第17話 蝶の標本

 人魚の里の世界を出た先は、ひどく狭い物置部屋であった。

 壁に大きな棚があり、そこに大量の物品が収納されている。床にも箱や書類、よく分からないガラクタが積み上げられている。ほとんど床の踏み場がない。ドアは無い。

「門は……そこですね」

 二人の右側の壁に、楕円形に繰り抜かれた穴があり、その先が白い光で道ている。あれが門だ。

「ここは、この物置だけの世界?」

「みたいですね」

 ルイが今まで旅してきた中で、ここまで小さな世界は訪れたことがない。

「ここにいてもしょうがないですし、次の世界へ行きましょうか」

「ちょっと待って」

 モナは棚のガラクタを触り始めた。

「どうしましたか?」

「リューズの足が壊れた。部品を探す」

 そう言われて、ルイは初めて気がついた。モナの足元をうろうろするリューズは、うまく歩くことができていない。右の後ろ足を引きずっている。

「分かりました。私はここで座って待っていますね」

 ルイはスツールに腰掛けた。

 足元はあっという間に大量のガラクタが床を占拠する。それらの中から、モナは使える部品を取り出す。

 ルイは、足元の箱に入っていた蝶の標本を見て、修理の時間を過ごした。

 修理が終わり次第、出発した。

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