第35話 炎魔法出た

 魔法がぶつかり煙が巻き起こる。リンが続けて魔法を放とうと魔力を集中させていると煙から氷柱が飛んできて左足と右肩に傷を負う。離れるために後ろに飛ぶと背後から氷柱が突き出す。


「痛っ、煙で前が見えないのになんで場所が分かる」


 前方に何発か魔法を放つが当たった気配はなく、魔法を放った事で位置を教えてしまい更に攻撃を受けてしまう。


 (攻撃を受けるの痛いから嫌だな。その為に攻撃を避けないと行けないけどあの人が場所が分かんない。走ってみよう)


 足に力を入れ走り回る。動き回ってるから見えているだろうが魔法よりもボクの動く速度が速く攻撃は外れ氷の粒が壁にぶつかる音が聞こえる。


「あいつ動くの早いな。」


 右足で地面を軽くトンと叩く。その瞬間表面に氷が張り光が反射して輝く様子を銀色に輝く。


「ちょっと待って止まれないー」


 走っていたリンは滑り壁に激突とする。


「壁が冷たい」


 体を起こし体勢を整える。男は剣を持ち突進する。真空弾エアバレットを放つが氷球アイスボールで防がれる。

 剣が振り下ろされ切られた髪がチリと宙を舞う。続けて水平に振るうが強風で飛ばす。


「どうした。さっきから走ったり反撃したりしてばっかで自分から仕掛けてないな。俺に勝てると言ったのは嘘なのか」


「嘘じゃないよ。ただ思ったよりも強くて戦いづらいなーって。煙の向こうから攻撃してきたり地面を凍らせて転ばせたり」


「知るか、まぁただ少しだけ期待したけど残念だな」


「期待してたんだ、ならその期待に応えなきゃね」


 弾丸に魔力を込め撃つ。男は剣で弾丸を斬ろうと振るうが剣が折れ頬に傷を負う。


「どう少しでも期待に応えられた?」


「お前、本当に子供か?」


「どこからどう見ても子供でしょう。身長だって小さいし」


 (さっきの弾の威力も魔力で強化されていたが威力が高すぎるし、弾に込められた魔力の量が普通の子供の魔力量じゃない。遠距離じゃなく接近戦でいくか)


 剣をもう一度生成し接近して剣を振るう。リンは避けようと足を動かして滑らせる。

 剣は顔に当たるか当たらないかのギリギリの位置をかする。


「運がいいな。だが次は避けさせん」


 両腕を鎖で固定し凍らせる。


「やばっ、どうしよう」


 腕を動かそうとするが鎖と氷のせいで簡単に動かせない。試行錯誤してると剣が振り下ろされる。


 ガキン


 金属のぶつかる音がなる。剣はリンの持っているもう1つの銃に当たり防いでいた。


「何?!」


「今の内に」


 凍っているマグナムを見ながら火属性の魔法が出ることを祈る。するとマグナムの銃口が熱くなり氷が溶け始め火球ファイヤーボールが放たれる。


「うわっ本当に出た」


 火球の熱により拘束していた氷が溶けた。腕に力を入れて上げると鎖はちぎれた。


「氷を溶かすのはともかく鎖をちぎるのはおかしいだろ。その小さい体のどこにそんな力があるんだ?」


「そう言われても分かんない」


 (あの人相手に銃は不利だからボクも剣で戦おう)


 氷を生成し剣の形に変形させ右手で持つ。


「銃だと不利だと思い剣による接近戦に変えたのか。だが持ち方を見るに扱い慣れてないな」


「げっ、バレた」


「扱い慣れてないのに少しでも有利になる為に戦い方を変えたのは褒めるが勝てるのか?戦う前に自信ありげに言ったのに」


「勝てる!」


 男の問いかけに対し力強い声で返事をする。男は少しフッと笑う。


「なら来い」


 男は腰を低くし剣先をボクに向け、その峰に軽く右手を添える。次の攻撃で終わらせるつもりだ。ボクは右足を一歩前に出し剣を構える。


 沈黙の直後、男が構えたまま動き出す。彼の立っていた場所にはヒビが入り力強い突きが繰り出される。


 ボクは構えていた剣で受け止める。その突きは重く受け止めた剣はバキバキと音を立てながらヒビが入り砕けてしまう。砕け散った氷の中からゆっくりと剣先が迫る。


 突然彼の脇腹に痛みが走る。自分の脇腹にはが刺さっていた。男は持っていた剣を落とす。ボクは彼の落ちた剣を拾い喉元に突きつける。


「降参だ、お前の勝ちだ。強いな」


「鍛えてもらったからね」


 周囲の壁は水に変わり消える。


 壁が消えると外にいたオペラと男の仲間が出てきた2人の姿を見て勝敗の結果を悟る。


「大丈夫だったの?途中、何かが激突する音が聞こえたけど」


「それは壁にぶつかった音だね、痛かった」


「ボス脇腹に火傷が」


「気にするな、その内治る」


 回復魔法をかけようとする仲間の手を振り払う。


「聞きたい事があるんだけどいい?この街を通った女の子がいたと思うけど何処に行ったか分かる?」


「子供?フードとローブを纏ってたか?」


「この奥に朽ちて誰も住んでない小さい小屋がある。そこにいるはずだ」


「小さい小屋。ありがとう」


 男に回復魔法をかけ脇腹の火傷を治して道を進む。


「そういえば何であいつらにちょっかい出しんたんだ?何かされた訳じゃないんだろ?」


「俺達がくつろいでたらフードを被った子供が通って目があったんすよ。そしたら頭の中に2人組の子供の足止めをしろって言葉が響いて気がついたらやられてました」


「何それ怖。次からは何もされてないのに子供に手出すなよ。やったら分かるな?」


 男の言葉に仲間は首を縦に振る。振り返り道を逆走する。


「どこに行くんですか?」


「他の奴らにこの事を知らせに行くんだよ。解決したから心配するなって。その間お前らは休んでろ」


 男は街の人々にトラブルが起き既に解決した事を伝え、不安やにさせてしまった事を謝罪した。その後仲間の怪我を回復魔法で治療した。股間を殴られた男にはどうしたら良いか分からないのでひとまず氷を渡し冷やすように指示した。


 リンとオペラは教えてもらった通り道を進んで行くと小屋が見つかる。

 小屋と言っていたが中に入ってみると数個の部屋があった。少女は奥の部屋にある机の下で身を屈めながら寝ていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る