第33話 補習
皆さんお久しぶりですトロワです。学園は1ヶ月の休みに入り、きっと俺以外の奴らは毎日遊びに明け暮れているだろう。
え、俺は何してるって?それはな…補習だ。休み前のテストの成績が酷く、普段の成績もあまり良くなかったからそれを少しでも良くする為に補修している。
ちなみにさっき俺以外の奴らは遊びに明け暮れていると言ったが正確には違う。視線を左右に送れば頭を抱える生徒がいる。
「トロワ周りを見てどうしたー。課題は解けたのかー」
「解けてません」
「早く解けー」
自分の机に置かれた課題の書かれた紙を見る。紙には連立方程式や二次方程式、二元一次方程式の問題や図形やグラフの問題が書かれている。半分は既に解き終わったので、残り半分を解けば帰れるのだが残りの問題が急に難しくなり止まっている。
「前半は授業聞いてなくても解ける問題なのに、後半でいきなり応用問題出すのは聞いてないよ」
「言ってないからね」
「聞こえてたんですか?!」
「丸聞こえだよ。文句言ってないでさっさと解け。そして俺を帰られてくれ」
グリス先生は疲れた表情で話す。この前の戦いでの疲れがまだ取れていないのかもしれない。
「早く遊びたいしさっさと終わらせよう」
意気込んで課題の書かれた紙を見る…が考えても、考えてやっぱり答えが分からない。時間が過ぎる度に周りの課題を終えた生徒が教室から出ていく。
気が付くと後ろの席と右隣の席にしか生徒はいなかった。
「わ…かん…ねえ…」
「ねぇ大丈夫?」
頭を抱えていると後ろの席の生徒が声をかける。
「全然大丈夫じゃない。後半の問題が全く分からない」
「僕でいいなら教えてあげようか?」
「頼む、教えてくれ」
「先生トロワくんに教えてもいいですか?」
「いいぞー」
その子は俺の前の席の椅子をこちらに向けそれに座る。
「どこが分からないの?」
「解けてない所全部」
「これ全部分からなかったんだ。それでずっと頭を抱えていたんだね」
「頼むー教えてくれー」
「まずはこの問題から解いていこう。ここの問題はね…」
それから一緒に残りの問題を解いていき、あっという間に課題が終わる。課題の紙を先生に持っていく。
「先生課題終わりました」
先生は紙を受け取るとじっと見つめきちんと解けているか確認する。少し経つと紙を教卓に置き帰っていいと言う。それを聞いた俺は荷物をまとめて教室のドアを開く。
「あっ、そうだ。補習は今日までだから明日は来なくていいぞ。残りの休み沢山遊べよー。でも勉強もきちんとやれよー」
帰りの挨拶をして教室を出た。帰る時にあの子を見るとまだ残っている他の生徒と一緒に問題を解いていた。
「あの子頭いいなら何で補習受けてたんだろ?」っとふと思ったが分からないのでそのまま寮に戻る。
寮に戻った俺はベッドの上で横になる。ゴロゴロしていると扉をノックする音が聞こえたので見に行く。扉を開けるとテオスが立っていた。
「補習が終わったばかりなのにごめんね。この後って予定とかある?」
「特にないけど」
「僕とカルーア君でカイン君の家に遊びに行くんだけど良かったらトロワ君も来ない?カイン君が君にも来て欲しいって言ってて」
「あいつが言ってるなら行くか。でもさあいつの家アストラ王国だけどどうするだ?」
「カイン君の親が送迎してくるって。だから心配ないよ。夜の20時に集まるからその時に」
「20時だな、それまでに持ってく荷物を整理しとく。何泊かしてくんだろ?カインの家に泊まるのか?」
「そうだよ。カイン君に伝えに行くついでにトロワ部屋と送迎頼んでくるね」
「ごめん、ありがとう」
「全然気にしないでよ。じゃあ夜にまた会おうね」
扉が閉じ俺は部屋の隅に置いてあったキャリーケースを開く。数日分の着替えとちょっとした遊び道具を詰め込む。
夜の20時になり寮前に行くと他の3人が既に集まっていた。
「あっ来た。こっちこっち」
テオスは俺を見ると手招きする。3人の元に駆け寄る。
「集まるの早いよ」
「そんな事ないよ。皆丁度来た所だし。ね?」
「そうだよ。皆集まったばっかりだよ。お父さんが門の方にいるからそっちまで行こう」
4人は各々の荷物を持って門の方へと歩く。門には1台の大きな車が止まっていた。中に入ると豪華な内装が広がっていて、冷蔵庫やテーブル、ベッド、トイレが設備されていた。
運転席には若い男性が座っていた。トロワ、カルーア、テオスは彼に挨拶をする。挨拶をされた男性はバックミラーを見て返事をする。4人は荷物を車体の後ろに置きテレビ近くの椅子に座る。彼が椅子に座ると車は静かに走り出す。
「聞き忘れたんだけど何で今の時期にアストラ王国に行くんだ?まぁカインの家がそこだから仕方ないけど、遊ぶだけなら2、3日もあれば十分だろ?」
「あれ知らないの?アストラ王国で近々祭りが開催されるんだよ」
アストラ王国は年に1度の王都で行われる祭りがある。祭りでは王族・貴族が盛大パーティを開かれたり夜に花火が上がったりなど数日間昼夜問わず楽しめる日が続く。また普段は見ない様々な店が出ている。それらの店は他の国から来た商人が許可を得た上で開いている。
また祭りの最中、暑さで倒れる人が過去に何人かいたらしくここ数年は祭りを開催する時期が早まった
「祭りは知ってるけど来月だろ」
「前まではそうだったんだけど早まったんだよ。暑さで倒れる人が出ないようにって」
「毎年2、3人はいたからね。対策は勿論してあったけどそれでも倒れる人はいたんだよ」
「楽しん出る時にそういうの見たら嫌だし、時期を早めたのは良かったのかも。早めてからは倒れる人は出てないし」
話している途中トロワとテオスはあくびをする。
「2人とも眠いの?」
「少し眠い」
「僕もです」
「父さん寝たいから何処か安全な場所に止めて。朝になってから出発しよう」
「ん、あぁ分かった」
車は街の門の出入り口に付近に止まる。カインの父親は寝てる間に襲われないようにしてから席に座ったまま寝た。4人も寝る為に後ろのベッドに移動する。近くの棚に置いてあった布を上に重ねて目を閉じる。
翌日の早朝に目覚めカインの父は彼らを起こし車を発進させた。
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