーツを食べていると少女が走ってきてぶつかる。ごめんなさいと謝罪しまた走っていく。
「オペラさん大丈夫ですか?」
「大丈夫、スイーツは落ちてない」
「そっちではなく怪我とかはないですか?」
「そっちも大丈夫」
立ち上がり服をパンパンと叩く。何かに気づきあっと声を出す。
「どうしたの?怪我があった?」
「そうじゃなくて財布がない。落としちゃたかな」
地面に落ちていないか探し、座っていた落ちていたイスの下も除くが見つからない。
「さっきの女の子赤い物を持ってたけどあれかな?」
「それかもしれない」
少女を追いかけると、少女も追いかけられている事に気づき人混みや細い道に入る。他の人にぶつかったり物に当たりながら追いかけ細い道の行き止まりに着く。
「あたしの財布返して」
「この子が盗んだと決まったと決まった訳じゃないからないんだし優しくしようよ」
少女は、
「ここまで来たら追ってこれないとおもうけど念の為もう少し離れよう」
後ろから鎖が伸びてきて体を拘束する。後ろから少女達の声が聞こえてくる。
「捕まえた。もう逃げられないよ。財布を返して」
少女は悔しげな顔でオペラに財布を返す。
「盗った物は返したんだし、もういいでしょ。拘束を解いてよ」
「解く訳ないでしょ。窃盗は立派な罪だよ。君を今から騎士の所まで連れてくから付いてきて」
「行く訳ないでしょう。それにこの程度の拘束なんて無理矢理解けるし」
体に力を入れ巻きついていた鎖をちぎり逃げ出す。
「自分で拘束解けるならさっさと解けばいいのに」
「眺めてないで追いかけないと」
「オペラちゃんと一緒にあの子を捕まえに行くから、ベールちゃんは戻って騎士の人に伝えて」
少女は軽い身のこなしで障害物をかわし2人が通りづらい道を通るが、リンは障害物を気にせずに突っ切りオペラは魔法で障害物をどかしながら追う。
追っていると荒んだ建物と人々の姿が目に映る。建物の色は茶色に変色していて所々崩れている場所もある。街の人もボロボロの布切れや穴の空いた服を着ている。中にはボロボロの毛布で体を覆っている者までいた。
「王都と風景が全然違うね。本当に同じ国なの?」
「ここに住んでいる人は居ないはずです。何故これだけの人がいるの」
街の様子を見ながら歩いていると少女が街の奥にある建物が並ぶ道にいるのを見つけ追いかける。
少女を見かけた道に着くといきなり鈍器を持った男数名が襲いかかる。攻撃を避けれたが少女は見失ってしまう。
「へへっ、お嬢ちゃん達俺らに何か物を恵んでくれよー」
男達は下卑た笑いをしながら物乞いをする。
「武器を持っていきなり人を襲う人達に恵む物はありません。私達は急いでいるので退いてください」
「何か恵んでくれたら退いたのになー。恵んでくれないなら無理矢理奪うまでだ」
男達は一斉に襲いかかるが鍛えられた2人に敵うはずがなくあっという間にやられてしまい、地面に横たわる。
「ガキのくせに強い」
「子供だからって舐めないでください。私達が追っていたあの子が何処に行ったか知りませんか?」
「教える訳ないだろ。教えて欲しいなら何か物よこせ」
「さっきから言ってますが貴方達に恵む物は1つもありません」
オペラはハッキリと頼みを断る。彼らをその返答に腹を立てボーッとしていたリンの体に鎖が巻き付かれる。襲ってきた彼らとは別に待ち伏せされていた。
「リンさんに何するつもりなんですか!」
「あぁ?んなもん言わなくても分かるだろ?」
オペラの頭によくない考えが浮かぶ。いきなり人を襲う彼らならそれをやるかもしれない。だけど彼女にはリンよりも彼らが心配でならなかった。
「危ないですからその子から離れてください。怪我したくないなら離れてください」
「脅しのつもりか?そんなん効くかよ」
男は警告を聞き入れず鎖を引っ張り彼女を自身の元に寄せる。体に彼女の体に触れようと手を伸ばすと捕まれる。次の瞬間小さな拳が男の股間にめり込み、とてつもない激痛が襲い股間を抑えながら縮こまる。
「何しようとしたかは分かんないけど触んないで。次やろうとしたら殴る」
「もう殴ってるじゃん。綺麗なパンチが入ったね。この人達はどうするの?」
「面倒だからこのままにしておく。あの子を見つけないとだし」
「でも何処に行ったか分からないよ。私ここ詳しくないし」
「騒がしいと思って見に来てみたら誰か来ていたのか」
道の先には強面の男が立っていてこちらを見ていた。
「お前ら子供にやられて恥ずかしくないのかよ」
「すみませんボス。思ったよりも強くて」
リンはボスと呼ばれた男に急いでるから行っていいかと問いかける。男は返事もなしに足をあげる。
「何で攻撃するの?ただ質問しただけなのに」
「ここは俺らの家だ。そしてお前らは家に不法侵入した。つまりは罪人だ、よってボスである俺が裁く」
男は氷の剣を作り構える。辺りが急に寒くなり周りの物がパキパキパキと凍っていく。リンは魔道具の銃を出し、オペラは下がる。
「そっちの子供は戦わないみたいだがいいのか」
「1対1の方がいいでしょ?」
「俺に勝てると思ってるのか?大した自信だな。後から後悔すんなよ」
「勝てるから後悔しないよ」
「…ッ。ガキが舐めんじゃねぇぞ」
口角を斜めにあげ眉をピクピク動かす。剣を上に向けると2人を囲うように氷の壁が現れる。
「これで邪魔は入らねぇ。お前が勝ったら何でも言う事聞いてやるよ。できる範囲でだが。逆に俺が勝ったらすぐにここから出ていってもらう。いいな?」
リンは首を縦に振る。
「始めるぞ」
首に付けていたネックレスを外し投げる。
地面に落ちるとそれを合図にし同時に互いに魔法を放つ。
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